表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

くそげーのはじまりは ”まっしろなくうかん”

「ここは…」


 隼が目を覚ますとそこは真っ白な空間だった。


「おお!やっと目が覚めたか!」


 声の方を向くと、身長170弱程の女性の姿があった。


「さて、早速本題なんだけど…あぁ、その前に自己紹介からか。私はヘレナ。異世界の統括神ゼロウス様に導かれし女神七神の内の一人なんだけど…っておーいちゃんと聞いてるかー」


 隼のぼやけていた焦点がようやく定まり、ハッとした表情で辺りを今一度見渡す。


「こ、ここは!?か、身体がある?君は一体誰だ!ポ、ポリ子は!ポリ子はどうなった!」


 隼が勢い良く体を起こし目の前の女性の肩を思い切り揺さぶる。


「だーっ!一個一個説明してる暇は無いの!お願いだからとにかく落ち着いて頂戴!」


 隼の手を振りほどき、逆にがっしりとヘレナが隼の肩を掴んでしっかりと隼の目を見つめた。


「君は…人間なのか…?」


 隼がまじまじとヘレナの方を見る。白く透き通った白い肌、仄かに赤みを帯びた目、真っ赤な髪、それよりも一番隼の目に止まったのは真っ赤な髪の間に生えている二つの小さい獣に生えているような耳だった。


「だから!女神!め!が!み!なの!」


「…あの時…僕はトラックに引かれて死んだ筈…走馬灯の中でポリ子との思い出に浸って…それから…なるほど…ここは天国とか地獄とかそういう類の世界なのだろうか…それで女神…?頭に犬の耳のある……?」


 隼がヘレナの手をほどき、少しヘレナから距離を置いた所で顎に手を当てながらブツブツと独り言を始めた。


「耳のことはともかくとして……変なの…貴方たちの世界ならこんなことがあっても「あぁ…異世界転生モノか…」とか「あぁー!小説で読んだことがあるぞ!」とかそんな反応するものかと思ったけど…結構そういう人今までも何人もいたし」


 その様子を見ていたヘレナが呆れたように言う。


「はは…まさかそんな漫画みたいなことあるわけないだろう。僕が言うのもなんだが、少し君頭おかしいんじゃないのか」


「んなっ!まぁいいわ……とにかく、あるのよそんな漫画みたいなことが」


 何の整合性も取れない状況に隼の頭は段々と追いつけ無くなっていく。異世界転生だと…?フッそんな馬鹿な…もしかしてvrとかいうゲームの世界?いや自分は現実にいた筈だ……この自称女神とかいう女の頭がほんとうにおかしいのか?それとも僕の頭がおかしいのか…ここはどこでここは誰なんだ…そもそも僕は存在しているのか…?


「だーっ!良いから!聞いて!ゆっくり説明してる暇ホント無いんだから!とにかく!あなたにはこれから別の世界にいってその世界を救う勇者になって欲しいの!ほら、なんかそのーそう!あなたの世界にあるゲームでも良くあるでしょ!なんていうの!ほら!えーと!RPG!そうRPGの勇者!ジャパニーズ勇者ゲーム!」


「ゲームだと」


 ゲームという言葉一つで先ほどまで白目をむいていた隼の目に少しだけ生気が宿った。


「そ、そう!ゲームみたいなものなの!そのー、私も少ししかやったこと無いんだけど!なんていうの最近流行ってるじゃないほらあれよ、VR?ヴァ、ヴァ―タルなんたらみたいな!」


 適当に話を合わせる為に女神の威厳をかけてヘレナは頑張る。


「クソゲーなんだろうな」


「へ?なんて??」


 意味の分からない隼の切り返しにヘレナの目が点になる。


「僕はこうみえてもクソゲー愛好家でね。人はみな僕のことをこう呼ぶんだ。”不休のクソゲーハンター隼”って…ね……まぁ、二つ名みたいなものさ。まぁつまりそのゲームとやらがクソゲーだと言うのなら是非攻略したいってことさ……」


 う、うっわーなんかこいつマジヤベェ。目が点のままヘレナはそう思ったが言葉に出すのをグッとこらえた。


「そ、そう!そうなんだよ!く、クソゲーなんだなぁこれが!今まで99人も挑戦してだーれもクリア出来なかった!そりゃあもう特大のクソゲーなのよ!」


 女神がクソという言葉を使うのは如何なものかとも自分でも思ったが、ヘレナにこのチャンスを逃すことは出来なかった。


「99人がクリア出来ないクソゲーだって!ッフッフッフ!ハーッハッハ!良いぞ!凄く良いじゃあ無いか!そういうの!全く興奮してきたよ!あぁ…これはきっとポリ子のお導きなんだろうなぁ!」


 なぁに言ってんだこいつは。またしてもヘレナは思ったがグッとこらえた。


「そ、そうなんだよ!ポリ子もそう言ってたんだ!は、話が早いなぁ~そうそう私もポリ子に導かれたかんね!「女神よ…彼にこのクソゲーをやらせるのです…」って!」


 いやポリ子なに?女神はぐっとこらえる。大丈夫だ。私は何もおかしくなってはいない。


「そうだったのか…それなら早くそう言ってくれれば…」


 んなわけねーだろ。こらえろ私ッ


「よ、よしじゃなんか納得してくれたみたいだし、早速…ってその前に向こうの世界では一応言葉が伝わるように、その、設定?されてるから、まぁお約束って感じだけど…」


 ゲームっぽくゲームっぽくッ!!頑張れ私!


「コンフィグ日本語設定可能か…なるほどそれくらいはまぁ許してやるか…クソゲーの価値は下がるが」


 なんの価値だって?いやもう突っ込むのやめよう…


「じゃ、じゃあ…あとのことは向こうに行ってから聞いて頂戴…異世界召喚先に私の使いの者がいる筈だから…」


 疲れた様子でヘレナが異世界転生の呪文を唱える。すると隼の体が光輝き始めた。


「ま、待ってくれポリ子は他に僕に何か!」


「はよ行けぇ!」


 ヘレナが一気に魔力を放出すると隼の体は完全に光となってその場から消えていった。


「はぁ~つ、疲れた…こんなことしてる場合じゃないのに…」


「ヘレナ…」


 げっそりとした顔のヘレナに声を掛けたこの女神の名はグレース。ヘレナとは対照的に青い瞳と長く美しい青色の髪を持つ。胸もヘレナの3倍程である。


「グレース…どうしたの…」


「さっきのキm…いえ……今異世界に召喚させた方のことなんですけど…」


「グレース…本音が凄い出てるけど…」


「今の方…召喚候補の方では無いわ…リストのどこにも見当たらないし…」


「え……え?えええええええええええ~!!!じゃぁ!今のは!」


 二人がこんなこと話していると後ろから「あの~」という声が掛かった。ヘレナが振り向くとそこには次期勇者100人目として異世界に転生される筈だった男がいた。


「終わった………」

 

 真っ白な空間にこの一言が虚しく消えていった。


 



 



 


 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ