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14 対話

私達は早朝に王都から実家に向けて出発したはずなのに、なんで昨日同じ夜会に出席していたお姉様、サイラス様、ついでにアラン王子がうちの本邸にいるのか。


ロイ君を見ると眉間を押さえて困ったような顔をしている。だよね。私も訳わからない。


「マリー!」「ああ、マリー! お帰りなさい」


私達に気がついたサイラス様とお姉様がいっせいにこっちに向かって来る。


「マリー! この人につきまとわれて困ってるんでしょう? 優しいマリーは面と向かって言えないだろうから、デュラン公爵様には私から今後のお付き合いをお断りさせてもらうわ」


「フォレット嬢。出過ぎたことはやめていただけますか? ちょっと齟齬があっただけで、私とマリーは完全に良好な関係を築けていますから。マリー、少し私達の間で行き違いがあったみたいだから是非二人で話がしたいんですが」


「二人でなんて危険だわ。今までも無理を言ってマリーを付き合わせてきたのに今度はどんな手段に出るかわからないじゃない」


「フォレット嬢は思い違いをしているようですが、私がマリーに危害を加えることなどあり得ませんし、私とマリーの間で話し合わないといけないことがあるだけです。


殿下もお忙しいでしょうし、フォレット嬢も一緒に王都にお戻りになられてはいかがですか? 早々に!」


二人ともすごい勢いだが、一体どういう状況なのか。


「あの、二人ともなんでここにいるの? お姉様とサイラス様」


アラン王子は遠い目をしている。絶対来る予定無かったんだろう。


「今日、いつもより早い時間ではありましたが、昨日マリーの具合が悪そうだったのが心配で様子を見にうかがったんです」


「……マリーは不在で。邸の者から私宛の手紙をもらったので読んでみたのですが、私の説明が不足していたばかりにすごく行き違いがあるみたいで」


サイラス様の声が震えている。

それはわかったとしてなんでお姉様とアラン王子が一緒にいるのか。


「せっかくかわいい妹が華やかに夜会に登場してたのに、昨日はマリーと全然話せなかったからアラン様とマリーに会いに来たの。そうしたらデュラン公爵様がすごい顔して手紙を握りしめてたんだけど」


「何が書いてあったのかは知らないけど、様子がおかしいってのはわかったわよ」


「セバスとローラにマリーはどうしたのか聞いたら、朝早くに実家に帰ったっていうじゃない。のんびりやのマリーがそんなに迅速に動いたってことは何か相当嫌なことがあったんでしょ? それなのにこの方、馬に乗ってうちの本邸まであなたを追いかけに行こうとしてたから止めたのよ」


「でもまったく聞く耳を持ってくださらなくて。仕方なく私達も一緒に来たの。もしマリーに何かあったのなら私も放っておけないし」


「それに私が同行した方がお互いにとっていいでしょう? 先触れなしで邸に入れるじゃない? 自分の家だもの」


「そういう説得もあって、公爵様もおとなしく馬車で来ることになったんだけど私達が少し急ぎすぎてたのか、いつの間にかマリー達の馬車を追い抜いてたみたいね」


どんな速度で馬を走らせたのかわからないけど、さすが王家の馬車である。


「姉さん。父さんと母さんはまだ戻ってないみたいだけど、とりあえず殿下と閣下をこんなところに立たせておくわけにいかないでしょ」


ロイ君がお姉様にアラン王子を案内させて、自分はサイラス様を案内した。

サイラス様が何か言いたそうにそうにこちらを見つめてきたが、ロイ君が何か言って促したのか邸へ入っていった。


私はどうしようか。心の準備が全くできてないまま現実が混沌と化している。

一人、中に入るのをためらっているとロイ君が小走りで戻ってきた。


「マリー。エルディを連れてこっち来て」


「でもロイ君、私サイラス様になんて言ったらいいのかわからないの」


「マリーは何も言わなくてもいいから、一度話くらいは聞いてあげなよ」


たしかに私は昨日から一人で暴走していたかもしれない。勝手に傷ついていきなり出奔して、サイラス様も驚いたんじゃないだろうか。たとえ面と向かって振られることになったとしても話くらいはするべきなんだろう。


「うん」


ロイ君に中庭に連れて行かれたが、そこにはサイラス様だけが座っていた。

整った横顔が見えたが、いつもの優雅で優しそうな感じはなく、すごく寂しげだった。


「エレノア姉さん達はちょっと別の部屋にいてもらうから、二人で落ち着いて、ゆっくり、話し合うんだよ」


念を押してロイ君も立ち去っていった。あの感じだとお姉様をなだめに行ったのだろう。


「サイラス様」


隣に座って呼びかけると、サイラス様は痛みを堪えるような顔をしながら笑顔を作ってくれた。


「マリー。私が何も言わなかったせいで不快な思いをさせたみたいですみませんでした」


「マリーへの想いを言葉で説明しようとすると、自分の薄暗い過去に触れない訳にはいかなかったので、それであなたに嫌われるのが怖くて」


「サイラス様。私もすみませんでした。昨日の夜から混乱して大騒ぎして、みんなに迷惑をかけてしまって」


「私に隠し事があったのが悪いんですよ。それが最悪の伝わり方をしてしまったみたいで。自分で言うべきだったのに」


「少し自分のことについて話してもいいですか? 知られるのが怖いのに知ってほしいような気がして。あまり楽しい話ではないんですが」


「聞かせてくださるなら是非」


この数ヶ月、サイラス様はずっと優しかったし、一緒にいてとても楽しかったがあまり踏み込んだ話題は少なかったように思う。


私は見たまんまの人間なので踏み込もうと踏み込むまいとたいして変わらないが、サイラス様にはあまり他人にオープンにしない所もあるのかもしれない。


多分何を聞いても私がサイラス様を嫌うってことはないと思うので、私の知らないサイラス様を見せてくれるのであれば単純に嬉しいと思う。


「ありがとう。マリー」


少しだけいつもの笑顔に戻ったサイラス様を見て安心する。どんな話なのかはわからないが話して楽になるのならどんときてほしい。



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