Prologue
始まります。お手柔らかにお願いします。
2036年、東京。
10年前の財政破綻とそれに伴う歴史的な貧困化によって、日本の治安はかつてないほどに悪化した。地方都市には誰も寄りつかなくなり、生き残りを賭けて日本中の人々が東京へ流れ込んだ。その東京も、あっという間に憎悪や衝突で溢れ始めた。良心的だった隣人は姿を消し、暴力が事実上黙認された東京23区はマフィアやギャングが牛耳る犯罪都市に豹変してしまったのであった。
新宿にある、かつて御苑と呼ばれていた場所の近くのアパートで、兄と2人きりで暮らしていたレイラという少女がいた。
例に違わず、レイラ達の生活も困窮を極めていた。妹思いの兄は、わずかな食料を得るためだけに遠出をしなければならなかったが、文句の1つも言わずに粛々と片道2時間の距離を往復していた。
そして、平凡に思えたあの日も、兄はいつも通り調達に出かけていた。平凡な1日というのは、当時は虚無、欠落、そして空白を意味していたものだった。しかし、あの日ほど平凡であってほしかった日はない。あの日を境に全てが変わってしまった。夜になっても、そして次の日の朝になっても、兄は帰ってこなかったのだ。
兄は歌舞伎町の抗争に巻き込まれ、流れ弾を浴びて帰らぬ人となった。
レイラは泣き、泣き、そして泣いた。泣きながら、何もかもがなくなった新宿の街を当てもなく彷徨っていた。
廃人のように三日三晩歩き続けたレイラは、とある暗鬱な路地で衝撃を覚えた。彼女の眼が捉えたのは派手な銀髪の女である。この女とぶつかったらしい。腕には赤い紋章、手には拳銃。いかにも関わるとまずそうな相手である。死を覚悟したが、それでもいいと思った。しかし、銀髪の女はレイラの顔を見て、微笑んだ。
「ついてきなさい。あなたの居場所はそこにあるわ」
レイラが連れてこられたのは廃ビルだったが、入り口にも中にも女性しかいなかった。4階の大きなフロアに着くと、女は振り返り、手を差し伸べた。
「あなたの身に起きたことなんて私は知らないし、知るつもりはない。あなたの小さな体を覆うほどの大きな絶望だったとしても、それが生きることを諦めさせるものだとしても。残念なことにこの東京では、絶望は掃いて捨てるほど消費されている1つの悲劇に過ぎないの。ここにいるのは皆、今日のあなたと同じように東京に絶望していた子たち。
でも今は違う。絶望を抱いてるのには変わりないけど、諦めは抱いていない。ここには武器も食料も必要なものはすべてある。どうせ絶望するなら、一緒にこの東京の何もかもを台無しにしない?」
レイラはその日から、無秩序な東京の闇を、そして自らの運命を自分の手で切り開くことになる。
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