在り
ごめんなさい。それが私の最初の言葉だった。
終わりもそうなるかもしれない。そうは思わなかったが、彼女の言葉かもしれないと思った。その文字の。
礼した黒に触れ、下ろす黒に触れる。これは居着きだろうか。
黄色の綿毛を磨り、紅に染める。それを望み、今この一筆箋を重ねている。
「ねえエラ。言葉はいくつおぼえたの?。」
「姉妹っておぼえたよ。」
「ふひひ。門の前みたいだね。」
「お父さんは何て?。」
「あははは。さすがきぞくの娘だって。」
言葉は矢じるしの様だ。その方向へ進んで行けば池がある。そこに指をつければ彼女は眠気を起こす。
わたし達のお家は南の方にある。草木が沢山列んでいて、声が沢山する。わたし達のように、言葉を選んでいる。
「ししアネッテ。お茶をつみに行かない?。」
「いいね。行きましょう。」
わたし達のお家にはかぎが無い。あるのは、てい園の前の門だけだ。誰でも出入り出来、当然わたし達も、お手伝いさんのお部屋に入れる。
「ほら、綺れい。エラの写真がある。」
「本当だ。」
「これは冬のものかな。あしを組んでる。ねえねえ扉は?。」
「閉まってるよ。」
わたし達は遊びを見付けると時刻を決めてくり返す。お茶というのはいん語で、金色のかんむりがあるのだ。それをわたし達は鼻をかむ様にし、笑み合う。まるで有りの様だ、と。
このお屋しきではすその足首まで届くワンピースを着ている。2人共だ。
彼女の声がする。ピンク色の穴があるという。見下ろすと確かにピンク色の穴が空いている。それはなあに? ときくと穴だよと答える。確かに。はもんの付きそうな穴だね。
朝食に我々はモンテビアンコを食す。どういう絵を描くのか知らないが、晴れた彼女のかいだんのさまだった。そのみためは、いすに座りフォークを持つわたしのさまだった。
時刻は夕暮れ。陽があたたかい時間〃だ。エラと待ち合わせる。お家は2かいにゆけばゆく程陽が挿し、ひげの有り様が変わる程あたたかい。だからわたし達は土間で落ち合う。さっきまで一緒に居たわたし達が、お昼寝をする為だ。そこには言葉しか無く、彼女の香りもしない。わたしの香りもしない。有るものは、空想だ。
時が経てばかいだんに2人が映る。何もやることが無い時、わたし達は空を映す。カメラは無い。お互いの足の指に空が映り、それに指わをはめていく。はまったら、それを人と云う。どうしてだろう、と鼻を抓むと、表門から音が鳴る。わたし達はふき出し、前室ににげる。こしを曲げ、お母さんの真似をする。わたし達は疲れ、互いのイヤリングに穴を空け、空を映す。
今や酉の刻。あちらこちらでは雪が降ったと言う。鳥の尾の様に、色づいて。春は今や午の刻。雪は今やいつだろう。私が行く月次の艶々しき事。憚ることを避けるのならば、赦して欲しい。その下で、恕したい。為にわたしは月次を合いゆく。