第18話 ナギとフウ
二人を一旦リビングに招く。
二人は敷地に入って驚き、家に入って戸惑い、リビングに入ってからは周りの物に興味津々だ。
リビングに招くだけでも変に時間が掛かった。
その上、今も周りの物が気になるのかこっちの話が進まない。
子供は分かるが、大人は少し我慢してくれ。
後で説明するから、先に聞いてくれない?
「す、すみません。見た事ないものばかりで・・つい」
「そうだろうけど、手当てを先にしてくれないか?痛々しいしさ」
二人の体は所々に傷があった。
特に足は裸足で歩いてたせいか、特にひどい。
俺は救急箱を用意する。
この家、ほんと何でもあるな・・・
「あの・・・それは?」
「これは怪我した所を消毒したり、傷を塞いだりする道具だ。使い方はーー」
「それなら大丈夫です」
箱を開けて説明しようとすると、女性に遮られた。
え?これの使い方知ってるの?
「いえ、怪我の治療でしたら道具を使う必要はありません。この子の特異性で治せますので」
そう言ってとなりの女の子を見る。
へ~、この子は怪我が直せるのか。
俺が見ると、女の子は女性の後ろに隠れようとする。
心に5のダメージを受けた。
女性もそうだがまだ互いに信じられない関係だし、警戒するのは当然だ。
ただ子供に怖がられるのはちょっぴり辛い。
「なら、それで怪我はなんとかなりそうだな」
「はい。ただ完全に治癒するには時間がかかります」
瞬時に回復は出来ないのか。
能力で回復ってゲームしか知らないから、一瞬で回復するイメージしかない。
女の子は、自分の足に手をかざした。
かざした場所が少し光り、傷が徐々に塞がっていく。
なんか巻き戻しを見てるみたいだな。
けど、塞がりがちょっと遅いな、言っていた通り時間がかかりそうだ。
「ならその間に昼ごはんにでもするか。お昼も近いし」
「昼ごはん?お昼に食事をするのですか?」
うん?そうだけど?
もしかしてこの世界には、昼ごはんの概念が無いのか?
「食料も無限にあるわけでは有りません。必要最低限のに抑えるのが普通でしょう?」
なるほど、あの森で暮らしてるとそう言う考えになるよな。
食料が腐るほど有れば別なんだろうけど。
うちは勝手に補充されるから、実質無限だし。
「うちの食料は減らないんだ。だから好きなだけ食べられるし、お昼にもご飯を食べるんだ」
ズガ~ンと衝撃を受けた二人。
二人揃ってずるいを連呼してる。
なんかごめん・・・
「二人もなんか食べるか?別に構わないぞ?」
提案すると、二人がまたコソコソ話をしだした。
そんなに離れてないのでコソコソしたって聞こえてるぞ。
内容は・・・女の子が食べたいと言ってるな、女性は駄目派か。
しかし本当は食べたそうだな。
女の子に指摘されて目が泳いでるぞ。
結論が出るまでポケットに入ってたどら焼きを食べて待つ。
・・あ、これセリに渡すって言ってたどら焼きだった。
『・・・・・・・』
後ろから視線を感じるな。少し恨みが混じってる気もする。
「「・・・・・・・」」
前からも視線を感じるな。
話は終わったのか?
はぁ・・仕方ないな。
「ほら、好きに食べたらいいぞ」
どら焼きをセリ、二人用と皿に出しソファの間のテーブルに置く。
置いた瞬間、セリはどら焼きにかぶりついた。
二人はどうしよかと迷っているが甘い匂いにつられたのか、一つずつ取って咥える。
「!!、美味しい・・」
「あまーい!」
甘さに驚いたようだが、美味しそうに食べてるので良かった。
なんか、やっと笑った顔を見たな。
それよりセリよ・・・
さっきまで『ウチのソファ!』って言いながら泣いてたのに、出した途端この変わり様。
今、無心でどら焼きにがっついてるけど、お前のそれは今日の3時のおやつなんだが・・・
「セリ、言っとくけどそれ3時のおやつだし、今食べきると3時のおやつ無くなるぞ?」
言った直後セリの動きが止まった。
皿には・・・もうほとんど無いな。
セリ、3時のおやつ無し!!
今、決定しました。
『ススム・・・嘘やんな?今のは嘘やんなぁ!!?」
残念ですが本当です。
『うわぁぁぁぁああん』
泣いてもダメです、自分で食べたんだし。
泣いてるセリの目に二人のどら焼きが映る。
セリは無言でソファから降りると二人(のどら焼き)に近付く。
まさかコイツ、人のまで食べる気か!?
奪ったら、当分おやつ抜きにしよう。
『ウチに・・ウチにどら焼きを恵んで下さいぃ!!』
・・・・頭下げよった。
奪うよりマシだけど、そこまでするか?
後、二人には聞こえてないからな。
「あの・・・これは一体?」
二人は困惑している。
「すまない、二人にどら焼きを分けて欲しいそうだ・・」
その言葉に二人は顔を見合わせた。
そして・・
「「いや(です)!!」」
そうですよね、美味しそうに食べてましたよね。
その言葉を聞いてセリはまた泣いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「とても美味しかったです。ありがとうございます」
食べ終わり女性は頭を下げてきた。
口にあって良かったよ。
女の子は治癒を再開している。
セリはショックで真っ白な灰になっている。
どら焼きでお腹も少し膨れたし、お昼は少し後にしよう。
その前に確認だ。
「自己紹介をまだして無かった、俺は進という。良ければ二人の名前を教えてくれないか?」
いつまでも女性とか、女の子というのもな。
女性は少し考えたが、何か諦めたようなため息をついてから答える。
「私はナギと言います。この子は妹のフウ。種族はご存知の通り、有角族で・・・亜人です」
「ナギさんにフウちゃんね、分かった。ありがとう答えてくれて。あと、言いたくないのなら亜人と言わなくていい。俺も言わないようにする」
そもそも亜人とは人間が言い出した蔑称だろう。
「ありがとうございます。・・・ずっと考えてたのですが、進さんは亜人が嫌いではないのですか?」
「いや、そんなことはないぞ。嫌いになる理由もないし」
だって、さっき知ったばかりだし。
女性・・いやナギはそう答える俺の事をジッと見ている。
そんなに見られると照れるんだが?
ナギは美人だし余計にさ。
「やはり変わりません。フウの方はどう?」
「ずっと一緒だよ!」
? 何がでしょう?
俺が首を傾げてるのを見たナギが説明してくれる。
「私たちの種族は人の真意を探る特異性が有ります。ずっとススムさんを見ていましたが、一向に嘘をついてるように感じ取れませんでした。だから私たちは少し貴方を信じてみる事にしたんです」
そんな特異性持ってたの?
危なかった~、嘘つかなくて良かった。
少し信じてもらえたみたいだし、一歩前進したと思っておこう。
「お姉ちゃん、回復終わったよー」
お、傷直ったのか。
後はお昼食べてから・・いや先に脱いで貰うか。
服も傷だらけだし。
「脱ぐ?」
・・・あっ
「・・・・・」
ちょっと待って!他意はないから!
新しい服出すからそれに着替えてくれ。
言い方を間違った。
ナギの目付きが少し鋭くなったよ・・・




