第178話 決闘①
先手を取ったのはチョコの親父だ。
開始直後、その場で大剣を大きく振る。降った瞬間剣から何か出てきた。咄嗟に身をかがめて回避する。
「おわぁあ!」
「わざわざ楽に死ねるよう首を狙ってやったのに・・・」
チョコの親父は振った大剣を構え直し、もう一度攻撃するために振りかぶる。さっきのセリの鎌風と同じ感じだったけど、“風生成”でも持ってるのか?
『違うわ! あの大剣に埋め込まれてる魔石の効果よ。あれは魔法剣と呼ばれる特殊武器なの!』
「え?」
急にチョコから念話が飛んできた。どうやって? だと考えてるうちに次の念話が飛んでくる。あと鎌風も飛んできたのでそっちはもう一度躱す。
『ナギの指輪を借りてるの! ナギの機嫌がどんどん悪くなるから早めにケリつけて』
『そういうことか。大剣の件も了解。他に情報はないか?』
あの武器や、チョコの親父の特異性についても知っておきたい。それ聞いてどうしてもダメそうならカイマンに踏み潰してもらおう。
『武器は私も知らないけど、特異性は分かるわ。えーっとね・・・結構持ってるんだけど、大半が生産系だから・・・戦闘に使えるのは“怪力”だけだと思うわ』
「“怪力”ねぇ・・・」
あの大剣重そうなのに軽々振り回すから、多分持ってる気はしてた。しかしそれだけならあの魔法剣・・・いや魔法大剣にさえ気をつければなんとかなりそうだ。これならカイマンを出撃させる必要はなさそうだ。
「どうやらワシの特異性を他から聞いてるみたいだが・・・残念、ワシは誰にも言ってはおらん特異性を持っているぞ」
ボソッと言ったのを聞かれてた。
てか、秘密の特異性あるよって今何で言ってきたんだ? それ聞いてもっと警戒しろとでも思ってるのかな。この戦闘中にわざわざ言う事意味も無いし、多分そう思わせるための嘘なんだろう。
“怪力”だけって事は力が強いだけだという事で、特殊ことが出来るわけではない。自分の力では特殊なことができないので魔法大剣でそれを補っているのだろう。
「それ嘘だろ? その魔法大剣使ってる時点でバレてるぞ」
「ふん、ならそう思っているがいい。後で後悔させてやろう」
うーむ・・・、流石に認めないか。
まぁそれはいいや。相手がどういう特異性を持ってようが負ける訳にはいかない。
そろそろ反撃しないとな。
『プル、反撃するから防御をお願いしてもいいか? 流石に攻撃しながら避けるのは無理』
『はっ! お任せ下さい!!』
大体今の鎌風を躱すことで精一杯なのだ、これを避けながら攻撃は無理。そもそも全て躱せてるのが奇跡に近い。何故躱せてるのか不思議なくらい躱せてる。もしかしたら俺不正してるんじゃないかと思ってしまう。
あの人ならこっそりと[攻撃が絶対当たらない不可視のバリア]を展開しててもおかしくない。
「ふん、無駄に躱すのだけ上手いな。普段から逃げてばっかりなんだろ!」
「いやいや、俺は普段戦闘をしないし」
戦闘はセリの担当だ。それに基本瞬殺するので隠れたり逃げたりする事もなく、危険も感じない。ゲームのようにただオートで進む戦闘を見てるだけのような感じだ。
だからこんなふうに動く戦闘なんて久しぶり過ぎて、明日筋肉痛になるかも知れない。
『主、次の攻撃から私を前に出して下さい。ガードします』
『頼む』
何度目かの攻撃を回避した時に、プルが伝えてくる。了承してプルを前に突き出し、プルを持っていない左手の人差し指をはチョコの親父に向ける。そういえば最近“光生成”使ってないけどちゃんとレーザー出せるかな。
「なんだ、その構えは? ふざけてるのか?」
「決闘中にふざける程馬鹿じゃ無いな」
「!! 旦那様すぐ躱して下さい、あれが来ます!」
「む!?」
ヘイゼルの掛け声で、チョコの親父はその場から飛び退いた。“怪力”で脚力も強いせいか、あの大剣持っていながら1歩で数m横に移動する。
こっちが撃つ直前に移動したため、久々に撃ったレーザーは当たらず庭の一部に穴を開ける。
くそっ、どうやらヘイゼルがあの親父に俺の特異性について話していたようだ。まぁ知られてて当然だわな。
でもバレてるならもっとバンバン撃ってこう。指を全部伸ばし、ジオ◯グのように5本指全部から撃ち出す。
だが悲しいことに、5本のレーザーはそれぞれ別の所に当たるわけではなく、一箇所に集中して着弾する・意識したところに飛んでいくのだが、俺の頭では複数カ所に着弾させる程意識出来なかった。やっぱりいきなりやってもダメだったわ。
当然相手には躱される。
「ふん。速いが当たらなければどうという事もない、なぁ!」
「ガード!」
『はっ!』
プルが一瞬でハンマーから俺を隠せるほどの大きな盾に変形する。変形したプルは飛んできた鎌風を軽々と防いだ後、前が見えるように目の部分だけ窓を作る。その窓からチョコの親父が驚愕してるのがよく見える。
「なんだそれは!?」
「任意の形に変形する武器だ」
ドヤ顔で言ってやったが、相手には目しか見えてないんだった。まぁかなりビビってるようだし、良しとしよう。チョコの親父が戦いの最中にも関わらず、製造方法などを聞いてくるが、そもそも武器じゃないし製造方法なんてない。
「熱したら出来るぞ」
「そんな当たり前のことを聞いてるんじゃない!」
だから適当に答えておいた。
対してチョコの親父が叫ぶと、同時にボウっと魔法大剣が燃える。どうやら剣自体を燃やす魔石も搭載されているみたいだな。
激昂したのかチョコの親父はそのまま突撃してくる。まぁあのまま鎌風撃ってもグダるだけなので、そうするしかないんだけど。
「ふん!!」
「うっ!」
チョコの親父は俺のレーザーを躱しながら近くまで来ると、大きく剣を振り上げ振り下ろす。プルはさっきより盾の厚みを増やして受け止める。プルは受け止め切れたが、俺が踏ん張ることができずそのまま地面に吹き飛ばされた。
『主!!』
『大丈夫だ。そっちは?』
『私は問題ありません!』
むう・・・しかしまいったな。
アレ程のパワーだと、プルで受け止めても弾き飛ばされる。このままだと防いでもその度に吹き飛ばされるので反撃が出来ない。それにこのまま転がり続けると、そのうち追撃でやられる可能性がある。
『主・・・どうしますか?』
そうだな・・・




