神様に恋をしてた話
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
ベースは普通の恋人の話です。
一人語りのみが、異類婚姻譚の悲恋です。
あとがき気をつけて。
「昔は神様に恋してたなー」
黒を基調としたシックな喫茶店で、茶化したようにそう言った。付き合ってからまだ数ヶ月、冗談をこよなく愛する彼女は今日も絶好調だった。滅茶苦茶お茶目。
「昔はロマンチストだったんですね」
「いやいや〜? 今だってバッチバチの中二全開のロマンチストだぜ?」
目を細めて笑う。アイスコーヒーの上に乗った特盛の生クリームを崩しながら、右手をひらひらと振る。真実も虚偽も曖昧にさせるような軽薄さ。でも瞳の奥に除く仄暗さだけが、悲しい光を帯びていた。それを見て、俺はケーキの端を一切れフォークの上に乗せた。期間限定の桃のケーキ。貴方がその珈琲と死ぬほど悩んで諦めたこの一切れ。それを口元まで持っていく。
「代金」
「は?」
「聞かせて下さい。その話を」
「そもそも冗談のつもりで言った作り話で……」
突然の出来事に驚いたように、身を縮ませる。でも双眸だけは、まだ悲しい色を灯していた。目は俺を写してなんか居ない。遠い過去を写している。嘘も程々にしやがれ。
彼女は渋々と言ったように、ケーキと触れ合っている口を開く。僅かに空いた口の中に甘い一欠片を入れる。交渉成立。
「何でも良いです。物語であろうが、真実だろうが」
そう言うと、彼女は僅かに唇を震わせて口を開いた。舌先はクリームを纏っていて甘そうだった。
ん、私が恋したのは、そりゃもう綺麗な神様だった。毛量の多い白髪に、目尻が少しだけ吊り上がった赤目。女なら十中八九振り返るでしょ? ていう様な美人さんだった。
その神様に願ったんだよ。貴方に恋をした。我が身滅ぼしても良いから連れ去ってって。そしたらさ、私の首元をそろっと撫でて、「可愛いこと言うね」って言ったのさ。すげぇ甘い顔して、乙女心とか平気で蕩かす声して。
あん? 返事はどうなったのかって? 見りゃ分かるっしょ? 駄目だった。振られちった。でも振り方もなんて言うかな……。ちょっと謎かけめいてた。最後まで粋だったよ。
あの後ずっと心臓痺れさせながら、帰ろうとしたのさ。その時に見ちゃったんだよね。……蛙の置物。…………「無事帰りますように」っていう願掛け。その時悟ったのさ。振られたんだって。普通言わないでしょ? 連れ去る相手に「無事に帰ってね」なんてさ……。本当に好きだったら、その場で神隠しじゃんか……。
話終わると、またクリーム塗れのアイスコーヒーに口を着けた。忙しなく目線を泳がせて、頬を二回ほど叩く。動揺しているのが見て取れる。どうやら俺の反応を伺っているようだ。
「クソデカ感情持ってる人が好きです」
またケーキを一切れ乗せて、彼女の口元まで運んだ。大人しく口を開けてその行為を受け入れる。雛鳥のようだ。貴方の方が年上なのに。
「だからその気持ちが全部俺に向かうよう、頑張ります」
ポロッと出てしまった弱音を、仕舞い込んでいた悲しい過去を、俺の手で引き摺り出した。その責任は生涯掛けて償いますよ、先輩。
如何せん、旬を過ぎて書いてしまったので、昨日ほどの臨場感は私的にはありません。
小説は一分一秒が勝負です。
惚れた女の恋の話聞いて、それを塗りつぶして自分に染めるって相当メンタル強いと思います。
元彼引き摺ってる子に対して、俺が忘れさせるって言ってるもんですからね。
今書いてるのがそんな子なので、ついつい派生して書きました。
クソデカ感情持ってる子大好きです。
愛は何時だって無敵✩°。⋆⸜(*˙꒳˙* )⸝
追伸
この子の一人称、口調的に「僕」のが良いです?
私的には「私」だと思ってるんですけど。