第9話 暴君①
また性懲りもせず来よったか。
ここ数ヶ月で何度目や?考えんのもアホらしなってきた。
ええ加減ほっといて欲しいねんけど。
とりあえず巣穴から顔を出す。山を登ってきた人間と目があった。
「居たぞ!仕留めろぉ!!」
うおおぉ!と数十人の人間が、武器を持ちウチに向かって突っ込んでくる。
うるさいわ。ウチは寝てたいねん。
動くのもめんどくさいので、雷生成と水生成で雷を帯電させた水を射出する。
水は人間達にかかり、感電した人間の悲鳴と、焦げた匂いが周囲に充満する。
最近、人間の中でスカイサーペントの白い蛇皮が人気らしく、スカイサーペントの乱獲が各地で起こっていた。
ほんま、めんどくさいわ。
ウチに勝てへんのわかってるやろうに、かかってくんなや。
毎回、毎回相手せなあかん、こっちの身にもなってほしい。
いい加減、鬱陶しくなってきたなぁ。
なんかええ方法あらへんやろか。
とりあえず引っ越そか。
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「いたぞぉ!スカイサーペントだ!」
・・・引っ越し先でも襲われるんかいな。
とりあえず雷入り水をぶっかけとく。結果は今までと同じ。
しかし引っ越して数日で襲われるとは・・・、人間の強欲さには呆れるわ。
これやと何処いってもあかんなぁ。
・・・・・
しゃーない・・・殲滅しよか。
ウチにちょっかい出したん後悔させてやるわ。
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「出たぞぉ!【暴君】だぁあ!!」
殲滅始めて数十年たった。
ウチは【暴君】と呼ばれるようになってもうた。
なんでや、こんなにかわいいのに!
・・自分でゆうのもなんやけどな。
あと、スカイサーペントの上位種に進化しました。
しかし人間は一向に減らへん。
街を見かけ次第、吹き飛ばしてんねんけど、一向に減らへん。
しかも向かってる数増えたし。
なんでなん?
見かけ次第ではあかんのかな?
これからは街を探して殲滅しよか
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「逃げろ! 【暴君】がこっちにくるぞぉ」
殲滅始めて数百年たった。
ウチの姿を確認するだけで人間は逃げるようになった。
なんでや、こんなにかわいいのに!
・・・・・自分でゆうのもなんやけどな。
あと、進化もしました。もうウチと同じ種族は見当たらへん。
オンリーワンやで。すごいんちゃう?
ふふん、ウチに勝てる奴はもうおらへんで。
・・おっと話がそれてもうた。
人間や、やつらはまだいなくならへん。
いや、いるのはわかんねんけど見当たらへんねん。
絶対隠れてるんやって、そうとしか思えんしな。かといって探し出すんもめんどくさいし放置するけどな。
そういえば、何でウチは人間殲滅してるんやったっけ?
なんか、めんどくさくなってきたなぁ。
そういえばこの前、住み易そうな所あったな。
確か・・・大きい森の中で、そうそう近くに滝があったな。
そこでのんびりしよか。
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ここや、ここ。
静かやし、たいした魔物もおらへん。
ここならのんびりできそうや。
「そうですか? では、ここでよろしいですね?」
へ?
な、なんやぁこの光はぁ!!
・・・・・
はぁはぁ、やっと光がおさまったで。何やったんや今の。
「あなたの力を封印させて頂きました。ああ、お気になさらずとも、この森で生きていく上では問題ないはずですので」
は?
だ、誰やあんた。
「私ですか?名乗るほどの者ではありません。それよりもご自身のことを考えたほうがよろしいかと」
ん?
ウチのこと?
そういや、妙に視界が低いなぁ・・・ってなんやこれぇ!!
水面で確認したけど、ウチの体はかなりミニマムになっとった。
可愛いのはええんやけど・・・ってそうやない!
ちょっと!ウチの体、はよ戻してーや!
「それは出来ません。それは、今施した封印を解くということになりますので」
そういえばさっきも封印って言っとったけど、体縮めんのが封印なんか?
「ああ、失礼しました。封印したのは、貴方の能力です。体が縮んだのは副作用みたいなものですね」
能力?・・・特異性のことかいな?
「ええ、そうです。先ほども言いましたが、生きていく分には支障がないように調整しましたので、安心してください」
確認するさかい、ちょっと待ってや
・・・・・・ふぁ!?
ちょい待ち!殆ど無いやん!!ぼったくりにも限度あるんやで!
「そうですか?私は言われた通りにしただけですので苦情は上に言っていただけますか?」
名乗らへんのに上も下もあるかぁ!あんた誰やねん!
「そういえばそうでしたね。上司の名前はジュピターと言います。ああ、先程も言いましたが私は名乗るほどではありませんので」
・・・・名乗れや
「さて、ではそろそろお暇させて頂くのですが、最後にお伝えしておくことがあります」
スルーすんなや
・・・で、なんや?
「あなたの能力は、世界の各地に封印しました。もし、力を取り戻したいのであれば、各地の封印を解く必要があります」
世界回れって?むちゃ言うなや。
「そう言うと思いましたので、封印の一つをそこの洞窟にしておきました。これはサービスですよ」
サービスて・・・なら封印解いてくれや。
しかしそこの洞窟やったらすぐ行けるな。
「上司には内緒でお願いしますね。では私はこれで」
消えた・・・なんやったんや
しゃーない、されたもんは仕方ない。
さっさと封印解いてのんびりすんで。
そこの洞窟やったな。すぐ行くでぇ。
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洞窟上空にて
「封印完了ですね。しかしあそこまで素直だとは・・・、もう少し疑ってもいいのでは?」
封印が洞窟にあるなんて嘘である。いや正確には予定だった。
嬉々として入って行った蛇を洞窟ごと封印したのだ。
彼女が受けた命令は、世界中に災害をもたらす元凶を封印することである。能力を封印したのは、蛇が万が一復活した際に、暴れられないようにするためであり、封印過程の一つでしかなかった。
「終わりましたか?」
「はい、問題なく。能力は均等に、各地へ分散しました」
突如、背後に現れた上司に報告をする。
「そうですか。では帰還し次の指示があるまで待機しておいてください」
「わかりました」
必要なことだけを確認し、指示を出すと上司は消える。
正直に話しますと、私はあの上司が嫌いです。
つまらないですから。
それに比べ、あの蛇はとても面白そうでした。
ふふふ、封印が解けた時が楽しみです。
封印が解けた時、その時にはあの上司もいないでしょう。
さあ、楽しくなって来ましたよ。
ふふふのせいで長くなりました。次回も続きます。