第127話 ツチノコ無双
『!、邪魔やねん!。』
四方八方から寄ってくるインフェルティ・ヒュームが鬱陶しい。まさか門出たらインフェルティ・ヒュームの大群が居るとは思わんかったわ。
やる気無くなるわー・・・。
これはアレか?、ウチ嵌められたん?。
・・・いや最初にリンがやる言うてたしちゃうか。それにオリジンの位置も言うてた通り近いしな。今の位置やとここの地面割れば奴のとこまで行けそうやな。
まぁその前にこいつら何とかせんといかんけど・・・。
弱いし、攻撃も効かへんから無視してもええんやけど、・・鬱陶しいねん!。
しゃあない殲滅や。ススムも居らへんし、気兼ねなくやれるで。
最近体動かしてへんし、帰ったらお菓子ぎょーさんある。今カロリーを減らしとかんとあかん。
まずはすぐ側に居る奴からや。
近距離に居る奴は出現してから時間が経っとるし、体も固まり始めとる。こいつらはウチの体当たりで十分戦闘不能に出来る。
ガァン!
「あ~・・・・」
インフェルティ・ヒュームは体当たりするだけで体が砕け、弱々しい声を出して崩れていく。
こいつら溶岩の塊やろ?、どっから声出してんねや?。
まぁええや、次!。
まだまだ数は居るしな。お菓子のためや、やったるで!。
とはいえ全部体当たりやと疲れるしな、鎌風も使うて数を減らしていく。鎌風で膝上から切断してしまえば動けなくなって終わりや。後は放っておいたら固まって動かんようになるからな。
出てきたばかりの奴には“水生成”で作った特大水玉をプレゼントすんで。水温は低めにしとるさかい、一瞬で動けなくなる優れもんや、ただそれでもすぐ蒸発するさかい早く撃たんとあかんのと、水蒸気で周りが見えなくなるのが欠点やな。
『しかし何でウチばっかりお菓子抜かれるんや?、アレだってウチのミスやしちゃんと直そうとしてたやん!』
ススムらはウチの頑張りを見んと現状を見ただけで判断しよる。ウチが何時間頑張ったと思っとるんや、途中疲れて寝たけど物凄い頑張ったんやで!。
チョコもリンも何でそこをもっとアピールしてくれへんのや!?。ウチが頑張ってたと分かればススムもナギもお菓子抜きなんて言わんかった筈やのに!。
何やイライラしてきたで・・・。
「あ~・・・」
『あ~あ~煩いわ!!』
・・・・・
おっと、いかんいかん。こんな雑魚にマジタックルしてしもたわ。
威力高すぎて一瞬で粉々になってしもたわ。
しかしこいつら倒してもキリがあらへんな・・・。もう200位いったんちゃうん?。
何匹倒しても全然数減らへん・・・。あとさっきから溶岩飛ばしてくる奴鬱陶しいな!。何でそんなに精度ええねん。こっちは動いてんねやで、何で当てられんねん!?。
『邪魔や、消えぇ!』
自身を中心に円形の鎌風で周囲を一掃する。普段ススムが邪魔であまり使うてへんかったけど、やっぱり範囲攻撃はええわぁ。
一瞬でウチを取り囲んでいた50匹以上倒せたで。くくく、この調子やと奴らの駆逐も時間の問題や。
ほれ、続けていくでぇ!!
ベチャァア!
・・・・・、
思いっきり頭から溶岩を被った。
何や・・・、ウチの攻撃で大分減った筈・・・って、また遠くからかい!。
ええ加減にせえよ!。
さっきから何度も何度もウチの攻撃範囲外から撃ってきよってからにぃ!。
プシュァア!!
今度は何や?
む、また溶岩が噴き出とんな・・・、てことはまだ増えんのか?。
もうええやろ・・・。
「ゔぁ~・・・」
うーわ・・・、デカいの出てきよった、名前もインフェルティ・ジャイアントに変わったし別もんかな。
人間サイズのヒュームと違い、3倍近い高さにまで大きくなった。頭が天井に当たっとるし、単純にデカくなれるとこまで大きなっただけやろうけど・・・。正直ここまで大きくなると今までの体当たりでは倒せんな・・・。
足も阿保みたい太くなっとるし、周りの柱より太いやん・・・。
これ・・・鎌風で切断出来るんか?。
お菓子2週間分とはいえ、ちょっとめんどくさいなぁ・・・。
オリジンは今も必死に離れて行っとるし、これ以上時間をかけるのはようないな。
逃がしたらお菓子も食べられへんし、それだけはあかん!。
『“顕現”使うしかないな』
ススムらには黙っとるけど、あれ使うとごっつ疲れんねん。すぐというわけやないけど後でやたらと眠い。どうやら“顕現”を使用すると過度の睡眠が必要になるみたいや。
あの睡眠の所為で、何度おやつを食べられへんかったことか・・・。って嘆いても仕方ないな。
使った瞬間、視界が一気に高くなる。もう慣れたけど昔はすごい高さから見てたんやな。さっきまで見あげてたインフェルティ・ジャイアントと目線が一気に同じになったわ。
「ゔぁ!?」
おー・・、ビビっとるな。
でももう遅いで。時間も掛けとうないしさっさと終わらせさせてもらうわ。
まずは尻尾でインフェルティ・ジャイアントを薙ぎ払う。数体居たけど、この姿なら尻尾を当てるだけで十分や。案の定薙ぎ払っただけでインフェルティ・ジャイアントの上部と下部は二分されあっけなく倒れる。
ふっ、デカくなってもウチの敵ではなかったな。
っと、カッコつけてる場合やないか、さっさと本命倒さんと。
薙ぎ払った尻尾を持ち上げて、思いっきり地面に叩きつける。
勿論“加速”や“鋼質化”で威力が最大になるようにしてある。周囲がアダマンタイト鉱石だとしてもこの攻撃には耐えられへんはずや。
ウチの思った通り、叩きつけた所からヒビが入り地面が割れ始める。何度か叩きつけたことで完全に地面が崩れ落ちた。崩壊は連鎖的に広がり地面に大きな穴が開く。
『見つけたで!』
穴を覗くと地下にまだ空洞の部分が見える。そこにインフェルティ・オリジンの姿が見えた。見た目はサラマンダーをインフェルティ・ジャイアント並みに大きくした姿を溶岩で作ってるけど、溶岩の中に居るから常時流動状態を保っとるみたいやな。
まぁそんなことはどうでもええか。どんな姿でも本体の強さは変わらんから、倒す分には問題ない。
「ゔぉぁぁあ」
あ、目が合った・・・。
待ちぃ!、逃げるんやない!!。
慌てて穴から地下の空洞に下りる。って穴が小さい!、通れへん!。くっ、面倒やけど、一旦“顕現”を解除して地下に下りるしかないな。
下りてみると地下はさっき居った所よりも広い空間で、地面は溶岩で埋め尽くされてる。溶岩は奴の体の一部のようなものやし触れんほうがええやろな。
降り立った瞬間捕まるのがオチや。なので“風生成”で体を浮かしてインフェルティ・オリジンと対峙する。
「ゔぉぁぁああ!!」
インフェルティ・オリジンは威嚇するように咆哮する。しかし戦闘する気は無いのか攻めてくる気配はない。
一定の間隔で溶岩玉を吐き出してくるが、遅いし回避は簡単や。
多分時間稼ぎなんやろな、撃ちながらジリジリと距離を取り始めとるし・・・。
隙をみて逃げるつもりやな。
『そんなに逃げたいんやったら、絡んでこんかったらよかったやろ・・・』
関わらんかったらウチも放置したのにな。あれだけちょっかいかけてきといて、今更逃げようとしても遅いわ。
ジリジリと逃げようとしているインフェルティ・オリジンから目を離さずに、鎌風を奴とは反対側に撃ち出した。ウチの後ろ側で溶岩が真っ二つに割れる。その中にウチと同じくらいの魔石が含まれている。
「ゔぁ!、ゔぁあああああ!」
悲鳴のような声を上げて巨大サラマンダーの溶岩が崩れていく。元々インフェルティ・オリジンの魔石は巨大サラマンダーの中にはなかった・・・。ウチと対峙した時から魔石は無く巨大サラマンダーの姿はウチを欺く為のフェイクやった。
インフェルティ・オリジンはそれでウチを欺こうとした見たいやけど、全部“気配察知”でまるわかりや。
知恵働かせたみたいやったけど、相手が悪かったな。
やっぱり面倒なだけで大したことない奴やったな。
まぁこれでミッションクリアや。
『ふふん、これでお菓子2週間分はウチのもんやな。ん?』
巨大サラマンダーがただの溶岩になった奥、壁の部分が何か変や。
壁の一部に模様が浮かんで・・・いやドアや、壁のに巨大な観音開きのドアが埋め込まれとる。
下は溶岩やし、あんな扉を作るような種族はここには居らん。もしかしたら大昔に造られた物かも知れんな。
何にしても大発見や、これを土産にしたらススムからボーナスが出るかもしれん。いや絶対出るな。
これは早速連絡せな!。インフェルティ・オリジンを倒した事も言わなあかんしな。
『ススム聞こえるか?』
『ん?、セリか?。ああ、聞こえるぞ、終わったのか?』
『終わったで。まぁウチに掛かれば瞬殺や!』
『流石だな。じゃあ門を出したらいいか?』
『いや、まだええ。面白い物見つけたし、ちょっと見てから戻るわ。また連絡するで』
『面白い物?』
『帰ってから話すわ。楽しみにしとき!』
これでよし。
距離はそんなに遠くなく、念話中に移動したらすぐに着いた。
『何かドアっていうより門やな。でもススムの門と違って禍々しい。ドアの表面の模様もそやけど、色も暗いし何や気味悪いな・・・』
触りとうないけど中がどうなってるかも気になるし、ちょっと開けて確認しといたほうがええかもな。
確認しといたほうがススムも安心出来るやろうし。
「それ以上はダメですよ」
ん?、この声は・・・。




