法螺貝
これは岐阜県のとある廃駅にまつわる話だ
世間ではこの駅のプラットホームについて不穏な噂が囁かれている
深夜2時、誰もいないはずの駅のプラットホームに、人影が現れるらしい
その人影の正体は「昔、人身事故で亡くなった中年の男性だ。」という人もいたり、「仕事のストレスで自ら線路に飛び込んだ青年だ。」という人もいたりと、様々な憶測が飛び交っている
唯一噂に共通していることは、「男性」で、「何かをつぶやいている」ということ
そして、噂を確かめると言って出ていった人が
翌朝。
首のない状態で見つかるということ------
本当にそうなのか?この類の話に目が無い僕は、好奇心に導かれるようにその駅へと向かった
深夜1:52
廃駅に着いた
周りにはなにもない。ただ、僕の背くらいある雑草が鬱蒼と生い茂り、虫がチリチリと鳴いているだけだった
僕は小さい頃から、こういった場所に来ると妙な高鳴りを覚える
深夜1:59
もう少しで噂の時間になる
胸がより一層高鳴るのを感じた
あと、
3秒...
2...
1...
「ブォー、ブォー」
2時になった
汽笛? いや、
突然、なるはずのない法螺貝のような音が聞こえた。
何かが起こる
そう確信した僕は興奮し、すぐさまケイタイをとりだし、記録を残そうとする
その時、目の前にうっすらと人影が現れた
「それ」は性別は分からないものの、ひとつだけわかることがあった
首がない。
あるはずの場所にあるべきものがない
かわりに、両手にサッカーボール位の大きさのものを抱えている
そして噂通り、何かを呟いていた
「………」
何を言っているのか。興味がまさり「それ」に近づいてみた
「………カ」
もう少し近づいてみる
「…リ……カ」
もう少し近づいてみるもう手の届く距離だ
「…リ…ノハ…カ」
声は両手に抱えているものから聞こえるようだ
しかし、はっきりとは聞こえない
もう少し近づき、手を膝につける体勢でかがんだ
するとはっきり聞こえた
「裏切リ者ハオ前カ!」
ボトッ。
僕の記憶はここまでだ
そこからどうなったのか覚えていない
法螺貝、首を抱えた人影、裏切り者…。
関ヶ原…?
あぁ、あの霊は石田三成だったんだな
噂と全然違ったじゃないか
さてと、家に帰ろう
あれ?いつもより1mほど視点が低い
身体も動かない
あ、僕死んだんだった
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補足
関ヶ原の戦いは、現在の岐阜県で起こりました。
その時に味方の裏切りによって徳川軍に敗北した石田三成が怨霊となり、関ヶ原に建設された駅のプラットホームに現れるという設定です。
人の頭をサッカーボールに例えたのは、サッカーの起源が、罪人の首を町で住民が蹴り合っていたものだという説を元にしております。
手に抱えさせていたのは、昔、斬首の際、首が地面に落ちないように腕を前に組ませて、組んだ手の中に首が落ちるように切ったという話を元にしております。
「僕」を屈ませたのは、膝に手を付きいて前かがみになることで元ネタによせるためです。
首の落ちるシーンを効果音のみにしたのは、最後の言葉により深みを持たせる狙いがあります。これにより、「意味がわかると怖い話」を最小限の文字数で表現できたと思います。
御覧くださりありがとうございました。
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また、こちらの方もよろしくお願いします。
『異世界召喚勇者(魔王)〜同族倒せと言われても・・・まぁやるんですが〜』
残酷な表現が出る予定です。苦手な方は御遠慮ください。
『私と不死のアサシン〜女子高生のちょっと変わった夏休み〜』
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