シェレネとウィルフル
バレンタインだー!
早朝。
女官長ララに起こされ、シェレネは目を開けた。
ウィルフルは朝の会議をしに、執務室に行っている。
あと1時間半か、2時間ほどで帰ってくるだろう。
女官達に手伝ってもらい、普段着に着替えると、シェレネは厨房へ向かった。
忙しそうに朝食を作る料理人たちの奥の、使われていない小さなテーブルに着く。
シェレネは、少々危なっかしい手つきでチョコレートを刻んでいる。
人は切れるのに、包丁捌きは微妙な感じだ。
もっとも、人を切っている時は狂気に染っているのだが。
約1時間ほどで何とか調理を終わらせ、小さなハート型の箱を出し出来たてのバレンタインチョコを入れると、少し嬉しそうな顔をしながら部屋に帰ったのだった。
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「我が妃よ。今日はいつにも増して可愛らしいな」
「それ、毎日言ってます……」
相変わらずの溺愛ぶりに、シェレネはいつチョコを渡せばいいのかとタイミングを見失っていた。
「あ、あの、陛下!」
「ん?どうした?」
勇気をだして声をかけてみたのものの、シェレネの顔は真っ赤に染っていた。
おずおずと、シェレネはウィルフルに箱を渡す。
「えっと……これ僕に……?」
「はい……」
ウィルフルは満面の笑みをうかべると、
「可愛い」
と言ってシェレネを抱き寄せたのだった。