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第170話 クソジジイの切り札

待つ事1時間ほど、

目の前に首都で人気のお菓子が並んでいく。並んでいくのだが・・・


『全然ええ匂いせぇへん・・・』

「一応言っておくけど、これ首都で人気のお菓子ばかりよ」

『嘘やん・・・』


セリはあからさまにションボリしている。まぁ分からなくはないわね。昔は好きだったけど、あの家のお菓子を食べるとただのちょっと甘い料理にしか見えない。

リンもちょっと楽しみにしてたようだが、出て来た物を見て食べる気が無くなったようだ。

それよりさ、急だから仕方ないかも知れないけど用意遅いわね。


セリのテンションが下がっているとも知らずに、最高級お菓子を用意したクソジジイは、勝ったと言わんばかりの顔で近づいて来る。料理の前に立ち、


「さぁ、好きな物から食べると良い。ススムのような冒険者には用意できない最高級を用意したぞ!」

「ほらセリ、食べていいって」

『・・・分かったで』


気が乗らないと言わん態度でセリが端からお菓子に齧り付く。不味くはないはずだけどススムのお菓子中毒のセリは満足しないだろう。

ジッと見てるとリンが聞いてきた。


『チョコは食べないのかい?』

「私はコッチ食べるわ。ススムからどら焼き貰ってるのよね」

『なんやてぇ!?』

『いいね。僕も貰ってもいいかい?』

「いいわよ。もう一つあるから」


驚愕のセリの前で、2人してどら焼きを齧る。

あ、セリの分は無いわよ。あなたにはクソジジイが用意したお菓子があるでしょ? それで我慢しーー、ちょっと泣く事ないでしょ!?


「どうだ、泣くほど上手いだろう。チョコのような質素な食べ物とは比べ物にならんからな」


質素て・・・・まぁ見た目だけ言えばそうね。

というかそんなに泣かれるとこっちが困るんだけど。


「ほら、これあげるから! ちゃんとセリの分もあるわよ」

『ウチの分~!!』


セリは食っていたお菓子を飲み込むとどら焼きに齧り付く。その時尻尾で弾いた残りのお菓子が勝ち誇ったクソジジイの顔にクリーンヒットする。クソジジイは勝ち誇った顔のまま固まった。あーあ、フリーズしちゃった。怒り出す前に離れないと。


『美味い、美味いで! やっぱりこっちやないとあかんで〜。あれ全然甘ないしあかんわ~』

『食い意地張ってそんなことするからだよ・・・』

『そやな。今度はもうちょっと考えてからやるようにするわ』

「やめなさいよ・・・」


セリを担いでその場を離れる。フリーズが解けてきたクソジジイが徐々にプルプルし始めた。執事達も状況を理解してるようで、全員が嫌々剣を構え出す。


数秒後、顔のお菓子を手で払い除けたクソジジイは怒声をあげた。


『アイツらを叩きのめせぇ!!!』

「う・・・うおおおおおお!」


同時に執事達がこっちに向かって走りだした。迎撃したいがリンもセリも呑気に食べている最中だ。倒される心配ないからってやる気なさすぎない?


「ほら、来るわよ!」

『食事中』

『ウチもや。チョコやっといて』

「私が勝てるわけないでしょ!!」


冒険者をしてた時も、ハンマーを大振りするだけで私は大して強くない。ヘイゼルくらいなら勝てるけど今向かってくる執事は、普段ボディガードも兼任する位強く、数も多い。1対1ならまだ善戦出来るかも知れないがあの数では無理!


『じゃあウチらが食い終わるまで待ちーや。今1番美味いーー』

「後で私のおやつ分けたげるから!」

『よっしゃ! 直ぐ倒したるわ!!』

『相変わらずチョロいね・・・』


セリは『残しといてや!』と言ってどら焼きを私に預けると、執事達に突撃していく。相変わらず単純で助かったわ。

執事達はセリが突撃してくると全員失速し、その場で剣を構え直す。

逃げないのは流石だけど、腰が完全に引いている。


「来るぞ! 特異性に気を付けろ!」

「先輩! 怖いんで逃げても良いですか?」

「職を失っても良いんならそうしろ!」

「「「「そうします! 今までありがとうござました!!」」」」

「マジで辞めんじゃねぇ!! 待てコラァ!!」


執事の半数が逃げ出した。半分がそいつらを追いかけ出した。

執事全員が戦闘から離脱した。


そして静けさだけが私とクソジジイの間に残る。

シーンとする中突撃したセリが不完全燃焼感を出しながら戻ってくる。


『あとあそこにおる奴らだけやけどどないする?』

「モア姉様以外ならどうなっても良いわよ。死なない程度にボコボコにしちゃって」

『ボコボコて・・・ええんかいな?』

『でもあのおっさんが降参したら終わりだよね。流石にもう止めるでしょ』

「良いのよ。アイツらにはそれくらいしておかないと気が済まないから。それにリン。クソジジイはまだ諦めてないわよ。」


クソジジイはまだ怒ったままだ。あの様子だとまだ降参なんてする気は無いはず。でもリンの言う通り、もう戦える人は居ないはず。もしかして契約魔物を戦わせる気かしら?

出来ればそろそろ降参して欲しいところなんだけどねぇ・・・


「いい加減降参したらどうなの? もうやるだけ無駄よ」

「黙れ! 私はまだ負けておらん!!」

「何? そっちの契約魔物でも出す気? どうなっても知らないわよ?」

「ふん! 契約魔物なんぞ出さんさ。勝てないのは分かっとるしな」

「じゃあさっさと降参しなさいよ!」

「まだだ! まだ・・・ん? ・・・ほう、来たか!」


何やら戦闘に参加してなかった執事が1人やってきて、クソジジイに耳打ちしてる。来た? 誰か呼んだのかしら?

あ、門から誰か入ってくるわね。


「ははは、これでお前らは終わりだ! お前らがどれだけ強くともコイツには勝てんぞ!」

『何や? フレイでも呼んだんか?』


そんなの呼べわけないでしょ・・・多分。大体あの人瞬間移動してるんだから、門から入ってくる分けない。


門から入ってきた誰かはクソジジイの横までくると、クソジジイに何か言われてこっちを向いた。

その顔を見て、


「「あ!」」


相手と同時に指を指して声を出していた。この前会ったばかりの人物だったから顔はよく覚えている。


「チョコじゃん! お久~!」


そこにいたのはこの国の聖女、リースレットだった。

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