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第9話 出てき方が完全に魔王側っ!!

 弦人とフレアは異変に気づき、声のした方を見た。


 先程まで弦人が洗い物をしていた炊事場だ。


 炊事場の貯水樽から、ウネウネと水が動きだし、弦人とフレアの元に這い寄ってきた。


 水は人の形を形成し始めた。


 水は無色透明から、徐々に色を帯びる。


 そして、水は若い男の姿になった。


 歳は20代くらい、どんよりした目に眼鏡をかけ、黒い神官衣を身に纏っている。


『初めまして、私はベルガーファ神殿の神官、クロエと申します』


「イヤ、出テキ方ガ完全ニ魔王側ッ!!」


 弦人は、クロエと名乗った神官にそうつっこんだ。


『すみません、これは、水写しと言って、遠隔通信の魔術なのです。本体の私は、遠く離れたベルガーファ神殿にいます』


「ベルガーファの神官ということは、ゲントに神託を受けさせるために来たの?」


 フレアは、クロエにそう問うた。


『左様でございます。白銀の魔女のヒモが召喚者だと、複数の旅人から情報がもたらされまして、このようにご挨拶に伺ったのです』


「ダカラ、オレハ、ヒモジャネー!!」


 全く悪びれた様子のないクロエに、弦人はすかさずつっこんだ。


『失礼、白銀の魔女の同居人が召喚者だとうかがったのです』


 クロエは特に申し訳ないという様子もなく、そう訂正した。


『それで、つきまして、あなた様、えーと……』


「ゲントダ」


『ゲント様にベルガーファ神殿においで頂き、神託を受けて頂きたいのです』


「ソノ、神託トイウノハ?」


 クロエは、神託について語り始めた。


 異世界から来た召喚者は、神々を祀るベルガーファ神殿で、神の声を聞き、己の使命を知り、魔王を倒すために旅立つのだという。


「行ク」


 神託の内容を聞いた弦人は即答した。


「行ッテ、神託ヲ受ケル」


 弦人は、言葉もだいたい覚えてきたし、この世界のことをもっと知るために、色々なところに行った方がいいと考えていた。


 魔王を倒す旅に出るかは、まだ決めていないが、この世界で何か大きな目的があった方がいいだろうし、話の流れによっては、本当にそうするかもしれない。


『ありがとうございます。それでは、ベルガーファにてお待ちしております』


 クロエはそう言い残し、クロエの姿をしていた水は、バシャリと音を立てて床に散らばった。


「迷惑ナ通信手段ダナ……」


 弦人は面倒くさそうにそう言って、床に散らばった水を雑巾で拭いた。


「行くのね?」


 フレアが心配そうにそう言った。


 弦人はそこで、しまったという顔をする。


「ゴメン、勝手ニ決メチャッテ」


 弦人は申し訳なさそうにそう言った。


「ううん、構わないわ。あなたがここに住み込んだのは、成り行きだったし。召喚者である以上、いずれ神殿に行くことにはなるだろうと思ってた」


 そう言いながらもフレアは少し寂しそうな顔をしていた。


「でも、ここは、この世界での最初のあなたの家よ。だから、いつでも帰ってきてね」


 フレアは寂しさの混じった笑顔でそう言った。


「アリガトウ、フレア」


 そう言って、弦人も少し寂しそうに笑顔を返した。




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