第6話 光生成
もう一つあった自分の特異性:光生成の確認だが、まぁその名前の通りだろう。
光を生み出すことができるんだと思うが、何事も試さないとな。セリも言ってたし。
「光生成」
念じるつもりだったのだが、声に出てしまった。
念じてないからか何も起こらない。
今度は旅の宿を使った時のように意識して念じてみた。
そしたら掌がフラッシュした。
「目がぁ!目がァア」
直に閃光を見てしまい、目を抑えて転げ回る。あの大佐の気分が少し味わえた、最悪だね。
幸い失明しなくて済んだが、数分間周りが見えなくてすごく焦った。
「危なかった、明日セリに聞いてから使おう」
視界も安定し、精神的に落ち着いたのでそろそろ寝ることにする。
「光生成はアレだし、旅の宿はよくわかんないし、自分の能力変なのばっかだなぁ」
さっきのバ○スは完全に自分の所為なので何も言えないが、旅の宿については本当に分からないことが多い。せめて取説でもあればいいんだが、そんな都合のいいものがあるわけ無いし。
ピコン!
ん?
なんか鳴ったぞ。
音のした方を振り向くと自分のリュックが目に入った。音源はどうやらリュックの中からのようだ。
「スマホかな?」
リュックの外ポケットにしまっていたスマホを取り出し起動する。普段から連絡以外には使わないので、存在を忘れていた。そもそもこの世界に電波の届くとこなんて無いし。
「あれ?」
起動したスマホの画面にはアイコンが一つしかなかった。おかしい、殆ど使用はしていないが、画面が埋まるほどのアイコン(最初から入っているやつ)があったはずだ。とりあえず一つだけある設定のアイコンをタップした。
しかし、設定画面が開かず、表示されたのは取扱説明書の文字、そしてその下にプルダウンと表示のボタンンがあった。
・・・・・
無言でプルダウンを開く。そこには特異性の名前が2つ書かれていた。両方とも自分が持っている特異性である。
取説、そして自分の特異性。ここまでくれば自分でも分かる。とりあえず光生成を選択してボタンを押す。予想通り、光生成についての説明が表示された。
正直すごく有難い、だが同時に疑問が生じる。
スマホにこのアプリが入ったのはいつかわからないが、取説が欲しいと思ったのはさっきだ。そしてタイミングよくなる通知音、偶然ではないはず。となると、誰かがこちらを見ているということになる。
周りを見渡してみた。しかし誰もいない。
広すぎるリビングが、少し恐怖を与えてくる。
「考えても仕方ない。今日はもう寝よう」
そもそも、こちらの考えが読める相手なのだ。何かしたところで何とか出来るとは思えない。
とりあえず明日セリに報告だけしておこう。
そう結論付け、早足でリビングを出た。
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とある場所では
「どうかされたのですか?」
「いいえ」
「そうですか?なにやら楽しそうに見えますが?」
「別に。そのようなことはありません」
「?、そうですか」
ふふふ、そうですよ。貴方には関係ありません。
彼らは私だけの秘密です。
しかし、先ほどの驚きっぷりは良かったですね。サプライズ成功です。
ですがもう少し喜んでくれてもいいと思うのですよ。
・・・・・
サプライズがいけなかったですね。
次は注意しましょう。
ああ、しかしそれでは彼の困った顔が見れません。
何かいい方法はないでしょうか・・・
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朝になりました、 時間は11時を過ぎたところです。
・・・・・
ベットの寝心地がよく寝坊してしまった。あと、あの後なかなか寝付けなかったのもいけなかった。ちなみにセリはまだ起きてきていなかった。
今から朝食もあれなので、昼食まで取説でも見る事にする。誰が用意したのか知らないが、ありがたく使わせてもらおう。
まずは光生成から見てみる。発動の仕方は昨日と同じでいいらしいが、生成系統の特異性は同時に、どこに、どのように発生させるかをイメージすることが必要らしい。昨日はイメージが曖昧だったため、掌が光るだけになったようだ。
取説を読み終えたので、もう一度試してみる。今回は指先が淡く光るようにイメージし発動させた。すると指先が蛍ように淡く光る。今度は手のひらに光の玉を出現させ、そのまま持続させる。光の玉はそのまま滞空し続けた。動けと念じれば思ったように動かせる。そして光度を上げたり下げたりしてみる。全て取説に書いてある通りだった。
「やり方がわかると使いやすいな」
調子に乗って、複数出して遊んでいるとセリが起きてきた。
『もう起きとったのか、ススムは起きんのが早いなぁ』
「いやもうお昼ですけど!?」
自分も起きたのが一時間ほど前なので、遅いと言うのはやめておいた。
一直線にソファに向かうセリ。最早定位置だな。
ソファに乗ったセリは、進の周りに浮いている光の玉を見て驚き
『もうそこまで扱えるようになったん!?ススム、天才ちゃう?』
「だといいけどな。 取説のおかげなんだ」
『トリセツ?』
「取扱説明書。要は、特異性の使い方が描かれてるんだ」
『はぁ?そんなもんあるわけないやん!』
「でもこれ・・・」
そう言ってスマホの画面を見せる。スマホに興味津々なセリだったが、取説の内容を見ると呆然とした。
『・・・そないなもんどうやって手に入れたんや?』
昨日起こったことを話す。セリは半信半疑だったが、現実に取説はあるので信じるしかない。取説の存在自体には納得していないようだが。
『そないな便利なもんあるんやったらうちも欲しいわ・・・』
そう言われても、取説くれたのだれか分からないし、どうしようもない。
とりあえずセリを宥める。
『まぁええわ。それがあればこの家のことも分かんのやろ』
「ああ、まだ見てないけど」
すぐ見てもいいのだが、セリも起きてきたので先に昼食を取ることにする。
自分は昼食を作るために台所へ向かった。