転々
本当にちょっとで申し訳ないのですが、案外読んでくださっている方が多いようで、まとめて更新しようとして停滞する方が申し訳ないのかなと思いまして、
かけた分から更新していく事にします。
少なすぎると思われる方もいらっしゃるかもしれませんのでまとまってから読まれた方が良いかもしれません。
しばらくしたら今度は厨房の下働きに回された。
任されたのは、皿洗いやら野菜の皮むき。
つまりは雑用。
洗濯と違って気が楽だと思ったけど、すぐに後悔した。
前世で皿洗いはしたことあるけど、道具が違う。
料理もしたことはるけど、同じく設備が違う。
戸惑うことばかり。
それに、作る量が違う。
剥いても剥いても溢れている野菜。
イザベラの手は、とうとうあかぎれだらけになった。
厨房に来る前にも充分痛んでたから、仕方ないとも思うけど、
さすがに痛くて辛い。
イザベラ自身も嘆きに嘆いている。
私もちょっとイザベラの気持ちに同調してしまう。
マーサがそれに気づいて、塗り薬をくれた。
イザベラが、『そんな貧相なものを!』なんていって怒っていたけど。
私にとっては有り難いこと。
イザベラに『塗らないで』なんて怒られながらも、塗ると、少し良くなった気がする。
厨房の人がマーサに言ってくれたらしい。
皆、私に話しかけてはくれないけども、密かに気遣ってくれたみたい。
何だか胸があったかくなる。
それからというもの、厨房の人とお話することが増えた・・・なんてことはなかった。
私も話しかけることなく、黙々とこなしていた。
慣れてきたかな。
なんて思っていたある日、マーサがやってきて、
「手伝うよ。」
って言って、一緒に皮むきをし始めた。
マーサは、あちこち人手の足らない所を手伝っているから、それ自体は不思議じゃない。
だけど、今、厨房は私がいる。
それに、最近慣れて、自分で言うのもおかしいけど、色々手早くこなせるようになった。
だから人手が無い訳じゃないのだけど。
もしかして、私の働きが不満だったのかしら?
不安になっていると、突然マーサが口を開いた。
「慣れているんだね。」
「あ・・はい。えぇ。」
「お貴族様ってそんな事もできるのかい?」
「さぁ、どうでしょう?」
私は言葉を濁した。
心の中のイザベラは
「出来る訳ないでしょ!
手が荒れるような事はしないのよ。
そんな事もわからないの?
この下民は。」
みたいに怒り狂っている。
相変わらず私の中のイザベラは元気だ。
変わらない。
キャンキャンと罵倒でもイザベラの言葉は私にヒントをくれる。
この世界の常識を。
イザベラの、高位貴族の常識だけど。
それでも、話し相手のいない、今の私には嬉しい。
「ちょっと、聞いているのかい?」
「えっ?あっ・・すみません。」
うっかりして心の中のイザベラの言葉に集中してしまった。
「何をお話でした?」
私の言葉に、マーサはハァと小さく溜息をつくと、
「あんたは、本当にイザベラ・ヴァーテプラなのかい?」
と、聞いてきた。




