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23 心の痛む怪我

まさか、何かの間違いだと思われていたとは。

少しショックだが、本人に言ったわけではないので仕方がないか。多分フォレット伯の伝え方に問題があったのだろう。


再度マリエラに結婚の申し込みを伝えると、弟から制止がかかった。


マリエラと最初に出会った時、少し状況が特殊だったのは認めるが、弟からの質問には素直に答えた。嘘をつく必要もないから。

しかしこいつが信じてるかどうかだいぶ怪しいな。なんとなく疑われてるような気がする。


弟が話をマリエラに振った。たしかにマリエラがどう思っているのか、すごく気になる。


深呼吸をしてから覚束ない話し方で意見を述べるマリエラ。


結果からいうとフラれてしまったが。


いや、あきらめるな。元々この段階で話が通る方がおかしい。ここからだ。


断られた理由としては分不相応で自分に自信がないってことだが、これは多少の本音が入ってるだけの建前で、ほとんどは別の理由だろう。おそらくマリエラは昨日今日出会った人間とすぐ結婚を決められる程思い切りが良くない。それに私の変な噂のせいで怖がられている可能性もある(事実無根という訳でもないが)。私のことが生理的に無理とかでなければ時間が解決しそうだが……


「公爵様、本日はおもてなしいただきありがとうございました。謝罪に参りましたはずなのに、見る物すべてが素敵ですっかり長居してしまいました。そろそろ失礼いたしますね」


まあ、今日はマリエラとゆっくり話せたからよしとしよう。


「……そうですね。今日はお話ができて幸せでした。馬車までお見送りさせてください」


邸から出る道中、私の求婚を断ってやりきったように嬉しそうなマリエラを見てやるせなくなるが。

エントランスに到着すると、弟が馬車を呼びに外にでた。今だな。


「っ……!」


苦しそうにしゃがみ込む。少し大げさ過ぎただろうか?


「どうなさったんですか!? 公爵様」


マリエラが心配そうな声を出して身を低くした。


「気を遣わせてしまうと思って隠していたんですが、実は先日転んだときに骨折してしまっていて。今日は無理して歩いていたのが堪えたみたいです」


嘘で申し訳ないが、このまま帰られると次の約束を取り付ける難易度がかなり上がってしまう。それは避けたい。


「え、えええぇ! どこを怪我されたんですか?」


慌てているマリエラに良心が痛む。が、ここで引くわけにはいかない。


「腰の骨にヒビが入って全治三ヶ月だそうで……あの犬を責めないでくださいね。私の不注意ですから」


三ヶ月もあればお互い理解も深められるだろう。それでだめならあきらめるしかないが。


「そんな大変なことになっていたなんて」


ぼろぼろ涙を流すマリエラ。この子相手だと罪悪感がすごい。笑って立ち上がって『なんちゃって! 冗談です』とか言いたい衝動に駆られるが、そうなると私が明日以降マリエラに会えない。



ポールに白い目で見られながらも、明後日から定期的な訪問をしてもらえる約束にこぎつけた。

……なんとか次につながったか。


今日は泣かせてしまって申し訳なかったが、明後日からは彼女が笑顔でいられるように全力を尽くそう。


この22年間で初めて好意を持った女性だ。

これを逃すと次の恋がいつになるかわかったものではないから、マリエラも私のことを好きになってくれるとありがたいのだが。



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