テンプレ出だしが辛いのは当人と読者
「どうして、仲良くできないんですか?!」
言うなり
ドンッ。
と、突き飛ばされ私は床にうずくまった。
淑女としてあるまじき扱いだ。
「この私にそんな事をするなんて!
時と場所をわきまえなさい!本当に馬鹿な女ね。」
諸先輩方の卒業記念パーティ。
華やかな会場の、テラスに誘導されたあげく、こんな暴力に晒されて頭は煮え立った。
どうしてくれよう。
もっと、はっきり平民女に思い知らせてやらなくては。
新しい非難の言葉を口から出そうとするも、先にそれは遮られてしまった。
「イザベラ・ヴァーテブラ。
わきまえるのは君の方だ。
今までシンリー嬢に行ってきた非道な行いに対し、シンリーは謝罪の機会を与えようとしたんだぞ。」
「シンリーの気持ちを台無しにするなんて。本当に最低な女だな。」
「少しはシンリーを見習え。」
ざざっと現れたキラッキラの王子様達が言っている。
全部どこかで見た顔。
どこかで聞いたようなイケメンボイスで。
実際は見た目が王子様なだけで、本当の王子様はイケメンの壁の後ろで、ストロベリーブロンドの髪を靡かせている女の子の腰を抱いて傍観してる人だ。
壁達は、系統が違う王子様。主人公の為の王子様だ。
しかし、本当の王子様はすごいな、自分の手は汚さないつもりだよ。
そう突っ込んで、あれ?と、思う。
私、私は、誰?
イザベラ?
違う。
私は、鈴宮紗菜だよ。
何で、こんな風にどこか見覚えがある外見王子様達に、囲まれ、どつかれ、床に這いつくばっているのだろう。
私はモブなのに。
ぴっかぴかの床に反射してぼんやり自分の姿が見える。
濃い紫のような髪。
きっとつり上がった目。
真っ赤に彩られた口。
モブじゃない。
主要キャラの顔だ。
しかも悪役顔。
思い出した。
うすらぼんやりしか記憶ないからタイトルも出てこないけど、乙女ゲームだ。
確か、スマホ版の。
おや、ここは乙女ゲームの世界?
ってことはあれ?
転生したら悪役令嬢だった!系だ。
気づいた瞬間思ったのは、
”何で私。”
次に思ったのは
”やばい、色々やりすぎてどの話かわからない。”だった。