第40話 大きくなっても所詮はセリ
「ちょっと事情があるので介入させて頂きました」
セリの尻尾を受け止めた女性は、軽くあしらう様に受け止めた尻尾を横にどける。
女性は前に、家に来た不法侵入者さんだった。
寸前までいなかったので瞬間移動でもしてきたのだろうか。
『・・・アンタ。何のつもりや?』
セリは攻撃をやめ、突然現れた彼女を睨む。
「ギガント・ロック・アリゲーターを殺すのはやめてもらいに来ました」
どうやら彼女はギガント・ロック・アリゲーターを助けに来たようだ。仰向け状態のギガント・ロック・アリゲーターを片手でで起こしながら答えた。
『そんなん知らん。そいつはウチのどら焼きを潰したんや。ウ・チ・のどら焼きをなぁ!!!』
セリが絶叫する。
・・・・・自分のってとこ強調しすぎだぞ。まぁいいけどさ。
「ではどうしたらやめてもらえますか?」
『何されてもやめへん!!そいつを倒さんと、潰れていったどら焼きの無念は晴らせんからな』
「・・・いや、そんなもの無いからな」
『ススムは黙っときぃ!』
おっと、怒られてしまった。かなり頭にきてるようだな。
女性が何かを求めるようにこちらを見る。
その目が言っている。どうしたらいいのか?と。
セリのことだし、新しいどら焼きでもあげたら大人しくなると思う。
・・・だって、単純だし。
ただ今、手持ちが無い。
家に取りに帰る必要があるが、その間セリが待つとも思えないし。
「でしたら私がどら焼きを差し上げます。それで手を打って頂けませんか?」
『ふん! アンタの言うことは信用できん。どこにどら焼きがあんねん?』
「これでいいでしょうか?」
そう言った女性の手にはいつのまにかどら焼きがあった。
俺の目ではいつ用意したか分からなかった。
ただ量が少ない。あれはいつものおやつと同じ量だ。
コイツが怒ってる時はいつもの倍以上用意しないと納得しない。
「そうですか? では倍の量を差し上げましょう」
『ば、倍やと!? ふ、ふん。それでウチが揺らぐとでも』
すげぇ揺らいでるぞ。どら焼きを見ないように顔を背けてるようだが、目がどら焼きをガン見してるじゃねーか。
相変わらずお菓子の前では意志が弱いな。
体がどんだけでかくなって、強くなってもセリはセリのままだった。
お菓子には勝てないようだ。
「では10倍のサイズにしましょう」
女性はどら焼きを地面において少し離れると、置いたどら焼きが大きくなった。
元々のサイズが直径10cm程なので1m程のどら焼きがそこに現れる。
最早、座布団だな。
『なぁ!!?』
さすがにセリも驚いたようだ。もう顔も背けずどら焼きに釘付けになっている。
見るのはいいがヨダレはやめてくれ、近くにいる俺にかかりそうだ。
体がデカイ分、ヨダレも滝のようだ。
汚いな。
「これでどうですか?」
『くぅっ!・・・もう一声、あと10倍あれば・・・』
まだ欲しいのかよ!?
そんだけ食ったらまた太るんじゃないか?
「セリ。それで手を打っておけ」
またダイエットさせるのは面倒だからな。
「何でや!? ススムはこの雌の味方なんか?」
どっちの味方でもない。
俺は俺の味方だ。お前の体重管理がめんどくさいんだよ。
「とにかくそれ以上食いたいのなら、今日のおやつは無しだからな。明かにカロリーオーバーだし」
『そ、そんなん嫌やぁ!!』
実は更に10倍増やした方がセリにとって得なのだが、おやつを抜かれるのは嫌らしい。
セリは10倍サイズで手を打った。
「ありがとうございます。ではギガント・ロック・アリゲーターはこのまま見逃して下さいね」
お辞儀する女性。合わせてギガント・ロック・アリゲーターも顔を下げる。
「理由は聞かせてもらえるのか?」
俺も今回の戦闘では一応死にかけた。
流石に理由を聞かないと納得はできない。
もし理由を話さないのであれば・・・。
「勿論説明させていただきます。・・ここでは何ですので進さんの家で、ですが」
つまり、後で話すと言うことか。
ここで話して貰いたかったが、話してはくれるようなのでギガント・ロック・アリゲーターを倒すのはやめておこう。
「ありがとうございます。では先に今後についてですが・・・」
今後? 大きくなったセリの対処法かな?
「違います。セリは特異性で一時的に元の姿に戻ってるに過ぎません。本人の意思でいつでも戻れるはずです」
あっ、そうなんだ。
「今後とは、このギガント・ロック・アリゲーターについてです。彼には今後進さんの使い魔として活動して貰います」
「いえ結構です」
何言ってんのこの人。使い魔ってよく分からないけど、あれだろ? 魔女の黒猫とか、魔法使いのフクロウとか、サポートするための動物のことだろ。
サイズが大型トレーラー並の使い魔なんて居てもどうしていいか分からんぞ。
「使い魔の認識はだいたい合ってますが、拒否は出来ません。既に契約は済ませておきましたので」
「へ?」
「がぁ?」
俺だけでなくギガント・ロック・アリゲーターも女性を見る。向こうにとっても予想外だったらしい。
「そう言うことですので、彼をお願いしますね。あとで構いませんが名前も決めてあげて下さいね」
「いや、待って? 強引すぎるだろ」
「あと、使い魔は、主人や使い魔の意思で体のサイズを変更できます。なので大きさは大丈夫ですよ」
「だから、話を聞いてくれ。なぁセリからも何か言ってくれ」
この人全然話きかねぇ。
この前会った時もそうだったけど、好き勝手しすぎだろ。
「ふふふ、好き勝手出来るのが私の特権ですので」
・・・・・
なんかどうでもよくなってきた。
この人には何言ってもダメな気がする。
「なぁセリ、この人どうしたら・・・セリ?」
そういやさっきからセリが反応しない。
『この大きさ、甘さ、食感。最高やぁぁ・・・』
・・・・・
どら焼き食ってやがる。
通りで反応ないわけだ、しかもいつの間にか元の姿に戻ってるし。
すでにおやつの世界に旅立ってしまっている。
これは当分帰ってこないな。
「はぁ・・・とりあえず家に帰ろうか」
なんかどっと疲れた。
彼女から今回の理由も説明してほしいし帰ろう。
時間を見たらお昼を回ってた。
「ではお邪魔しますね」
先に女性が入ってく。ナギたちに説明をお願いしとく。
俺はセリを門に放り込まなくてはならない。ここに放っておくわけにもいかないからな。
座布団どら焼きにかぶりついた状態のセリを門にの中に投げ込む。門の向こうで転がったが食べるのに夢中のようだ。
「がぁぁ・・」
「ああ、すまん。悪いがあの門を潜れるまで小さくなってくれるか。流石にそのサイズだと通れないぞ」
サイズ変更は出来るって言ってたし、アンダルシアぐらいになって貰えばいいかな。
「がぁ!」
ギガント・ロック・アリゲーターは返事?をするとみるみる小さくなる。スモー◯ライトでも当てたみたいだな。
「お、それくらいで大丈夫だ」
「がぁ!」
潜れるほど小さくなったギガント・ロック・アリゲーターはセリの座布団どら焼きを背中に乗せ門を潜る。
向こうで置いてまた出てきた。どうやら運ぶのを手伝ってくれるらしい。
「ありがとな。これで最後だし、そっちの頼む」
「がぁ!」
なんか可愛い。
最後の座布団どら焼きを運び込み門を閉めた。
「ちょっと! なんで貴方がいるんですか!?」
門を潜ったと同時に家のからナギの声が聞こえて来る。
あの人、ちゃんと説明してないな。聞こえて来るナギの声から分かる。
あの人に任せたのが間違いだった。
「はぁ・・・説明しに行くか。すまないがここでセリを見といてくれるか?」
「がぁぁ」
ギガント・ロック・アリゲーターがコクっと頷いたので任せる。
ナギたちはリビングにいるな。
「ハ、ハックション!!」
家に入ろうとした時、ブルっと寒気がした。
あ、そういえば池の水被ってそのままだった。
とりあえず先に着替えよう。
次回ちょっと更新遅れるかもしれません。




