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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

乙女ゲームとか悪役令嬢とか良く分からないんですけど

悪役令嬢モノのヒロインちゃんがバットエンド後に悪役令嬢の世話をする話

作者: 大貞ハル

ちょっと入りが長いですけど、女の子がイチャイチャするだけの話です。

「今日からお世話になります、マリア…、マリア・レーンクヴィストです。よろしくお願いします」

「話は聞いています。細かいことは追々説明しますがとりあえずお嬢様の部屋に行ってもらっても良いかしら」


まだ自分の家名に慣れないマリアがシェーンフェルダー公爵家のメイド長に挨拶をするととても喜ばれたが挨拶もそこそこに仕事にかかるため令嬢の部屋へと向かう事となった。今日から侍女として仕えるのだ。先日部屋まで行ったので場所は知っている。


マリア・レーンクヴィスト伯爵令嬢の実の両親は商人、つまり平民であったが領の発展に貢献したと言う事で男爵位を賜り、それに伴いマリアは貴族の学園に入学する事となった。


本来なら男爵令嬢が王族や上位貴族から相手にされる事はないのだが、第二王子の陰謀で王太子とその取り巻きが暴走しマリアにまとわりついたせいで彼女は男性と知り合う機会を奪われ友人もほとんどできず、仕事も見つからなかったため実家に戻ろうかどうしようかと困っていたところにヴェンデリーン・シェーンフェルダー公爵から王太子との婚約が破棄され家にいる娘、レギーナの侍女にと請われ飛びついた。王太子のせいでトラブルも有ったが一番交流が有ったのもレギーナだった事もあり、ありがたい誘いだったのだ。


男爵令嬢だったマリアが公爵家、中でもシェーンフェルダー公爵家ともなると侍女として働くにもしっかりした身元が必要とされる。そして、この国では上位貴族である公爵・侯爵と下位貴族の子爵・男爵とは明確に分けられているため中位に当たるレーンクヴィスト伯爵家に養子として入ったのだった。男の場合は養子にしても子爵が限度だが、女性は無闇にタネをまいたりしない事から元平民の男爵から伯爵への養子縁組が可能なのだ。


本来であれば重要なのは血と確かな身元なので、いくら家格的に許容されても平民から引き上げられたばかりの娘が公爵家で働くなど有り得ないのだが、今回は特別な事情があった。


広い屋敷の中を静かに歩いて目的の部屋の前にたどり着く。

呼吸を落ち着けてノックすると誰何する声がしたので答えるとドアの前に控えた侍女が迎え入れてくれた。


庶民出のマリアからすると家が丸ごと入るのではないかと言う広さの部屋の片隅で直接床に座った美しい女性が目に入った。床と言ってもふかふかな絨毯が敷かれているので痛くはないのだろうが公爵令嬢としてはあるまじき行動だ。


 はぁ、綺麗な人。本当に同い年なのかしら…


物憂げな表情で窓の外を眺める姿は美人と言う表現がぴったりだ。

対するマリアはどちらかと言うと可愛らしいと言う表現が似合う美少女だ。

2人とも最近学園を卒業したばかりの16歳。この国では成人済みだ。


「レギーナ様…」

そっと近づいて声をかけた。マリアは侍女と言っても求められたときだけ仕事をすれば良いわけではなかった。かけられた声に一瞬不安げな顔をしたレギーナがマリアだと気がつくとにゅっと表情を崩して微笑んだ。


 眩しっ!!


本来キツめな美人であるレギーナが可愛らしく笑っている。物凄いインパクトだった。今のレギーナは他人を恐る傾向があるが、以前マリアがレギーナを庇った事があり、それ以来、非常に懐いているのだ。


レギーナが両手を伸ばして招くので、その手を取って床に座った。

両手を繋いだまま向かい合って座っているとレギーナが嬉しそうに何か話し出すが、何を言っているのか分からない。マリアは学園での成績はかなり良く、周辺国の言葉もほとんど分かるはずだが聞いたこともない言語だった。


「マリア」

「まりあ?」


とりあえず、自分の胸に手を当てて名前を告げる。余計な言葉を足して勘違いされても修正する手段がないので、名前だけを告げてみた。返ってきた言葉はちゃんとマリアと聞こえたがなんとなく響きが違う。憧れの才女が自国語も話せなくなったことが切なかったが、自分の名前を呼んでもらえることがこんなにも嬉しいことだと思うのも初めてだった。


レギーナは卒業記念パーティーでの断罪劇に乗じた第二王子の陰謀で精神に作用する魔法を受けたことによって記憶を失ってしまったのだった。


「レギーナ」

「れぎーな」


レギーナを差して、今度はレギーナに名前を教えた。

目を細めて、にーっと嬉しそうに笑う。


 うっく、こ、これは心臓に悪いわ


服を着替えさせたり、髪をとかしたり、世話をしつつ言葉やマナーを教えていく。

相変わらず床に座ってしまうことも多いが、覚えは悪くなさそうだった。

元が国一の淑女だったのだ。基本的な能力は高いのだろう。


翌日、小さなメイドがやって来た。行儀見習いで公爵家に来ているモニカ・ベーゼだ。モニカも実家は伯爵家だ。年齢は12歳で来年から学園に通う予定だ。年相応だが背が低く見た目も幼いため、人を恐るレギーナが近寄る事を許した最初のメイドだ。


「ううう、マリア様が来てくれて嬉しいですぅ」

「いえそんな。と言うか様は止めてください…」


通常、高位の貴族令嬢には6人以上の侍女が付き、さらにメイドや侍従がサポートする。それを行儀見習いで入ったばかりのモニカが全く言葉も通じないし行儀どころか普通の習慣すら分からないレギーナを相手に、ほぼ1人でやっていたのだ。短期間ではあったが並大抵のことではなかった。


「す、凄いです。簡単な事なら意思疎通が出来ます」

「レギーナ様がそもそも優秀な方ですから…」


モニカが喜んでいる。簡単な単語による会話とジェスチャーをマリアが仕込んだのだ。


今もソファーに浅く腰掛けたマリアが持参した絵本を開いて言葉を教えている。隣に腰掛けたレギーナはそのしなやかな腕を腰に回し、まるで覆いかぶさるように密着してマリアの肩越しに絵本を見るような姿勢だ。


 耳元で囁かれるとレギーナ様の倍音多めのボイスがーっ


2人とも耳まで真っ赤ですよ、とか突っ込んだら負けかなと思うモニカであった。




それから数ヶ月の月日が経ち、レギーナも日常会話は普通に出来るようになった頃の事だった。


『あの、マリアさんに折り入ってお話があります…』

『なんでしょうかレギーナさん』


レギーナが話せるようになったのと同じように、マリアもまたレギーナの言葉を習得していた。

2人にしか分からない暗号のように使っていた。


『実は、私は貴方が敬愛するレギーナ様ではないのです…』

『それは、いえ、なんとなくそうではないかと皆思ってましたが』

『えー? そ、そうなんですか?』

『だって、覚えてないだけでなく、未知の言語で話しているんですもの。おかしいとは思いますよ』

『だよねー』


『それで、前のレギーナ様はどうなさったのでしょうか』

『それは私にも分からなくて…、あの、何日か寝込んでいたと言うあの時、目覚めた私にはぼんやりと違う環境で過ごしていた記憶だけがあって…』

『入れ替わったのか、上書きされたのか、思い出したのか、分からない、と言う事ですか?』

『はい』


そもそもレギーナにかけられた魔法は洗脳するような物だったため、誰も今何がどうなっているのか分からなかった。当然、今のレギーナと言うかレギーナの中の人に罪はない。


『全くの別人で他の場所に本物のレギーナ様がいらっしゃるとか、貴方の中にいて、貴方が封じ込めている、とかでなければ問題ないのではないでしょうか』

『そんな事はしてないです。たぶん』

『…そもそも私は以前のレギーナ様を尊敬はしていましたが、愛していたわけではないのです』

『そ、そうなんですか…』

『はい』


そう言ってレギーナの手を取るマリア。


『私が愛しているのは今の貴方ですから』

『え?』


微笑みで答えるマリア。


『マリアさん』


抱きついて泣いてしまうレギーナ。


「抱きつき癖とすぐに泣く癖は直してくださいね?」

「2人きりの時は大目に見て…」




その後、2人は領地の片隅にあった別荘に移り住んだ。

王家や王太子の取り巻きのやらかしは貴族のみならず国中に知れ渡っていたため、周囲の人間が憶測で勝手な噂をしてくれたので、変に絡まれる事もなく平和にくらしたのだった。




導入の説明部分が下手なので男爵令嬢じゃないのかよ、みたいなツッコミが来そうな気がしますが、読んで(オ

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