第11話 飽きた
『おはようさん』
8時過ぎ、いつも通りにセリは起きてきた。
いつも通りおはよう、と返す。
セリとの生活も数日経った。ずっと未だに川沿いを歩いているが、一向に森から出られない。
一体どんだけ広いんだ。
なんて言ってみたものの、原因は分かってる。
単純に、進むスピードが遅いからだ。
仕方ないじゃないか。
だって今まで見たこともない植物とかあるんだぜ。
立ち止まるだろ?普通。
『そんな訳ないやん』
同じ事をセリに言ったら、あっさり否定されたけど。
だが、俺は立ち止まるぞ。これからも。
『止まんのは構わへんけど・・・、一生この森から出られへんで』
・・・・くぅ、否定できない。
仕方ない、写真で我慢するか。
そう、写真だ。
この世界に来る時、リュックに普段持ち歩いているデジカメも入ってた。
そして家には電気もきてるから充電も出来る。
つまり、写真を取り放題だという事だ!
無意味にガッツポーズをして1人朝から盛り上がってみる。
しかし、セリには伝わらない。
『ススム、はよご飯作ってーや。出んの遅れんで。』
おっと、そうだった。
実はカメラを思い出したのは昨日なんだ。最初、リュックから取り出してそのままだったから完全に忘れてた。充電もバッチリだし、今日から撮りまくるぞ。
『ご飯!!』
「・・・すみません」
直ぐ用意します。
どうも昨日からテンションがおかしくなってるな。
落ち着かなくては・・
□ □ □ □ □
通常モードに切り替えました。
旅を続けます。
『その写真とやらがすごいのはようわかんねんけど。アンタなんであんななったん?昨日は普通やったやん』
俺にもわかりません。
写真を撮ることが特別すきでもないしな。何でだろう?
でも写真を撮ることができるのはよかった。
今までも、行った場所や気に入った景色などを撮ってコレクションを作っていた。こちらの世界でも続けていけそうだ。
花なども見たこと無いものばかりなので、写真を撮ってまとめておこう。
図鑑にできると後々役に立ちそうだからな。
ただ、品種が分からないんだよなぁ。
何かいい手は無いのだろうか。
『品種とかやったら、鑑定の特異性でわかるで』
セリが教えてくれる。
そうか、特異性があるのか。かならず手に入れなければ。
しかし鑑定か・・、心眼では無理なのか?
『心眼は相手の能力が分かるだけや、鑑定は相手の種族説明や品種、効果の説明やな。ちょっとちがうねん。両方あればほぼ分かるんやけど、両方もって生まれて来ることはかなり稀やな』
なるほど、情報を得る特異性でも数種類あるのか。
たしか人間は特異性を持って生まれてくること自体が珍しいらしいから、その二つを持ってる人なんて居ないだろうな。
『そやろな。ただ特異性は増やすことできるし、まったく居らんことはないやろうけど』
特異性を付与する石だっけ?それで特異性が増えるんだったな。
俺も早く見つけて鑑定を手に入れるぞ。
とはいえ、そのためにはこの森を抜けなければならないのだが、ちょっと気分がアレになってきた。
いや、はっきり言おう。飽きた!
川沿いを歩き続けることに飽きてしまった。
ここ数日余り進んでいないとはいえ、ずっと同じような景色を見続けることが苦痛になってきた。
魔物もあのアーススパイダー以降出てこないしさ。
・・・・・
よし、寄り道しよう。
ちょっとくらいいいよね?
『あんたがええんなら構わんけど・・・。帰る方法はええんか?』
「いい!どうでもいい!!」
『・・・どうでもは良くないやろ』
・・・まあそうだけどさ。
そう冷静に返されると恥ずかしいんだが。
でも急いで帰る必要は無いから寄り道くらい大丈夫。
『そうか。で?何処行くんや?』
「少し川沿いからそれて、少し木々の中を歩いてみようと思ってる。あまり深く行くと方向を見失いそうだし、歩き辛いだろうからほどほどにはするけど」
『なら獣魔物が通る道を進んだらええな。魔物大きさ次第やけど、少し広いからまだ歩きやすはずやで』
そうだな、そうしよう。
しかし魔物道なら魔物も出て来るだろう。少し気を付けて進まなければ。
寄り道も決まったので、魔物道を探し始める。
辺りを見回すがそれっぽいのはない。
「まぁ、見渡すだけで見つかる程、多くもないだろうし直ぐには見つからないか」
仕方ない、地道に探すとしよう。
俺はキョロキョロしながら、川沿いを歩き続けた。
写真?そんな事はとっくに忘れたよ。
スマホ「私にもカメラくらい付いてるんだからね!」
エラー「アプリケーションが存在しません」
スマホカメラ「起動しない、ただのレンズのようだ」




