The Queen of Kabuki-cho (8)
「組織」による歌舞伎町第一勢力の拠点の襲撃から数日が経った。カリンはというと、恵比寿で離反者が複数名出たとの報告を受け、急遽歌舞伎町を離れていた。しばらくの間は恵比寿方面の立て直しに追われることとなるだろう。
これは後から聞いた話なのだが、驚くことに、どうやらレイラがユメと一戦交えていたようなのだ。終始劣勢だったが大きな負傷はなく、代々木方面の味方部隊の到着によって事無きを得たらしい。
その代々木方面の部隊も、敵勢力が拠点内に置いていった物資などを回収して戻っていった。代々木にも課題は山積している。
つまり、カリンが戻ってくるまでは自分が歌舞伎町方面の作戦の統括を担当しなければならなかった。少々荷が重い、とマホは思った。
いくらかの人員補充を受けた歌舞伎町方面の部隊は、ひたすらユメの所在を探し当てようとしていた。もしユメがいま歌舞伎町から離れているのであれば、それは敗北を広く表明しているに他ならない。すなわち、まだこの街のどこかに潜伏しているはずである。味方部隊にはユメの容姿や特徴などのデータを配布し、一切抜かりのない包囲網を敷いていた。
立場上は自分の補佐に回っているレイラを呼んだ。ユメの素性を暴いたという意味では評価されるべきだが、まだまだ新入りで未熟さがあった。レイラは何か明確な目的があると理解してからでないと、何も実行しない。いや、できない。
レイラに目的を与え、実力を存分に発揮してもらう環境を作るのも自分の仕事であった。とはいえ、まだそれは必要とされていない。自分とレイラはユメに顔を知られてしまっているので、下手に動くべきではない。
「傷は癒えた?」
「まだ痛いけど、かすり傷だから大丈夫」
「初めての実戦の割には大したものね」
レイラに深傷の一つも負わせられていないというのは、この子が意外と手練れなのか、それともユメが弱いだけなのか。いずれにせよ、実力差については心配すべきことはなさそうだ。
「私は、この街が好きじゃない」
レイラがおもむろに口を開いた。
「平和そうに見える顔はいくつもあるのに、それは全て武力や暴力が作り上げた顔に見える。どれだけの嘘が積み重なっているのかな」
「たとえそうだとしても、片時も息つく暇がない街に比べたらかなりましな方なんじゃない。もっと北にある、池袋の治安なんてひどいらしいわ」
「そうだよね。何も気にせずにめいっぱい息をできる場所なんてないものね」
レイラは哀しげに笑った。
無意味な会話などしている場合ではないと、耳元に取り付けている機器が告げていた。
「私たちの出番よ、レイラ」
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