くそげーのすてーたすにいみはない?
「おい、外じゃゆっくり話も出来ない。どこか落ち着けるとこを探さないか?」
隼が勝手に歩みを進めるナリアに話掛ける。
「ん~それもそうね…あ!あそこになんか見えるわ!行ってみましょう!」
ナリアに導かれるようにして二人が向かった先は「反乱軍ギルド」と書かれた立て看板のあるレンガ作りの大きめの建物だった。大きな門を開け中に入ってみるとそこには、何かの受付口のようなところと縦に三つ並んだ大きな机、その周りにまばらに置いてある椅子、そして何も貼られていない掲示板があるだけだった。
「やぁこんにちは初めての方かい?ここは闇皇帝に対抗する為に作られた反乱軍ギルドだよ。君たちも反乱軍に加入するかい?そうすればここをただで使わせてあげよう。」
二人が中を見渡しているとギルドの中にいた数十人程の内の一人が隼達に話ながら近づいてきた。
「反乱軍に加入するかい?反乱軍に加入するかい?反乱軍に加入するかい?」
やけに綺麗な目をしたその男はただひたすらにそれを繰り返す。
「ひぇぇえええ!最早ホ、ホラー…」
ナリアが隼の後ろにサッと隠れる。
「…分かった。反乱軍に入ろう。」
話が進まないと感じ取った隼が男にそう言うと、男はにっこりと笑ってぎこちない雰囲気で次のようなことを言いその場を去った。
「それは良かったです!今はギルドの受付がありませんが、明日にはくるでしょう。そこではクエストををうけれます。それは貴方が強くなるのに必要なものです。あなたは今日はお疲れです。反乱軍専用の宿屋があります。やすんで。ではまた明日」
その様子を見ていたナリアは何か背筋に冷たいものを感じゾッとした表情をするしかなかった。
「…あんなのにいちいち驚いていたら、君…この先はやってはいけないぞ……」
そんなことを言いながら平然としている隼にもナリアは少しの恐怖を覚えた。
「まぁとりあえずここにゆっくり座って少し話を聞かせてくれないか…無論、君の知っている情報についてだ」
そう言うと隼は近くの机に椅子を二つ並べ、ナリアに座るよう促した。
「ハッ!そうだった!お前に伝えないといけない重要なことがあるんだった!」
そう言うとナリアは椅子に座り、隼の方に勢いよく向いた
「まぁ色々あったが、改めて自己紹介といこう!私の名はナリア!偉大なる女神様達の住む聖地エレイラの出である!我が一族は光の女神より寵愛を授かりし猫の一族!なんだにゃー!じゃなくて…である!そしてその中でも私は最強で!無敵の!超究極アルティメットハイパースーパー美少女魔法少女なのだ!…美少女?魔法少女?ん?とにかく凄いんだよ私は!えっへん!!」
大きな瞳に綺麗な薄碧色髪のショート。柔らかく繊細で滑らかな白い肌。程よく細い体。これがナリアの全てなのだッ。そしてapp99圧倒的眼福せよ愚かな男よ!とナリアは思った。
「そうか。僕の名は越前隼。またの名をフッ「不滅のクソゲーハンター隼…!」あらゆるクソゲーをハントし…そしてそれを愛する…まぁ自慢と言っちゃなんだが僕に勝てるクソゲーハンターはこの世に…ククッ失礼…まぁ存在しないだろうな」
ッフまぁこれを聞いて僕に驚かない人間なんていないさ。僕は400を超える本数のクソゲーを今までやってきたんだ。このゲームも楽勝だ。この愚かな少女は僕にこのゲームをクリア出来ないと思っているんだろうが、なぁにその内アッと言わせてやるさ…。自前の眼鏡をクイクイさせながら隼はこう思っていた。
二人がお互いに怪しく笑うという何とも微妙な間の中、「…で、そろそろ話してくれないかな…」と隼が切り出した。
「良いだろう!これから話すことは女神様の言葉だと思って耳かっぽじってよく聞きなさい!まず最初に、あなたには覚えてもらう魔法がある!その魔法の名はステータス開示魔法!これは光の女神様が作ったという、女神の加護を受けし勇者にしか扱えない限定魔法なの。やり方は簡単よ!言葉に発するだけで良い。勇者のあなたなら出来る筈!ステータスオープンって言うだけ!やってみて」
言われるがままに隼が「ステータスオープン」と口にする。すると夜空に銀河を美しく彩る輝かしい星々の発するような光が現れた。それはまるで神秘的な蝶の如き舞を想定させるかのように、雄大にして高雅にそれを空中に描いた。
!(^^)!= 4 (´∀`=) 1 ('Д')= 1
(*´Д`)=1 (・´з`・)=2(#^ω^)=1
重3/4 0/100 割0
「いや…全く意味が分からないんだが……その女神とやらは何を思ってこんなのを作ったんだい…」
暫くの間、二人に無言の時が流れる。
「…………さっこれで私の知ってることは全て話したわ!早速敵を倒しに行くわよ!」
頬に冷や汗を垂らしながらも何事も無かったようにナリアが立ち上がった。
「いや待つんだ。君、これが読めるのかい?神の使いなんだろう」
隼がどこかに歩き出そうとするナリアの袖をぐっと掴む。
「………え、え~と、これは…て、てかそもそもこれは貴方達の言語に合わせてあるものなんだからあなた達にしか読めないものなの!私に読めるワケ無いじゃない!自分の世界の言語も知らないわけ!?そこまで私がいちいち教えなきゃなの?!大体ね、貴方達は恵まれてるの!女神様達が貴方達の言語を懸命に学んでそれを元に作った大魔法を使ってこの世界の言語を貴方達に分かるように表示させてあげたり伝わるようにしてるんだから!少しは自分で頭使って何とかしなさい!分かった!?ぶち○すわよ!!」
ナリアがどこからかハート型のステッキのような物を持ち出し怒り丸出しの形相で隼を睨みつけた。
「…悪かった…しかしこれは…」
ステータス関連のバグはゲームの世界でも良くあることである。意味の分からない値、文字化けして読めない値、細かく値を振れる割にはその大半が何にもならないもの等、それはクソゲーハンターである隼自身が一番分かっている筈である。だが、今回ばかりは隼自身にもどうしたらいいのかが今のところは全く分からなかった。
「意味が分かるのは0/100これは…簡略化はされているがおそらく経験値だ…次にかろうじて読めるのはこの「重」と「割」だけか……これは一体何のパラメータなんだ…いや…待て…この「重」しっかり見ればこの喜んでる顔文字と一緒じゃないか……これは僕自身の重量制限…か?…そしたらこれは筋肉量に繋がるんじゃないか…?そんなゲームをやったことがあるぞ…」
そのゲームとは復讐モノrpg「悪王を殺した僕がその彼女に殺されるなんてエピソード13」である。スター○ォーズ形式で発売されたこのゲームについての詳細はまた別の話である。
「全く…!さっ勇者様。こんなところで油を売ってないで早く敵を倒しにいきましょっい!ゲヘへ…敵をぱっぱと○って早く女神様と二人きりなってムフフのフ~ンよ!」
意気揚々とナリアがギルドの外に出た。
「おい!待て!…やれやれ…」
前回と引き続き隼はやれやれといった様子でナリアの後を追いかけた