表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/204

第23話 ウインドドラゴン

石の上のドラゴンが咆哮を上げる。あまりの煩さに思わず耳を塞いだ。


「な・・・あれってドラゴン? この世界にはそんなんもんまでいるのか?」

『アレはウインドドラゴンや!ススム!ここは危険やし、ナギ達と後ろ下がっとき!!』


セリから指示が飛ぶ。

下がれと言われれば下がるが、お前は大丈夫なのか?

見るからに強そうなんだが。


『確かにドラゴン種は意志もあり大抵強い。でもアイツはチャロアイトに操られる程度の意思や。やとすると生まれて間もないか、そんなに成長してへんと思う。能力を見た限りウチでもなんとか出来るかも知れん』



種族 :ウインドドラゴン


特異性 :分身 身体強化 風生成 飛翔 龍鱗 炎吹砲



そう言ってセリはウインドドラゴンの情報を送ってくれる。

持ってる特異性で厄介そうなのが“分身”だろうか。“龍燐”と“炎吹砲”がイマイチよく分からないが。


『“龍燐”は体を覆う鱗の事で、それのせいでドラゴン種は攻撃が通りにくいんや。“炎吹砲”は単純に火ぃ吹いてくるだけやし問題ない』


セリが教えてくれた。

なるほど、“龍燐”が鎧のような効果で“炎吹砲”は炎ブレスという事か。

この“飛翔”含めてこの辺りは種族固有みたいだし、セリも問題ないと言っている以上大丈夫だろう。


ただドラゴンの身体能力はどれくらいなのだろうか? セリが強いと言うからにはその辺の魔物と比べるまでもないのだろうが、正直言ってセリより強そうに見えるんだが。

大きさもセリの数倍デカイ。


「おい、セリ! 勝てるのか!? 勝てそうにないなら一旦逃げるぞ?」

『勝てる!ただ、アンタら守ってやとキツイし、二人の守りは頼むで!』


そう言ってセリはウインドドラゴンに向けて進み出した。

俺はナギ達に駆け寄る。二人が居た位置からはウインドドラゴンが見えないが、咆哮は聞こえていたらしい。


「あの!今のって・・・危険な魔物でも居たんですか?」

「ウインドドラゴンがいる。門を出すから二人とも一旦家に避難してくれ、ここは危険だ」

「ドラゴン!? 待ってください、私達だけーー」

「すまない!話は後で聞く」


そう言って門を出し、二人を門の中に押し込む。

ナギが何か言おうとしていたが聞いている時間は無い。

二人が入ったのを確認し門を閉めて消す。これで二人に危険は無いだろう。


そして俺は急いでセリの元へ戻った。

セリとウインドドラゴンは直接攻撃を避け、互いに鎌風で攻撃し合っている。

威力自体はどうやら互角のようだが、生成速度はセリが速い。ウインドドラゴンが一つ撃ち、次を打つまでにセリは二発撃っている。

セリは一撃目で鎌風を相殺し、二撃目でウインドドラゴンを攻撃している。

ウインドドラゴンは二撃目を避けるために“飛翔”で空を飛んでいる。


“風生成”ではセリが有利なようだが、ウインドドラゴンにダメージは入っていない。

こりゃ長期戦になるか?


『ちょこまかと鬱陶しいなぁ!』


あ、セリが切れた。こう避け続けれれるとイライラするよな。

分かるぞ。

セリは鎌風を回避した所に“雷生成”で雷を落とす。その予測はしていなかったため、雷はウインドドラゴンに直撃した。悲鳴のような声をあげウインドドラゴンが地面に落ち、そこをセリは鎌風で攻撃する。


ウインドドラゴンは回避できず、鎌風が体を切り刻む。

が、ウインドドラゴンから血が出ない。というよりダメージがないように見える

これは!


「セリ!そいつは分身だ!本体じゃない!」


同じ時ぐらいに気付いたのだろう、セリも攻撃をやめる。

切り刻まれたウインドドラゴンは、一瞬揺らめいたと思ったらそのまま消えた。

やはり分身だったようだ。


だとすると本体は・・・

周囲を確認するが、見当たらない。


『そんなことしてもウチの目はごまかされへんで!』


そう言ってセリは上を見上げる。と同時にウインドドラゴンがセリの真上から落下してきた。

大きな口を開け、セリに噛み付こうとしている。


セリはぐっと体を縮め、ウインドドラゴンに向かって飛び跳ねた。

最初にアーススパイダーに使った体当たりだと気付いた時には、ウインドドラゴンに風穴が開いている。

相変わらず速くて見えない。


『どや!ウチを欺こうとしても無駄やで!』


どうやってか空中で方向転換してドヤ顔をするセリ。

しかし、風穴が開いたウインドドラゴンはそのまま消えてしまった。どうやらこれも分身だったみたいだ。


「欺かれてるじゃねーか!」


セリが自信満々に言うから俺も本体かと思ったのに・・

しかしそれなら本体はどこだ?


『ススム!!後や!』


セリの注意で慌てて後を向く、いつの間にか真後ろのすぐそばまでウインドドラゴンが迫っていた。

すでに左前足を振り上げている。

威力は分からないが、大きさから当たったら死ぬのは確定だろう。


まずい!

半分反射的にその場から飛び退いて避ける。しかし避けきれず左腕から裂かれた痛みが伝わってきた。

慌てて確認するが表面を軽く抉られただけで大した傷ではないので安堵する。


『ススム!火噴いてくるで!早よう逃げ!!』


セリが慌てて言ってくるがウインドドラゴンはすでに攻撃モーションに入っている。

ブレス範囲は分からないが、避けきれると思えない。

かといってセリの防御も期待できない。セリとの距離は離れているからだ。


俺はレーザーをウインドドラゴンに向けて撃った。"龍燐"があるからダメージは入らないかもしれないが攻撃が止まれば逃げられる。

止まれと思いつつ撃ったレーザーはウインドドラゴンの喉元に直撃し、・・そのまま貫通した。


『あかん、そいつらドラゴン種にレーザーは効か・・・へ?』

「え? あれ?」


俺とセリは同時にその光景に一瞬呆然とした。

喉に穴が開いたせいで本来口から吐き出される炎が穴から噴出し、ウインドドラゴンの顔を焼く。


「ぎぃゃぁぁああ!!」


ウインドドラゴンは悲鳴を上げその場で転げまわる。消えないのでこれは本体で間違いないだろう。

転げまわっている今の内に止めを刺しとかないとな。


『ナイスや!後はウチがやるで!!』


セリが俺の場所までやってきた。そのまま鎌風でウインドドラゴンの首を刎ねる。途端にウインドドラゴンの動きは止まった。どうやら何とかなったみたいだな。

俺はその場に座り込み一息付く。


「ふぅ・・、危なかった・・」

『ほんまやで! もっと離れとかんとあかんやん。ひやひやしたわ』

「悪かった。まさかあの距離を気付かれずに詰めてくるとは思わなかった。レーザーが無かったら終わってたな。ははは・・・」


ほんとレーザーが合ってよかった。貫通するのは想像以上だったが助かった。


『そのレーザーの威力はやっぱおかしいで。ウチは"龍燐"で弾かれると思っとったし・・・』

「俺もだ。攻撃が止まればと思って撃ったんだがなぁ」


今度、どれ位の威力があるのかチェックした方がいいな。

まあそれはおいといて、とりあえず勝ったし良いということにしとこう。


「セリ。お疲れ様!」

『ススムもお疲れ様や!』


そう言って二人して笑った。


ウインドドラゴン「ボスっぽく登場したのにもう退場!?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ