第15話 寄り道するよ
今日は快晴。旅を続けますか?
→はい
いいえ
『いいえ』
・・・・・
「セリ・・・行くぞほら」
俺はソファに五体投地しているセリをリュックに詰め込む。
セリはだらけきっていた。
理由は単純、ここ数日家でゴロゴロしていたからである。
ここ数日、外が雨だったので旅を中断していた。
『いややぁ!ウチはソファでゴロゴロするんや!!』
そう言ってソファに移動するセリ。
無駄に動きが早い。
そんだけ速く動けるなら、俺のリュックに入る必要無いよね?
・・・・
ソファにしがみつくセリを見る。
ん?コイツ最近丸くなった?
さっき持った時もいつもより重かったな。
そういえばずっと食っちゃ寝で、ソファの上から動いてないよな。
「お前最近太った?」
言ってはいけない気がしたが、言ったった。
セリの全身がビクゥって震えたね。
『ふ、太ってない!雌に太ったとかーー』
「太ったのか」
断ち切るように断定する。
まぁ動いていない事意外でも、原因あるし。
『・・ぐぬぬぅ』
セリはプルプル震えている、どうやら自覚はしているようだ。
「ほら、行くぞ。体動かしたら痩せるだろ」
『いややぁぁぁあ!!」
セリの叫びが頭中に響いた。
・・・うるさいな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『うぅ、・・ぐすっ』
背中でセリがむせび泣いている。
そこまでして出たくないのか・・・
それともやらかしたか?
結局あの後、行く行かないの攻防が続いたので強硬手段を取ったんだが、想像以上にセリにダメージを与えてしまったらしい。
それ以降ずっとこの調子だ。
『鬼め・・・』
後ろからセリの恨みが伝わってくる。
暖かいはずなのに、骨の芯から寒い。
はい、セリ愛用のソファを消しました。
べちゃっと床に落とされた時の、セリのショック顔がすごかった。
無言で泣き出したときは罪悪感半端なかったよ。
だから家出る時戻しといた。
けど、セリにはまだ知らない。
帰るといいかねないので、あえて知らせてない。
というか、あのソファの何が気に入ってるんだ?
ソファなら他にもあるだろ。
「鬼でも悪魔でも言えばいいけど、結局リュックに入ってたら痩せないぞ?」
『ふん・・』
無視ですかそうですか。
まぁいいや、ほっとこ。
どうせ次家に戻るまでだし。
ん?でも戻ったらまた動かなくなるんじゃ・・・
その時はまた消すだけか。
とりあえず今は、この魔物道を進む事だけ考えよう。
入口は草木に覆われてたので獣道っぽかったが、この魔物道思ってたよりも広い。
人1人は十分通れる広さがあるし、地面に草が殆ど生えてない。
これは地面が踏み固められて、雑草が生えてきていないってことか?
となるとこの道は、かなり高頻度で魔物が通っていることになる。
それとも、除草されているのか?
なら、人の手?が入っていることになるんだが。
「なぁセリはどう思う?」
『・・・・』
まだ怒ってるのか・・・
仕方ない、コレでも使うか。
そう思いポケットからどら焼きを取り出す。
ちょっと小腹が空いた時用に持ってきたのだ。
しかし、お菓子も和洋折衷揃ってるあの家はいいよな。
どういう基準で置かれてるかは知らんが。
『ア、アンタなに食べてんねや!』
「ん?どら焼き」
案の定セリは食い付いた。
この甘党め。
セリが太ったもう一つの原因。
それが肥満兵器:お菓子、のせいだ。
食いすぎなんだよ!(心の叫び)
おっと失礼。
そう言いたくなるくらい食ってた。
だから反応はすると思ったが・・・
『ウチにも、ウチにもぉ!!』
すでに中毒症状出てるな・・・
「痩せたらあげる。だからがんばれ」
『鬼め!!』
「食いすぎなんだよ!」
反射的に言っちゃった。
セリは『ぐぅ』と唸っている、自覚はしているらしい。
「あげないとは言わない。ただこのままだと太って動けなくなるぞ」
そう言うとセリはリュックから出てきた。
ちょっとはやる気出したか。
「で?セリはこの道どう思う?俺としては魔物の通り道に見えないんだが」
『分からん。ただススムの言う通り、魔物が通っただけにしては変やな』
そうか、なら行けるとこまで進んでみよう。
『普通おかしかったら「引き返そう」やないんか?』
引き返しません、気になるので!
あと、面白そうなので!!
『アンタ・・早死にすんで?』
かも知れない。
別にそれでもいいと思っている。
人間なんていつ死ぬかなんて分からないし、死んで悲しむ人も居ない。
だから小さい頃に決めた。
死んだらそれまで。
他人に迷惑がかからないようにだけ注意して、好きに生きる事にした。
「俺は今を生き続ける、昔そう決めた。やりたい事をやり、やり残した事がないようにしたい。だから、危険だからとかそんな事で自分のやりたい事をやめない。出来るとこまでするし、行けるとこまで行く」
そして黙って聞いてるセリを見る。
「それに今はセリも居てくれる。セリが居るから危険な場所だって大丈夫だと思ってる。本当にダメならセリが止めてくれるよな?」
『・・・しゃーないな。任しとき』
セリはため息をつきながら了承してくれた。
すまないな。
これは俺のわがままだ、それにセリを巻き込んでる。
セリもそれを分かっているだろう。
ほんと、いい奴だよ。
そう思ってると側面から音がした。
ガサガサッ!
!! 草むらが揺れてる。
アーススパイダーが飛び出してきた。
そして真っ二つに割れた。
・・・・・へ?
『どや?ウチの早撃ちは?』
セリが近づいてきてドヤる。
鎌風で真っ二つにしたようだ。
「なぁセリ、こいつは温厚な奴じゃないのか?」
『ん?なんやアーススパイダーやったんか。よう見てへんかったわ』
出てきた奴を見てない・・・だと!?
「魔物じゃなかったらどうするんだ」
『こんなとこ魔物しか居らんやろ』
確かにそうかもしれんが・・・
「もしもってことがある。頼むから何が出たかだけ確認してくれ。早撃ちできるんなら、確認してからでも大丈夫だろ?」
そう言ってどら焼きを差し出した。
『しゃーないな。そこまで言うなら分かったわ』
セリはすぐ了承してくれた。
どら焼きのおかげだが。
頼んだからな?
セリの肥満化は閑話で書ければ書く予定です




