第52話 ドワーフの女の子
「見晴らしいいって最高だよな」
とうとう森を抜けた俺たちは今、草原を歩いて街に向かっている。
今まで見通し悪い森ばっかり歩いてたから、こう見通しが良いとテンションも高くなる。
『それはええけど・・・。街も近くなっとるし、人間もちらほら居るんちゃうか?』
俺と違い、テンションが高くないセリ。
起きたばかりなのでまだ本調子じゃないのだろう。
今日はセリと2人だけで旅をしている。ナギも後で合流する予定だけど、人間と遭遇することを考えると来ない方がいいかも知れない。
人間が今も亜人を虐げてる場合、彼女らを合わすのは危険だろう。まずは人間の現状を知らないと。
そんなこんな考えつつ、ひたすら草原をを歩く。草の高さは脛くらいなので歩きにくいこともなくすいすい進む。
魔物も居ないし・・・
セリが言うには“気配察知”に一切引っかからないから、本当に居ないか、もしくは居ても小さくて危険はない。
「うーむ・・・なんかこう・・・もっと速く移動できないものか・・・」
せっかく安全なのでもっと速く移動したい。カイマンに乗っていたときはそれなりのスピードで移動していたので、楽を覚えてしまった。
自動車にの楽さを知ったら、近場でも自動車を使ってしまうあの感覚である。
最も、そのせいで森を抜けた時の達成感も激減したけどね。セリの力が封印されてた場所からずっとカイマンに乗ってたので、あの森もあっさり抜けてしまった。
最初何日もかけて歩いてたのが懐かしい。
『ススム・・・誰か来るで・・』
感慨にふけってるとセリが伝えてきた。
周囲を見渡すと、遠くに何か見える。あれか・・・よく気付いたな。
遠いのでよくわからないが、1人なのは確認できた。
『どないする?』
「特には何もしない、怪しまれる。けど、もしもの時は頼む」
「了解や!」
出来る限り怪しまれないようにだけしておこう。すでにツチノコを背負ってるおかしな人に見えてるだろうけど。
街に近付くにつれ、相手の姿が分かってきた。相手はどうやら街から離れてどこかに行くようだ。ずっとこっちに向かって歩いて来ている。
そして目が合った。
「こんな朝早くに森側から来るとは・・・。いつから出かけてたんだ?」
女の子だった。
一狩り行くのか、身長近くあるハンマーを背負ってる。
背の高さはフウより高いけど140cmも無いかな。
言葉は分かるのでそのまま喋っても伝わりそうだ。
「俺はあの街の住民では無いぞ。森を抜けてここに来たんだ」
「なんだと!?。あの森を抜けたのか!?」
あからさまに驚かれた。
「そんなに驚くことか?」
「当たり前だろ。どう抜けたか知らないが、あの蛇神の森を抜けれる奴なんぞ聞いた事ないぞ」
ええ~・・・
あの森ってそんなにデンジャーだったのか?。まぁ危険な目には合ったけど。
「で?、どこから抜けて来たんだ?そもそもどうやって抜けて来た?」
女に子は、さらに不信感を持ちながら聞いてくる。
しまった・・・。まさか森から来ただけで不審者扱いされるのは想定外だった。
どうやってと言われても、ワニに乗って来たとは言えないし・・・。
「普通に歩いてだけど?」
「歩いて!?。あんな魔物の巣窟を歩いて抜けて来たというのか!!」
女の子は衝撃を受けている。それにしてもあんまり女の子っぽく無い話し方だなぁ・・。
「魔物はこいつが倒してくれたからな。俺1人だと歩いて抜けるのは無理だぞ」
「・・な、なんだそういう事か。契約魔物が居たのか」
契約魔物?。何それ?
普通にペア組んでるだけですが・・・。
『多分その事ちゃうか?』
『ああ、なるほど・・』
セリがペア念話で伝えてくる。久々なのでちょっとびっくりした。
「契約魔物が居るならそう言ってくれ。びっくりしたぞ」
「いや、ずっと見えてたと思うんだが?」
セリ、ずっと顔を出してるし。
女の子は少し背伸びをしてセリをもう一度覗いている。ああ、そうしないと見えないのね。
「蛇・・・だよな。白蛇なんてここじゃ見ないし変異種か何かか?」
「まぁそんなところだ」
女の子はセリに興味があるのか色々な角度から覗いている。流石にセリも鬱陶しそうだ。
「こいつに興味があるのか知らないが、何かしに行く途中ではないのか?」
「おっと、そうだった」
女の子は思い出した顔をする。
「あんたもあの森に行くのか?言っちゃなんだが、女の子が1人で入るような森では無いと思うのだが?」
あの森の危険性は女の子の話から少し分かったが、女の子が1人で行くのは危険なはずだ。
聞いた途端、女の子はプルプルしだした。
「私は子供じゃないわ!!」
おおぅ・・・。びっくりした、急に声をあげないでほしい。
子供じゃないって言っても見た目がーー
「私はドワーフよ!、見た目は関係ないわ!。これでも23歳なんだから!」
え?、そうなの?。ドワーフなんて初めて見たし分からなかった。
でも、そんな風に地団駄踏まれると、余計子供にしか見えない。あと、口調も女の子っぽくなってるし。
『子供っぽく見られたのうて、意図的に口調変えてるんちゃうか?』
「あ、なるほどね。でもそれだとますます子供ーー」
「ふん!」
思いっきり足を踏まれた。思ったより痛くないけど。
どうやら「子供」は禁止ワードみたいだな。今も頬を膨らまして怒ってるが、一つ一つの仕草が子供にしか見えない。
「ふん!もう知らない!」
ドワーフの女の子は俺の足をもう一回踏んで(痛くない)からさっさと森の方へ行ってしまった。ちょっと涙目だったので、少し罪悪感が残る。
「怒らせてしまったな・・・」
『気にせんでええんちゃう?。ウチら変な事言ってへんし』
「そうだけど、あの子の気にしてる事言っちゃったし、今度会ったら謝らないとな」
女の子の行った方を見ても、すでに女の子は見えなかった。もう森まで行ったのかな?
「うえぇぇえん!!」
・・・・・
泣き声が聞こえて来た。ちょっと戻ると、女の子が倒れて泣いている。
急いで行ったせいか、躓いてコケたらしい。
見えなかったのはそのせいだ。
『どないするん?』
「どないしたらええ?」
「とりあえず訳を聞かせて貰えますか?」
振り向くとナギが立っていた。
いつの間に来たの!?




