表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミックス3巻】追放された聖女ですが、実は国中から愛されすぎてて怖いんですけど!?【小説3巻発売中】  作者: 榛名丼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/46

第25話.そろそろ脳が壊れます

 


 その翌日。

 私とキラ、セオドア様、カイン君、エウロパ様、イグナ殿下の五人は、マニラス家の応接間に集まっていた。


 昨日はこのままでは収拾がつかないというセオドア様の判断により、一旦解散になったのだ。

 そのおかげで今日の私はふかふかのベッドでぐっすりと眠れてご機嫌だった。


(昨夜は森の中で、木の葉を敷き詰めた布団を作って泣きながら寝たから……)


「まさかイヴリン様が、本当に聖女様だったとは……」


 セオドア様が唸る声を、私は隣の席で聞いていた。

 反対側で私の匂いをしきりに嗅いでいたエウロパ様は、「ふふっ」と笑みを漏らす。


「セオドア様ったら、そんなことにも気づかずによくも今までのうのうとイヴリン様の傍で呼吸できていましたわね」

「……エウロパ。昨夜と格好が一緒じゃないか?」

「あら、ご心配なさらず。下着はちゃんと替えていますので」


 恥じらいもなく言いのけるエウロパ様に、セオドア様が呆れた顔をする。


「そういう問題じゃないだろう。そんな泥まみれの格好で……」

「この泥はただの泥じゃありませんわっ! イヴリン様の身体からわたくしの身体に合法的に移動してきた泥……つまり国宝級の代物です! わたくしはもう二度と泥のない服になんて着替えませんので!」


 セオドア様はエウロパ様から痛ましげに視線を外した。私もそうした。


「ボク、知らなかったです。天使のおねえさんは、天使のおねえさんじゃなかったんですね……」


 ずっと私のことを聖女ではなく天使だと信じていたカイン君は、どこか落ち込んだ様子だ。

 私は真向かいのキラの隣に座ったカイン君に頭を下げる。


「ごめんなさいカイン君。嘘を吐いて……」

「いいんです。ボクも自分が男だって嘘を吐いてたから」

「そうだったのね……」



(………………え?)



 何か衝撃的な発言を聞いたような気がする。聞き間違いだろうか?


(男なのが嘘? それじゃカイン君は……カインちゃんなの……?)


「そもそも名前もカインじゃなくてカリンなんです」


(……カインちゃんでもなくて……カリンちゃんだったの……?)


 呆然と考えたが、私以外の人はキラも含めて全員知っていたようで特に驚いている人は居ない。

 セオドア様がその場を代表してか言い放った。


「カリンは昔から気弱な子で……僕に憧れて、男装をするようになったんです。ちなみに僕とカリンは母親が違っていて、わりと複雑な家庭なんですけど家族仲は良くて」

「実は前の学校でいじめられてたんです……。それでにいさんのように強くなれたらなって思って、男の子の格好をするようになって……」

「実はもともとわたくし、第三王子のオズ殿下の婚約者候補筆頭でしたの」

「実は幼い頃に菜の花畑を走るエウロパの姿を見たときに一目惚れしていたから、オズに『エウロパは聖女の足の裏を舐めたいという夢を持つ女だ』と説明してドン引きさせ、その話を帳消しにしたんだ」

「本当にイグナ殿下って気持ち悪いですわよね」

「ぐっ……! お前の罵る声が俺にとっては何よりの褒美……!」


(やめてーっ! ここぞとばかりに次々と重要な情報をぶっ込んでこないでーっ!)


 もしかして私の脳に負荷を掛け続ける遊びでも流行っているのだろうか。


 脳が破壊される前に、「助けてキラ!」と私は向かいの席のキラの元まで逃げた。

 キラは面倒そうな顔をしていたが、大人しくお尻を移動させて私にスペースを空けてくれた。大好きよキラ。


「すみません、説明の機会が無かったので……」


 怯える私にようやく気づいたのか、頬を掻くセオドア様。だからといって一気に言えばいいというものでもないと思う。


「それでイグナ殿下。殿下はなぜセムの町にいらっしゃったんです?」


 セオドア様が問いかけると、イグナ殿下は即答した。


「婚約者のエウロパを迎えに来た。それだけだ」

「……えっと、本当にそれだけですか? 王都では騎士たちがイヴリン様を探していると聞きましたが」

「そんなこともあった気がしたが忘れた。俺の頭の中に居るのはエウロパだけだ」

「……なるほど……」


 セオドア様は神妙な顔で頷いた。


「気持ちはよく分かります。僕も頭の中はイヴリン様のことでいっぱいなので」

「!?」


(いま、さらっとすごいこと言われた?)


 深く考える前に、急にイグナ殿下が立ち上がった。


「それでは俺は王都に帰る。行こうエウロパ」

「は? 嫌ですけれど」


 隣のエウロパ様の腕を掴もうとしたイグナ様は素っ気なく断られ頬を赤く染めた。


「そう言うな。こうして迎えに来たのに」

「……あの、イグナ殿下。何か勘違いしてらっしゃるようですが」


 エウロパ様が小首を傾げる。

 そんな仕草も品があって可愛らしい人だ。たとえ服が泥だらけだったとしても。


「わたくし、セオドア様の怪我の治療をマニラス伯爵に依頼されてここまで来ただけですわ。そもそもイグナ殿下にお会いする予定なんて微塵もありませんでしたが」

「うぐっ!」

「勝手に来ておいて迎えに来ただとかちゃんちゃらおかしいですわ。あなたみたいなつまらない鼻血大根と無駄な時間を過ごすくらいなら、わたくしはイヴリン様の麗しい唇から漏れた吐息だけを吸って暮らす華やかな生活を送ります」

「ぐあああっ!」


 イグナ殿下が鼻血を噴きながら絨毯に倒れた。


「殿下!」と壁際に控えていた騎士たちが駆け寄っていく。

 あの量なら失血死するだろうなと思ったけど、私はキラの傍を離れないことにした。だって怖いから。





読んでいただきありがとうございます!

面白い! と感じていただけたら、ぜひぜひブクマやポイント評価をお願いいたします。

ものすごく励みになります!(でも間違いなく作者がいちばん楽しんでおります……!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載です→ 最推し攻略対象がいるのに、チュートリアルで死にたくありません!
【コミックス】第3巻6/12発売!
イヴリン様C3
【コミカライズ】コミック アース・スターにて連載中!
イヴリン様コミック
【ノベル】完全書き下ろし第3巻発売中!
愛されすぎ聖女3
― 新着の感想 ―
[一言] ギャクだと思ったらホラーでしたね これからどう進むのか?更新、楽しみにしています
[良い点] 文章のテンポが良い。 イヴリンが天然かわいい。 先が楽しみ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ