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第102話 リンの真意

「何をしに?」


何をするために来たんだろう。

誰も来たことが無いって聞いたから来ただけで、それ以外の理由はない。

強いて言えば、誰も見たことない景色や動植物を見るためだろうか?。


いや、もっと単純だな。


「来たこと無かったから」

『うん?、どう言う意味かな?』

「そのままの意味だ。一度も来たことが無いし、どんな所か見に来た」

『それだけかい?』

「ああ」


リンは戸惑っている。

別におかしな理由では無いと思うんだが・・・。


『いや、おかしいやろ。そんな理由でこんな所までこうへんで』

『僕もそう思うよ』


え~・・、そうなの?

昔から行ったことないって理由でいろんな場所をウロチョロしてたし、俺からしたら普通なんだけど。

相手は魔物だから考え方が違うのだろう。


『まぁいいや、君もそうなのかい?』

「私はそんな変な理由では来ないわ」

「変な理由・・・」


普通なのはどうやら俺だけだったようだ。

チョコにも否定され、地味にへこむ。


「私は・・、その、石を取りにね。」

『石?』

「鉱石なんだけど、誰も来たことがないのであれば珍しいのがあると思ってね。何か知らない?」


チョコの目的は鉱石らしい。

ドラゴンを恐れていた割に帰ろうと言わなかったのは、鉱石が欲しかったからか。

もしかして道中もずっと付いてきていた理由はそれか?。


『知らないね。この山を掘ったわけでもないしどんな鉱脈があるかは分からないよ』

「そう・・よね」


なぜ鉱石を欲しがっているかは置いといて、チョコもあるとは思っておらずダメもとだったようだ。

分からないといわれても特に落ち込んでいる様子はない。


『かといってないとも言い切れないよ。望みがあるとすればこの洞窟の奥かな?。行ったことないし知らないけど、かなり深くまであるみたいだからね』


リンが頭を向けた方向には暗闇が広がっており先が全く見えない。だがすぐ行き止まりではない様で少し覗いてみたがまだ奥へと続いていた。


「ねぇ?、行ってみてもいいかしら?」

「ああ、全然かまわないぞ」


寧ろ俺から提案しようと思ったくらいだ。

よし、そうと決まれば早速行かないと。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



『で?、結局アンタはなんで理由を聞いたんや?』


ススム達が洞窟の奥に夢中になってしまって、ウチらのことを無視して何かを話している。

ウチと一緒で置いてけぼりにされているドラゴンに聞いてみた。


『ん?、君なら分かるんじゃないのかい?』

『まぁ・・・大体は、な。けど、あの二人はアンタ目当てや無いで』

『ははは、そうみたいだね』


こんな山の山頂に住んでいるドラゴンに会いにくる人間の理由なんて大体同じや。殆どがドラゴン討伐のために決まってる。

と言ってもドラゴンが危険やからやない、ドラゴンの素材が欲しいからや。


人間の世界では珍しい素材ほど高く売れるし、それがドラゴンの素材となればかなり高額になる。昔はそんな理由でドラゴンが乱獲されていた。

ウチやウチの同種族も同様の被害に合っていたからよう分かるけど、無駄に人間が多いさかい数えるのもあほらしくなるほど襲われた。


リンも同様の目に合っているからこの山に居るんやと思うし、きっとススム達も同類やと思ったんやろう。

ウチがそう判断したらいきなり襲って終わらせるんやけどな。


『二人だけだったし、雰囲気が違ったからね。あと君が居たのもある』

『ウチが?』

『僕が君のことを知らないとでも?、確かに姿は違うけどセリって名のスカイサーペントって言われるとあの暴君しかいないだろう?。暴君と戦っても勝てる見込みは少ないし、穏便に帰ってもらったほうがいいと思ったのさ』


つまりウチのことを知ってたさかい、攻撃せえへんかったわけやな?。

つまりススム達が生きているのはウチのおかげや。この話をしてウチのありがたみを伝えておかんと。


『ウチとの戦闘を避けたのはええ判断やな。その“輪廻転生”も体の強さは引き継がれんのやろ?。だから今ウチとやっても勝てへんやろ?』

『流石だね、その通りだよ。特異性が多いからある程度は何とかなるけど、体が弱いと強者には負けるからね』


何度もデメリットなしで転生なんてできるわけあらへん。

こいつが今のウチとタイマンやるには後100年はかかるやろな。現状やとカイマンたちといい勝負ってとこやな。


『ほんとのことを言うと転生はしたくなかった。でもそれ以上にこの山を出るのは嫌だったんだ。今はもう人間に負けることは無いはずだけど、昔のことを思い出すとちょっと怖いからね』


当時はまだ強くなかったようやな。

やられんようにこの山に逃げてきたんやろうけど、まだその時の恐怖が残っとるんか。


こればっかりは慣れるしかないし、ウチにできることは殆どあらへんな。

出来るとしたら、


『リハビリやな』

『リハビリ?、何のことかな?』

『人間が怖いんやろ?、ならリハビリすればええ。そうすれば自由に世界を移動できるはずや』

『簡単に言うけど、どうやってリハビリしたらいいんだい?』

『まずはウチらに慣れるんや、家にはススム達の他に二人居る。まずは人間に慣れて、慣れたら一緒に外に出たらええ。最初は一緒でも慣れてくると一人で出れるはずや』


どや?、この完璧な計画は!。

ウチだって本気を出せばこれくらい考えられるんやで!。


『具体的な内容は一切分からないのだけど、面白そうだね』


ほらな、リンも乗り気やで。

決定やな。


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