狂気
過去、ボクは手書きで原稿を書いていた。
仕事部屋(と、称する趣味の巣窟)が手狭となってきたので原稿を整理することに……
15年前くらいの、某麻雀漫画に影響を受けたような書きかけの原稿が在った。
当時のボクは、素人の割には麻雀が上手い方で(『上手い』というのがミソ。上手さ=強さではない)、某競技麻雀大会で瞬間最高順位9位に立った際に『Best8』の高みを目指して結果11位に沈んだ。という過去がある。
愛読書は、片山まさゆき先生の麻雀ギャグ漫画というボクにしては快挙である。
当時からある某麻雀雑誌には、漫画といっても劇画ばかりが隆盛を極め、片山先生は徐々にレジェンドへと昇っていく中で、何も考えずにボクは麻雀を題材にした作品を急に書き出した(笑)
そう、書きたくなったのではなくて書き出した。
プロットも何もないままに……
そして、十数年後に発掘された作品がこれです。
短期連載、しかも月一更新で掲載します。
今後の展望としては、主人公が頓死して転生ものにしようかとも思うのですが、そこは天邪鬼のボク。
流行りを無視して、やや重たい感じの作風に若干の希望をまぶした作品にする予定です。
次回更新予定は、2024-7/7。
通りすがりの其処の貴方。是非、よろしくお願いします。
強くなりたかった。
最強の先に、何が待つかも考えず……
ただ強く、つよくなりたい一心だった。
ひたすら、頭脳と肉体を強化し続ける毎日。
後悔は、先に立たず…
その途上で、実に多くのものを、或いは意識的に、或いは無意識に、置き忘れ、捨てて走り続ける。
やがて、激しい孤独と、磨耗して荒みきったココロだけが、掌の指と指との間をすり抜けず残る。かろうじて、自我を認識できる程度に…
* * * * *
とあるMSの一室で、オレは、その筋の代打ちをしている。
定職に就かないオレにとって、半分遊びの、しかし、命を賭けるというシビれるこのバイトは、実際美味しかった。
育ちも良くない理解者もほぼいないオレにとっては、現実に命を賭すことでしか生きている実感が湧かない。
真っ当に働こうにも、その活力が皆無。
激しい自己否定でココロは歪にきしんでいる。
麻雀牌を、積み木代わりに、好むと好まざるとにかかわらず、育ったオレ。
親父は、お袋を働かせて、その稼ぎで麻雀荘へ通いつめる毎日。夕刻になると、馴染みの雀荘へ出かけて、明け方に帰宅。昼過ぎまで寝っこけて、起きては酒をかっ喰らう。
暴行こそ働かないが、暴言でお袋をなじるのは日常茶飯事。
たまに、オレの相手をすれば、盲牌などを仕込む始末。
はっきりと言えば、いわゆるチンピラのごくつぶしだ。
奴のせいで、お袋は早逝------
奴自身も、オレが17の冬に、ヤクザの類に刺された傷が悪化して、オレを遺して逝った。
そして、現在(19)のオレに至る。
カエルの子はかえる……血の繋がりは、いかんともし難いというところか。
対面は、ド本命の裏プロ吉住、その上家---オレの下家はもちろんのこと、オレの上家も吉住の側近連中。
勝負の趨勢があったかに見えた、南2局。
配給原点二万五千で、現在のトップは裏プロ吉住、放銃無しで3連荘を含む5度のアガリで得点は四万七千点。
2位がオレ、東3局に下家から千三百点をロンアガリしただけの二万六百点。
3位がオレの下家、東2局5本3本のみのアガリで南2局現在一万七千八百点。
ラス目、オレの上家がノーホーラの一万四千六百点。
そして、南2局待ち焦がれたオレの親番。裏プロ吉住との点差が実に二万六千四百点。
親ッパネを自摸上がっても、二万四千点差までしか捉えることが出来ない。
ドラ表示牌は『東』
オレの配牌は、南、西、白、白、中、一、九、①(イーピン)、⑨、⑨、2(リャンソウ)、4,5,8!!
第一打、オレは躊躇なしに5(ウーソウ)を切る。
下家、裏プロ、上家が字牌処理しての一巡。
オレの自摸は③(サンピン)。
オレは打4(ターヨンソウ)。
三巡目、オレの自摸は西、打8(ターパーソウ)……
四巡目、オレの自摸は①(イーピン)。打2(ターリャンソウ)……下家の①をポンせず!
ちょいと打ちなれている輩ならば、混老頭か、混一色、七対子を意識するはず。
ソウズを嫌ったのは、安いからだ。
ドラの南が孤立していては、清一色まで走らなければ満貫の可能性すら薄い。
最初、配牌を見た時点で、満貫以上の最終形は、1.国士無双、2.混老頭トイトイ……
だが、見落としてはいまいか!?
確率は度外視して、この世には狙える倍満と、ツキ頼りの倍満が存在する。
この手牌で一番効率の良い倍満手は、ズバリ!!『立直、面前混一色、七対子、ドラドラ』だ。
断公九平和系は、狙いを定めての倍満は難しい……特に、字牌がドラでは。
五巡目、六巡目とソウズと五萬引き自摸切りで迎えた七巡目、なんとドラの南が重なる。
三筒『③』(サンピン)、または『中』引きで、理想の面前混一色七対子ドラ2(メンホンチートイドラ2)に手変わりする。
が、七巡目。オレの下家が、捨て牌を曲げた。立直である。彼の河には、北、発、西、①、発、八、2。
典型的な断公九平和系。
裏プロは、東を切る。根拠は、暗刻子落とし。オレの上家は、露骨にドラの南を切る。最悪、オレの親番を流す心算だ。が、オレは南を鳴かず!!
八巡目、オレは、一発目に九萬を切る。
何故??
奴、下家は、オレ狙いが見え見え。つまり、前半にソウズを嫌い、ワザとソウズを完断ちしたオレを効率よく狙うのならば、ソウズ、しかも2-5-8の筋で待つはず!!
相手の待ち牌を読むのに必要な三型。色(字牌、萬子、筒子、ソウズの4色)で絞るか、筋(1-4-7,2-5-8、3-6-9)で絞るか、点(役)で絞るかの3つに区分け出来る。
奴(下家)は、牌効率に従いスピード重視の断平系で、2(リャンソウ)を曲げての5-8ソウ筋待ちで、面前断公九平和(三千九百点以上)の裏ドラ期待でほぼ確定。
従って、十中八九、オレ狙いのソウズの5-8待ちなのは火を見るより明らか。オレの上家、観察によると頭数に過ぎない素人(ト―シロ)。裏プロは、一位を堅守したいはず。七巡目立直の下家は、自摸上がり以外は上家の拙い援護に期待するしかオレを出し抜く手はずはあり得ない、実力的に。そして九巡目、オレの手牌に③(サンピン)が加わる。
-流れに乗れたー
壱萬を横にする。中単騎待ち。
詰まり、南、南、西、西、白、白、中、①、①、⑨、⑨、③、③のカタチ。混一色は見え見えだから、トップ目の裏プロは手堅く現物降り、流石にトーシロの上家もベタオリして、七巡目立直の下家とタイマン。問題は、裏プロがワザと下家に5-8(ウ―パーソウ)を差し込む懸念があること。が、一発を外した。二発目にそれ(差し込み)をしないのが、5-8ソウを持っていない確たる証。下家の振り込みorオレの自摸上がりの確率はそう高くはないが……下家が⑦(チーピン)をビクッと打つ。ポーカーフェイスのオレ。プロは共通現物。上家は運よく??二枚目のドラを切る……降りている心算かトーシロ。そして、盲牌で判る手触り。中一発自摸。
「立直、面前混一色、七対子、即自摸、ドラドラ、お、裏ドラ表示牌②(リャンピン)」
「リーチ、メンホン、チートイ、イッパツ、ツモ、ドラドラ、ウラ2!!!!」
「さっ、三倍満!!??」裏プロが呟く。
期待以上の成果、オレの捲りTOPだ!!!
この作品は6/6に掲載したかった。
理由は、6/6が芸事を始めるのに縁起が良い日だから、というゲン担ぎ的な……
『活動再開』と大見えは切れません。
が、おそらくこの作品は、前後編か若しくは前中後編に成る予定です。
月一連載。
6/6(実際には6/7)、7/7、あれば8/8で完結します。
現段階でノープロットです。
何も考えずに書いております。
興味があれば7/7にもお立ち寄りください。