The Queen of Kabuki-cho (3)
闇に紛れた来客である。
カリンは、歌舞伎町の最大勢力が根拠地にしている中層ビルの襲撃に取り掛かっていた。配下のうち選りすぐりの精鋭20名を、地上から侵入する部隊、屋上から侵入する部隊、5階の窓から侵入する部隊の3手に分けて行動させており、そのうちカリンの部隊が本隊という扱いになっている。隣のビルから目標地に飛び移ったカリンの部隊は屋上への侵入に成功した。
屋上のエレベーターにつながるガラスの自動扉には鍵がかかっているので、ガラスを打ち割って建物内に突入する。もちろん、エレベーターを使うと敵に自分達の居場所をやすやすと教えることになるので、エレベーターではなく階段を使って階下に向かう。
屋上の部隊が本隊で、総勢8名である。なぜ本隊が屋上から入るのかというと、敵勢力の根拠地が11階建てビルの10階にあるからだ。この部隊が一番近くから突入するということになる。地上部隊が1階の出入口を塞ぎ、5階の部隊は遊撃の部隊、とそれぞれ役割を明確にしていた。
階段を2階分下る。この階段の監視カメラには事前に細工を施しており、所在を把握される心配はない。足音を立てないように気をつけながら時間をかけて進んでいく。10階に到達。廊下には正常に動作している監視カメラがある。最高速で、敵のボスがいる部屋に駆ける。
戦闘がはじまった。
カリンは飛び道具で敵を1人ずつ仕留めていく。他の7名のうち1名には飛び道具、残りの6名には鋭利な凶器を持たせている。武器の類の充実度や戦闘人員の数は敵の方に分があるが、なにしろ急襲で敵の意表を突いている。短時間で殲滅できるはずだ。
カリンは敵のボスと思しき人物に全神経を集中した。距離が近い。接近戦だと飛び道具は使いづらいので、即座に鋭器に持ち替えた。ぶつかる。互いに互いの斬撃をかわした。そこそこの手練れのようだ。反転し、もう一度突っ込む。
再び切りつけようとしたとき、右耳につけている機器から音声が流れた。この機器は、離れた味方と通信するためにつけているものである。その音声は、驚きを禁じ得ない内容だった。
「歌舞伎町第二、第三勢力らによる襲撃を受け、地上部隊が潰走。4名が負傷。敵は総勢30名」
「本当か?」
俄かには信じがたい報告である。自分たちが襲撃している最大勢力と第二、第三勢力が手を組んでいるというのは、全く頭にない情報だった。地上部隊が壊滅したということは、敵の救援が上の階まで上がってくるということか。そうなると完全に計画が狂ってしまったどころか、窮地に追い込まれてしまったことになる。歓楽街の女王がこんなにも早く動いたというのか。先手を打たれた。つまりは女王が予想以上に臆病だったということだ。
「本隊と遊撃部隊は全員、屋上に退避せよ」
敵の斬撃を何とかかわし、指令を出した。もうこの部屋で戦っている場合ではない。次の一撃が来た瞬間、敵のボスの脚を斬りつけた。
ボスが倒れたことを確認し、カリンは廊下の奥の階段へ向かって駆けた。おそらく致命傷ではないが、時間稼ぎにはなるだろう。
何とか屋上に逃れたカリンは、残った味方の数を数えた。14名である。信じられないほどの敗北だった。
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