前世の知識を使って…。反省。
配膳係を任されて思うことは色々ある。
食事を運ぶ。
部屋に入って、ベッドの横にあるテーブルに置くだけ。
起きて食べれる人は、頑張って起きて食べてくれる。
食べれない人は、付き添いの人が食べさせてあげる。
私は、直接、療養している人には関わらないから本当に運ぶだけ。
だけど、結構大変。
砦では急な階段ばかり。
エレベーターなんてもちろん無い。
前世では便利なものばかりだったなぁ。
って思う。
お膳を持って、階段を昇ったり降りたりする。
それだけで大変。
品数は当然少ないんだけど。
零れないように運ぶのにも気を使う。
温かい者は冷めないように。
冷たい者は温くならないように。
そのまま保管できる機械があった前世とは全然違う。
あれは、なんて名前だったかな?
単語が出てこないことに、ふと気づく。
最近、記憶がところどころ曖昧になってきている。
その分、こちらのことが良くわかるようになってはきているけど。
私も変わってきているんだと思う。
ちょっと怖いけど、ここで生活するのなら、ここに馴染んだ方が良いんだとは思う。
それに、前世の記憶があった方が便利かもしれないけど、悪いことばかりでは無いと思う。
役に立つ記憶もあるけども、こちらの世界では使えないことも多い。
だって、私がその機械を再現できる訳でもないし。
この世界では、そこまで求められていない。
生活のレベルが違うのだから。
だからといって完全に諦める訳じゃないけど。
ちょっとした工夫をするだけで、感謝されることだってあるもの。
クラッカーとスープみたいな食事をちょっとくたくたになるまで煮てみたり。
人に合わせて味の濃さを変えてみたり、飲み込みやすいようにドロッととろみをつけてみたり。
大きなお皿一つで出すんじゃなくって、小皿にいくつか分けて出してみたり。
提案してみて、マーサが何かを言ってくれているんだろうけど、受け入れてもらえて。
ううん。
たぶん、もの凄く同情されるような言い方してるんだと思う。
言うと、
「なんでそんな事いうんだ?無駄じゃないか?」
みたいな反応されてから、横の誰かが小突いて小突き合って。
「・・・まぁ、好きにしな。」
って感じに言われて、やってくれる事が多い。
厨房で協力してもらえるって分かったから、他の人にもお願いしてみた。
例えば、ただベッド横の机に置くだけじゃなくって、ベッドを跨ぐようにして置ける小さなテーブルが欲しいって。
地面に木で描いて見せたけども、材料的に難しいって言われたから、小さな机でも良いからって描いて見せたらそれは作って貰えた。
テーブルが小さいからひっくり返しちゃわないか心配だけど、使える人もいた。
背もたれも工夫したら、自分で食べれる人が数人いて、食べさせる係の人に感謝された。
そりゃ、何人も食べさせないといけないと大変だものね。
冷めきる前に食べられるようになったお陰か、残す量も減ってきたみたい。
食事ってやっぱり食べられると回復が変わるのよね。
少しずつ元気になってきた人もいるって聞いて、なんか、呼ばれて感謝されることも、チラホラ増えてきた。
そういう反応があると嬉しい。
でも、逆に、寝たまま食べて咽せちゃう人もいたりして問題も起きたりした。
自分で食べれるから大丈夫でしょって放置されてたみたい。
それで調子が悪くなっちゃった人も現れて。
思いもしない結果に、びっくりした。
そういうのって難しい。
この世界って、大丈夫そうって思ったら、人手が足らないから任せっきりになってしまうみたい。
そこまできにしないといけないんだなって思う。これは私の考えが甘かったんだろうなって。
世界が変わると、常識も変わる。
私の前世の常識で、良いでしょって提案しても、その後の事まで確認しないと事故が起きてしまう事もある。
今回はそこまで酷いことにならなかったけど。
なかなか、上手くいかない。
やっぱり私には前世知識で無双なんて無理だなって思って反省した。




