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第141話 シュルトゲートの幻覚

いつも誤字脱字報告ありがとうございます。


『マスタ~!、第2波来ます~』


総員、幻覚レベルMAXに!。え?、最初からMAX?

じゃあ他の地域にいる()も来て!、みんなで追い返すの!。


『ラジャ~』

『ラジャ~!』

『ヤダ~!』


や・る・の!

誰?、今嫌がったの!?


とにかく何故か幻覚が効いていないあの女性に幻覚を見せるの!。

じゃないと突破されちゃうわ。


『女の子だからヤダ~』

『可愛いからヤダ~』

『綺麗だからヤダ~』


くっ!、流石私の娘達。

分かるけど、凄くわかるけどやるの!。


・・・・・ん?、

もしかしてさっき効かなかったのって・・・

対象から外してた?


『『『・・・・・』』』


この()達はー!!



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



じゃあ、今度は私が先導しますね」

「お願いします」


さっきと逆で、今度はナギが俺を引っ張ってもう一度同じ道を歩く。

今は真っ直ぐ進んでいるけど大丈夫なのだろうか?


『ナギ、上に光る物は見えるかい?』

「見えます。ですが先程より数が多いですね」

『むぅ・・。やっぱりウチらには見えへんな。襲っては来うへんのか?』

「来ないです。さっきもでしたがずっと飛んでるだけで近付いてすら来ないですね」


ナギにはまた光る何かが見えるらしい。しかしセリと同じで、俺も全く見えない。

てことはまた俺たちは幻覚を見てるって事か・・・。


というか幻覚見えた方が何も見えないって・・・どう言う事?

普通逆だろ。

“気配察知”にも引っかからないのもちょっとズルい。


『多分その光るのは魔物ではないか、本体から分離した何かやと思うで』

「分離?」

『オリジン種と同じや。本体は後にオリジンってつくけど、分離されたやつは違う名前になる。インフェルティ・ヒュームもそやったやろ?』


確かに・・・


「じゃああれは魔物の一部・・・って事で良いんですか?。私はオリジン種ってのを見た事ないですが、話ですと液体の魔物なんですよね?。今見えているのは液体っぽく無いのですが・・・」

『なら魔物やないんかもしれんし、魔石なしの魔物かもしれん。“気配察知”は魔石を察知するだけやしなぁ』

『まぁ魔石のない魔物なんて見た事ないし、恐らく魔物ではないと思うけど・・・用心はした方が良いかな』

『せやなぁ。さっきは幻覚が効いてるから攻めて来うへんかっただけで今回は分からんしなぁ。一応結界張っとこか』


セリ達の中では魔物では無いと結論付けているが、本人達も見えないのでとりあえず結界張って先に進む事にした。

ナギに手を引かれながら進む。

道中ナギが急に脇道に入ったり、Uターンしたりしているが、本人によると真っ直ぐ歩いているだけらしい。さっき歩いていた時のナギはこんな感じだったのかな。

右行き、左行き時には回れ右しながら進む事1時間ほど、道先が明るくなってきた。


「ススムさん、何か見えてきました」

「俺も見えてる。もう幻覚解けたのかな?」


さっきまで酷かったからな。

木に突っ込んだり、毒沼に突っ込んだり、急に洪水になったり、オバケが出て来たり・・・。触れても感触が無いので幻覚だと分かるのだが、唐突に起こると流石にビックリする。


これ何も見えていないナギからしたら俺達が急に騒いでいるようにしか見えてないんだろうな・・・。


「何か私だけ損してる気がします・・・」

「いや・・・これ結構心臓に悪いからやめといたほうがいいぞ」

『ウチは新鮮で楽しいけどな』

『たまには良いよね』


セリ達は普段幻覚なんて見ないから、この状況を楽しんでいる。

幻覚だって分かっているし、危険も無いと分かっているからだろうけど・・・。

シュルトゲートの森に来た目的は違うからな。


「それでセリ・・・ここで合ってるのか?」

『分からん、気配はするんやけど方向がコロコロ変わってよう分からん』


どうやら幻覚で方向が分からなくなったようで当てにならないようだ。となると幻覚が解けないと力の場所が分からないのか・・・。

フレイの話だと綺麗な湖の底らしいから、湖を見つけ次第セリを放り込むか?。


『やめい!、それ魔物虐待やん!。ウチ水ん中やと息できひんの知ってるやろ?、方向も分からんまま放り込まれたら上がって来れへんし、死ぬやん!。死ぬやつやん!!』


いや・・・幻覚解けてない状態で放り込むなんてしないぞ。

仮にしたとしても対策はちゃんとするから。


『ほぉん?、例えば?』

「例えば?。そうだな・・・体に紐つけてナギに釣ってもらうとか?。顕現して入るとか?」


まぁ前者は糸切れたり外れたら終わりだし、後者は湖の大きさ次第は無理だけど。

多少下がるだけで危険なのは変わらないな。


やっぱりやめとーー


『採用や!、流石ススムやな!!』

「は?」


え?、やるの?。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



くっ!、結局あの人には幻覚を見せる事ができなかった!。

仕方ない、可愛いんだから。


『手、振ってくれた~』

『笑ってくれた~』

『声かけてくれた~』


ほんと可愛い。

そして可愛いあの人の隣の男が邪魔!。ずっと手を繋いでるのは、ずっと見てるだけの私への当て付けかしら?。

幻覚見えてない彼女に手を引いてもらってるのは分かるけど・・・、ちょっとムカつく。


しかしどうしよう。このままではあのお方から任務に失敗してしまう。失敗したらお仕置きされてしまう。それだけは嫌!。


『お仕置き?』

『マスタ~お仕置き?』

『お尻ぺんぺん~?』


されないわ!!

何故ならまだ失敗してないから!。


あのお方にお尻ぺんぺんとか考えただけも・・・有りね!。

って、何考えているの?、私!


くっ!、娘達はお仕置きされないからって呑気なものね。


『でもマスタ~、どうするの~?』


どうするって言われても・・・、

貴方達があの女性に幻覚見せたらいいだけなんだけど・・・。


『『『や!』』』


でしょうね!!

全く本体()に逆らうなんて・・・、どこかで教育を間違ったのかしら?。


・・・・・

はぁ・・・仕方ないかぁ・・・、直接出向くしか無さそうね。

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