第19話 セリが動かない
「普段、いつもそのような服を着てるのか?」
「・・・そうですけど、何ジロジロ見てるんですか?」
どんな服を着てるか見てただけなんだが・・・。
さっき、ちょっと言い間違いをしてしまった所為で、ナギの目が少し怖い。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
フウの方は気にしてないようで良かった。
ちょっと!だからって「コイツは危ない人なのよ」みたいな事、フウちゃんに言わないで。
とりあえず着替えてほしいだけなんだよ。
「あの、私たちも替えの服があれば着替えます。ですがなにも持たずに逃げてきましたので、服がありません」
「それはこっちで用意するから。似たような服・・と言ったら和服かな」
現在二人が着ているのは無地の着物のような服だった。
ようなと言ったのは、俺は着物に疎いのでよく分からないからだ。
二人の背丈の着物をイメージしつつ、空き部屋のタンスを開ける。
イメージ通りか分からないが、そこには着物と帯が入っていた。
「これで大丈夫か二人で確認してくれ。ダメな場合は出し直すから」
聞くが返事がない。
ナギはタンスの中を見て固まっている。
「あの、さっきまで入ってませんでしたよね?一体何したんですか?」
「この家の物は俺のイメージで出すことが出来る。その服も今イメージしたから出てきたんだ」
それを聞いてナギは「へ~」と言っていたが、目が虚空を見つめている。
なんか現実逃避してないか?
「おじちゃん!これ着ていいの?」
フウが嬉しそうに聞いてくる。
おじちゃんか・・・
そうだよな、もう30だしおじさんだよな・・・
「ああ、いいぞ。好きなのを着るといい」
「やったー」
嬉しそうなフウはタンスの中を漁り出す。
可愛い。
・・・・・
言っとくが、ロリコンではないからな?
子供はみんな可愛いもんだ。
「ナギさんも好きなのを着るといい。俺はリビングに戻ってるから何かあったら、・・そうだ、必要ならお風呂も使ってもいいから」
そう言って部屋を出る。
俺がいると着替えられないだろうし。
・・・ナギちょっと怖いし。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
結局、二人は風呂を希望した。
風呂自体は知ってたみたいだ。
ただ、水が勿体無いので毎日は入れないらしい。
だから入れるなら入りたいそうだ。
一度風呂場を案内した時も嬉しそうだったな。
というわけで女性陣は現在入浴タイムだ。
ついでなので、二人にセリも連れていくようお願いした。
とりあえず湯船に放り込んでおいてほしい、そうお願いした。
そうすれば復活するから、多分・・・
連れてかれる時も放心状態だったのだが、3時のおやつ抜きがそんなに嫌なのか?
あっ、いやおやつは出したから抜きではないか、あいつが早く食べてしまっただけだし。
・・・・・
風呂入っても回復しないのであれば、なんか考えないと・・・
あいつがいないとチャロアイト壊せないし。
物でつるにも、あいつをこれ以上太らせるわけにもいかないし。
風呂に連れてく際、持ったナギも「重・・」って言ってたからな。
戦闘をしてもダメだ。
ほとんど鎌風で倒して、自身は殆ど動かない。
今日はそんな感じだった。
だからといって、ダイエットしろって言っても聞かないだろうし。
どうしたらいいのだろう。
(痩せるまでおやつを抜けばいいのでは?)
やっぱりそれが一番か。
それ言って、ダイエットさせるか。
ん? 今誰か居たか?・・・いやそんなわけないよな。
もしかして疲れてるのかな?眠気もあるし・・・
彼女たちが風呂から出てくるまで時間あるし少し休憩しとくか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「お姉ちゃん!!見て!泡~!」
「遊ばないの!ほら頭の泡流すから目を瞑りなさい」
は~い、とフウは目をキュッと閉じる。
私はお湯をかけながら、妹の髪についた泡を手で梳かしながら流す。
流し終えると、妹の髪には艶が戻っている。入るまでパサついていたのに凄い効果だ。
私も後で使おう。妹だけツヤツヤになるのはずるい。
しかしこの石鹸もそうだが、この家は色々とおかしい。
人間の文明がどれくらいかは知らないが、この家の物は数世代先の技術を使っているように見える。
今使ってるシャワー(だったかな?)もその一つだ。レバーを上げたり下げたりするだけで水が出るのも驚いたが、温度まで自在とはどのような仕組みだろう?
すごく気になります、後でススムさんに聞いてみましょう。
彼も分かってなさそうですが・・・
しかし、こうしてお風呂に入れるとは思いませんでした。
この家に入るのは賭けでした。とはいえ、あそこで断る選択肢は持ってませんでしたが・・・
私たち二人では、きっとすぐに死んでいたでしょう。
それほどまでにあの森は危険です。ススムさんは分かってないようですが、こうして招いてくれたので多少は、危険だと認識はしてくれてそうです。
人間なのがすごく残念ですね。
そうでなければ・・・いえ、なんでもありません。
「お姉ちゃん顔赤いよ~?」
「そう?少しのぼせたのかな?」
ちょっとお湯が熱いですね。
あの蛇(仮)は大丈夫でしょうか?さっきからずっと湯船に浮いてますが
ああ、蛇かどうか怪しいので(仮)をつけてます。
あんなに胴が太い蛇など見たことありません。
「フウ。その蛇(仮)さん大丈夫そう?」
蛇(仮)はフウの近くを浮いているので、フウに聞いてみた。
フウが体をつんつんしても蛇(仮)は動かない。あのどら焼き?が相当ほしかったみたいですね。
わかりますよ。とてもおいしかったので。
「ダメ、死んでる」
ええ!!?
慌てて蛇(仮)に近寄って確認しました。・・・どうやら生きているようですね、一安心。
死んでるはフウの比喩だったようです。びっくりしたので頭を小突いときました。
しかし、私達が騒いでもこの蛇(仮)一向に動きませんね。
本当に死んでるみたいです。
「セリちゃん。あのお菓子本当に食べたかったんだね」
フウが思い出したように言います。
セリちゃん?ああ、この蛇(仮)の名前でしたね。
「今からでもおじちゃんに言ったらくれるかなぁ?」
「どうかな?私はダメだと思う」
「どおして?」
「だってあのお菓子は元々3時のおやつって言ってたじゃない。セリさんは早めに食べてしまっただけでちゃんと貰ったんだから」
そうなの?と首をかしげるフウ。あんまり意味が分かってませんね、これは。
「でもお願いだけならいいと思うわ。二人で言ってみましょう」
「うん!セリちゃん、セリちゃんがまたあのお菓子食べられるように頑張るね」
フウがセリさんに話しかけると、セリさんは少し頭を下げた。
「お願いします」と言う事でしょう。
セリさんちょっと復活しましたね。




