第12話 マッドロブスター①
魔物の通り道を探して早2時間。
川の反対側も含めて探しているが見つからない。
魔物が通る道なんてあるのだろうかと少々疑ってきた。
というか、魔物がいるのかを疑いたくなってきた。
いや居るのは分かる。アーススパイダーにも会ったしさ。けどそれ以降、数日間一切会ってないし。
魔物って少ないのかな?
『それは無いわ。ウチが住んでた時は直ぐに見つけられたで。多すぎて困った時もあった位や』
セリによると原因は分からないが、どうやら魔物は定期的に大量発生するするらしい。
時には、あの洞窟に押し寄せてきて大変だったっとセリはため息混じりにボヤいた。
それ以外でも歩けばそれなりに居たらしいので、むしろ今の状況はおかしいそうだ。
『なんかあったんかもしれん。気ぃ付けた方がええかもな』
セリが珍しく真剣な顔だ。
写真撮っとこう。カシャァ
『なにっ撮っとんねやぁ!気ぃ付けゆうたやろ!』
「でもほら良く撮れてるぞ」
『そりゃうちが可愛いから当然や!・・ってそうやない!』
リュックの中で暴れるセリ。
最近知ったが、コイツは何でも突っ込んでくれる。
なので、ついやってしまう。
「悪かったって。ほら飴やるから」
ポケットから飴を出し、セリの口に入れる。
甘党であるセリは飴をあげると機嫌が良くなるのだ。
『まったく・・コロ・・アンタはいつ・・・コロ・・』
「舐めるか文句言うのかどっちかにしてくれ」
そういうとセリは黙ってしまった。
舐めるほうを選んだらしい。必死に飴を口の中で転がしている。
ふぅ、とりあえず怒りは収まったようだし一旦帰ろうか。
もうお昼過ぎてるし、休憩しよう。
そう思って門を出したのだが、同時に後ろで水しぶきが上がった。
振り向くと鋏だけが川から顔を覗かしていた。何かを探すようにキョロキョロしている。
セリが前に言っていたのはアレのことだろう。
しかし想像以上に大きい。鋏は俺の胴を軽く挟めるほど大きい。
アーススパイダーもそうだったが、どうやら魔物は俺の想像以上に大きいらしい。まぁ人間を餌にするってセリも言ってたし、少し考えればわかる事だ。
何でもセリ基準で考えるのはよそう。
ていうか、セリって魔物のくせに小さすぎるんじゃないか
『アンタ・・・少しは自分の心配したらどうなん?』
いつのまにかリュックから出ていたセリが、呆れながら聞いてくる。
おっと、そうだった。
ただセリが居るからあんまり怖くない。それに距離もあるし。
呑気にしていたのがいけなかった。鋏が急にこちらを向き、同時に泥を吐き出した。
「おわぁ!?」
慌てて避けようとするが間に合わない。しかし泥はこちらに届く前に、見えない壁にでもぶつかったかの如く飛び散る。
セリが風生成で風の障壁を張ってくれたおかげだ。助かった。
あ、セリが睨んでる・・・すみません、離れます。
泥を弾き飛ばされた鋏は、再度泥を数弾飛ばしてくる。しかしセリの障壁障壁で、全てあらぬ方向に弾かれる。泥はダメだと分かった鋏は、一気に距離を詰めて来た。直接、攻撃するつもりだろう。
しかしセリは動かない。
あっという間に距離が詰まる。
鋏の攻撃範囲に入ったのだろう。大きな水しぶきをあげ、鋏がその姿を現した。
カニだと思ってたらザリガニだったよ。
鋏の形が丸っこかった時点で気付くべきだった。
あと、やっぱりデカイ。
『マッドロブスターって言うんか・・・大した事は無さそうやな』
種族:マッドロブスター
特異性:穴掘り 泥生成 水生成
そう言ってセリは心眼で見たザリガニの能力を見せてくれる。
特異性が少ない。どうやら種族固有の特異性しか持っていないみたいだ。
マッドロブスターは鋏を振り上げ、セリに向かって振り下ろす。
しかしセリは躱さず直撃した。衝撃で地面が凹む
ええぇ!? てっきり前見せた超速で躱すもんだと思っていた俺は、その光景に目を疑った。
セリは大丈夫なのか?
「おいセリ、大丈ーー」
大丈夫といいかけた時、ドンっとマッドロブスターの体が震えた。焦げた様な匂いと共に煙を出して倒れる。すでに死んでいるようだ。
『やっぱり大した事なかったなぁ』
セリは叩かれて凹んだ場所の中央に居た。
無事なようだ。
「セリ!大丈夫か?」
『大丈夫や?アイツ大した事ないって言ったやろ?やっぱりパワーも大した事なかったわ』
それは言ってたが、せめて避けてくれ。
びっくりするからさ。
『そうか?それはすまんかったな。アンタが「魔物の写真撮りたいー」って言ってたさかい、あえて受けてアイツの動き止めたんやけどんやけど。で、どや?ええ感じにアレ取れたか?』
あっ・・・
忘れてた・・・・
『その顔・・・アンタ忘れてたんか?』
すみませんでした。
ポケットの飴全部差し出して頭を下げた。
マッドロブスター「ハ◯マーGクラッ◯ュ!!」
セリ「何かしたんか?」
マッドロブスター「!??」
セリ「ウチのボディはZ◯C素材や」




