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22 期待と現実

マリエラから先日のことを改めて謝罪したいと連絡が来た。

謝る必要など全くないのだが、来てくれるのなら大歓迎だ。今日にでも会いたいが、ご令嬢を邸に招待したことなどないので歓待の準備が全然できていない。


私から既に求婚しているわけだし、もしかすると了承の返事を持ってきてくれるかもしれない。

お互い人生に一度の特別な瞬間になる可能性もある。となると、なるべく女性が好みそうなロマンチックな環境を整えておきたいな。花に囲まれた所とかがいいだろうか。


庭師に確認したら中庭のバラがあと一週間くらいでベストな状態になるらしいからその日にマリエラを呼んだ。私が捨てたせいでテーブルも椅子もないからそれまでに準備しないと。


女性を呼ぶから準備を完璧に整えておくように指示を出したらポールが目を丸くしていた。

私に気になる異性がいたっておかしいことはないと思うのだが、周りからすると青天の霹靂らしい。


こんな初恋のような気分に浮かれているのも、ヴァルゴの生存が発覚したおかげで前向きになれているのもあるだろう。世界の色すら違って感じる。

あらためて会うのが楽しみだ。前回はすぐにどこかに行ってしまったから。

怒ってないことは伝えてあるのだし、父親から私の好意も伝わっているだろう。

喜んでくれていると嬉しいのだが。



花の状態など気にせず三日後くらいに呼べば良かった。と思うくらい毎日が待ち遠しかったが、ついにマリエラが来る日になった。

仕事をしながらも窓の外に全神経を集中させていたので、馬車の音が邸に近づいて来るのにすぐに気がついた。


フォレット伯によると、いつも一緒と言っていたしもしかしたらヴァルゴも来るかもしれないな。犬は私の許可がないと邸の中に入ってこれないだろうから外まで出迎えに行こう。

元々エントランスまで迎えにいくつもりだったし、そこから扉一枚外に出るだけだ。


外に出るとマリエラが到着したところだった。

茶色の髪や瞳に日差しが当たってキラキラしている。丸い黒目がちな目、小さい鼻、笑顔の似合いそうな口角の少し上がった唇。今は少し不安そうな顔をしているが、仔犬のようなかわいい女性だと思う。


「マリエラ嬢! お待ちしてました!」


歓迎の想いで近づくと、なんだ? 隣に誰かいるな。


金髪に青い瞳の青年がマリエラに寄り添っている。顔も良い。身なりも良い。私は色々な人間を見てきたからそいつを見ればどういう人間なのかある程度わかるが、多分こいつはかなりできるタイプの人間だと思う。誰だ? 親が知らないだけで恋仲の人間がいたのだろうか? 


「ほ、本日は貴重なお時間をいただきましてありがとうございます! 改めて先日のお詫びを申し上げに参りました」


マリエラが堅苦しい挨拶をしてくる。もっと気軽な感じでいいんだが。

あと、横のこいつは弟らしい。他人の恋路をできれば邪魔したくはないからほっとした。

しかし全然似てないな。


しかし弟連れとなると今日は甘い雰囲気にはならないだろうな。

少し残念に思いながらも二人を中庭に案内する。



エントランスを通過する途中で後ろから小声の会話が聞こえた。


「ねえ、ロイ君。あの鳥の絵かわいいね」


「アオバネオオワライカワセミか。たしかにセンスがすばらしいな」


あいつらの肖像画を外した時にてきとうに飾ったんだが、あの鳥そんな名前だったのか。気に入ったならお土産に持たせてあげたいと思ったがでかくて重過ぎるから迷惑になりそうだ。やめておこう。


中庭に到着したマリエラはバラの花や用意した椅子やテーブルを見て目を輝かせている。用意しておいてよかった。


マリエラが私に謝ってきて貴重なワインをくれたが、こちらとしては、そんなことより私からの求婚をどう思ったのか聞きたいんだが。





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