第3話 ペアを組んでみた
『一緒に行くんなら、ペア組んどかなな』
「ペア?」
テンションが落ち着いてきたツチノコが唐突にそう言いだした。
『ペアってのは波長の合う2人でチームを組むようなもんや。・・まぁ相棒やな、言い方は場所によって違うらしいけどな』
俺は、ツチノコの念話が聞こえるので、波長は合っているらしい。
ツチノコはペアについて知っていることを教えてくれた。
簡単にまとめると、漫画とかに出てくる契約のようなものらしい。魂レベルで互いを結び、互いの能力を共有するそうだ。
それにペアになることで互いの位置が分かったりと、色々恩恵があるらしく。波長が合うのであれば結んでおくといいらしい。
とはいえ、複数の相手と結ぶ場合はリスクなどもあるので、安易にするものではないらしいけど・・・。
『どや?、一緒に行くんや、ウチとしてはペアになっといたほうがええと思うんやけど』
「いいんじゃないか?。俺はどっちでもいいぞ」
正直よく分からないからな。
ここはこのツチノコの案に乗っておこう。
『よっしゃ!、じゃあペアリング済んで!、ちょっと待ちや』
ツチノコがむむむむむっ!と唸る。ペアリングがどうとか言ってたけど何してるんだろう。
なんか時間がかかりそうな気がするし、その間にご飯でも食べとこうか。
さっきからお腹が鳴ってるんだよな。
『ちょい待ちぃ!、何食べようとしてんねやぁー!』
「あ、ダメだったか?」
温めたスープを注いで飲もうとすると、ツチノコが大声を上げた。確かにペアの準備をしている横で食べるのは良くないな。
『ウチにも寄越さんかい!。さっきから旨そうな匂いがして、集中できんやろがぁ!』
・・・・・
ただ食べたかっただけらしいな。
時間がかかっていたのもこのスープの匂いのせいで集中出来てなかっただけみたいだ。
「・・・先に食べるか?」
『そやな!。腹減ってたら調子が出んしな!』
予備のカップを出して入れてやると、嬉々として寄ってきた。
『熱っ!、美味ぁ!、なんやこれはぁ!?』
「もうちょっとゆっくり食べたらどうなんだ?」
慌てて食べて、舌を火傷でもしたのかチロチロと出したり引っ込めたりしている。
騒がしい奴だが、1人で食うよりはいいな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
スープは美味かった、インスタントだけどツチノコも満足そうにしている。
ただし量が少ないので腹は満たされていない。
ツチノコにも文句を言われたが、こればっかりは仕方がない。
元々友人と二人で軽く一服するくらいの量しか持ってきてないからな。
『これは美味いなぁ。アンタはいつもこんな美味しいもん食べてるん?』
「まぁ・・な」
いつもインスタントばっかりだけどな。
料理はめんどくさい。
『インスタント?』
「簡単にできる簡易料理みたいなもんかな。さっきのはお湯に粉末を溶かすだけでできる」
『マジかいな!、人間やるやん。鬱陶しいだけやと思ってたわ!』
鬱陶しいって何かあったのか?。
魔物だから襲われたりしたりとか?、かな。
まぁ、聞かないけどね。
『アンタと一緒にいたら、ずっとこんな美味しいもんが毎日食べれるんか?』
「いや、もうないぞ」
『なんやて!?』
ガーン!!・・・
相当ショックを受けたのか、落胆し項垂れている。
「すまないな、先に言っとけばよかった」
『いや・・・、勘違いしたウチが悪かったんや。気にせんといて』
そんなショックを隠しきれん感じで言われてもなぁ・・。
何か代わりになるものがないかとリュックを探っていると、ツチノコはゆっくりと顔を上げた。
『ま、まあええ・・、とりあえずペアリング再開や』
「そういえば途中だったな」
食べてる間に忘れてたわ。
ツチノコは早速ペアリングの続きを始める。
むむむむむぅ〜、ツチノコは何か唸っている。と同時に、俺の右腕が熱く感じた。
ハイキングウェアの袖をまくると腕を一周するように印が浮かんでいる。
え?、何これ?。
『ふぃ〜・・、終わったで!。どや?、ペアの印は浮かんでるか』
「これか?」
さっき出た印を見せる。ツチノコはそれを見て満足そうに頷く。
『初めてやったけど上手くいったな。流石ウチや!』
「これは?」
『ペアの証や!、その印でウチとアンタを繋ぐんや。その印を通じて相手のことも分かるんやで!、・・・・ふむふむ、アンタはススムって言うんやな?』
なん・・だと、
って言うほどでもないか・・。
確かに俺は今尾 進だが・・・、
「どうやって分かったんだ?」
『これや!、ペア相手の情報を見ただけやで』
?、情報?。
そう思ってると頭に何かが流れ込んでくる。
名前 :イマオ ススム
種族 :人間
特異性:旅の宿 光生成
・・・何ですかこれ?
『どや、見れたか?』
「見れたけど・・・、何だこれ?。名前、種族は分かるが特異性って何だ?」
『特異性は、そのまんまの意味やで?』
いや・・・、そのそのまんまが分からないんだけど。
『その者が持ってる特殊能力みたいなもんや、人間は持ってる人と持ってへん人がおるんやけど、ススムは2つもあるし結構レアやったんやな』
「そんな希少認定されても困るんだが、どうしたら使えるんだ?」
『えっとなぁ・・・、使いたい!、って思えば使えるで』
そんな適当な・・・。
仕方ない、とりあえずやってみるか。
“旅の宿”ってのがあるけど、名前的にお金払ってセーブでもするのか?。
いや、セーブするのは教会だっけ。
よーし・・・
「旅の宿を使いたい!、使いたいぞ!!」
・・・言われた通りにしてみたが、・・・・恥ずかしいな。
『別に言わんでもええんやで?』
「まぁ、そうだけど・・・」
すると急に洞窟内が暗くなった。
原因は洞窟の入口が何かで塞がれたため、外の光が入ってこなくなったためだ。
そこには・・・、
『「門だな(やな)」』
大きな門だった。和風の家にあるような屋根付きの門が、洞窟の入口を塞いでいる。
なかなか立派な門だ。
門扉は木で出来ていて重厚さがあり、屋根には瓦が付いている。
昔住んでみたいと思って見ていた近所の家にあった門とよく似ていた。
『なぁ、開けてみいひん?』
「そだな」
ツチノコに促され観音開きの門を開ける。
おっ!、思ってたより軽いぞ。
開けた門の隙間から光が漏れる。どうやら門の先は洞窟の外では無いようだ。
ギギギ、っと門を押して全開にした。そこには
「家・・・だよな?」
開けた先、門の向こう側には家が建っていた。