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くそげーのひろいんがあらわれたのだ

「さぁてまずはどうしようか………」


 ブツブツを独り言を言いながら玉座の間を後にし、城外に出ると小さな噴水のある広場に出た。何人か外に出ている者もいたが、そこにあまり活気は無い。路上に敷かれたレンガタイルはどれも割れて崩れており、その上に建っているどの店も外装から看板まで全て痛んでいる様子だった。


「あの!ちょっとすみません!」


 そんな中、村の道行く人に懸命に話を掛けている、少し丈の長い青色のワンピースを着た身長150程の少女らしき人物の姿があった。


「私、この世界に召喚されたっていう勇者を探してるんですけど…」


「やぁこんにちわ」


 村人Aらしき人物が応える。


「あっえっと、こんにちは。それで、勇者は今どちらに…」


 繰り返し村人Aは「やぁこんにちわ」と言うと、目の前の少女を気にも留める様子も無くスタスタとどこかに歩いて行ってしまった。


「あの!待ってぇ!私!勇者様を探してるんですけど!あー!もうこれで何人目!?どうなちゃってるのよ!全く!道具屋に入って話を聞いても店番の人「やぁいらっしゃい。何か必要な物はあるかい」しか言わないし!武器屋に入っても「必要な武器はあるかい?」しか言わないし!女神様ぁ~!助けてくだしゃい~!このままじゃ私もこの村の雰囲気に飲まれて「私は勇者を探していますBOT」になっぢゃうぅぅぅう~!あぁあああ~」


「あの…」


 隼がタイルを何度も叩きながら荒れ狂ったように泣き叫んでいる少女らしき人物に話掛ける。すると少女らしき人物は涙を浮かべ「…?」と言った表情で一瞬だけ隼の方を見て、また塞ぎ込むようにして泣き叫び始めた。


「今度は「あのBOT」お化けぇ~!ああああ!もう私もこんな風になるしか無いんだぁ~!道行く人々にあの…私は勇者を探していますって!聞くだけの存在にぃ!あぁぁああ!そして…グスッ…そのまま食事も何も取らなくなってボロボロになって勇者も見つけられず死んでいくんだぁあああ~!あ、でもそうなったら、きっと女神様が私のことを助けに来て「大丈夫だったかい(キリッ!)もう君をこんな目に合わせはしないって!きゃぁああ~!おえ゛ペッペッ砂飲んじゃった…」


「おい…君…汚いじゃぁないか」


 少女らしき人物が飲んだ砂を吐き出した先にはその前にしゃがんで語り掛けていた隼の顔があった。


「どわぁぁあ!びっくりしたぁ!なんやぁお前!ワイとやるゆうんかぁ!おぉ!botの分際でええ度胸しとるなぁ!こちとら百戦錬磨の最強魔法少女やぞ!あんまり舐めてっと首かっさらたるさかいに!」


 少女らしき人物が勢いよく立ち上がり戦闘態勢らしき構えを取る。


「…はぁ…全く…で、君なんだろ…その女神の使いとやらは…」


 そう言うと少女らしき人物は一瞬ポカンと口を開け、すぐにとびっきりのおしとやかな表情を作り出した。


「待っていました。勇者様。私の名はナリア。女神から崇高なる使命を帯び…ってんなわけあるかーい!」


 途中までの穏やかな表情を急に止めたかと思えば、いきなり怒ったように隼の顔をバチーンと平手打った。


「お前みたいのが勇者なワケないだろうがぁ!あんま舐めてっとぶち○すぞ!なんだその鼻くそを丸めて絵にしましたみたいな顔は!もう百ぺん転生しなおしてこいや!良いか勇者ってのは白馬でクールでホワイトニングでキッラキラの人のことを言うんや!お前は耳クソと鼻クソを一晩煮詰めて出来た…何かや!」


「それを煮詰めたら普通に消えて無くなるだろう…恐らくな………全く…はぁ…僕は君の言う女神ヘレナからこのクソゲーを攻略するよう頼まれた正真正銘の君たちの言う勇者だ」


 やれやれと言った表情で隼が応える。


「ヘレナ様のことを容易く口にするな…って何でそのことを!?まさか本当に…勇者様?えっでもクソゲーって何!…」


 えっ…この人が勇者…?まぁ確かに言われてみればそんな風格が少しあるような…?ううん!きっと違うわ!こいつはヘレナ様のことをどこかで伝え聞いた悪の手下で、私を騙そうとしてるの!お父様も仰ってたわ!危ない人には付いて行っちゃダメって!そもそもクソゲーって何!


「………そういえば女神様が言っていたな…」


 このナリアの様子を見かねた隼がおもむろに話し始める。


「賢くて優秀な彼女のことだから使いの者に私のことを話せば直ぐに話が通るわ。とてもできる子で今回の件を一任出来るのはあの子しかいないの。今回の件が終わったら頭をナデナデしてやるわってな」


 隼がほぼ完ぺき(若干の低さはあるが)にヘレナの声を真似る。


「どうだ」


 な、な、なんかキモイですわ~!あまりの衝撃にナリアの表情が固まる。


「はぁ…そういえばヘレナが今回の件が終わったら二人きりで話そうみたいなことも言ってたな…」


「なななな!それは本当!?」


 急にナリアの目が輝いた。


「あー、コホン。本当…だ」


「勇者よ!早くこのクソゲーを終わらせ世界に平和をもたらそう!私が勇者を導く!さぁ出陣ぞ!」


 ぱぁぁああとした表情のナリアが意気揚々と隼を急かす。


「何をしておるでくの坊!行くぞ!」


「何だって……全く…」


 全くどこに行くのか分からないが取りあえずズンズンと歩みを進めるナリアの影をやれやれと言った様子で隼は追いかけるのだった。

 




 

 


 

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