ライバルキャラなので頑張ります!〜木曜日のチャラ男先輩〜
木曜日
放課後、私は某資料室に向かう。
そこはターゲットのチャラ男先輩のお気に入りの場所。
先生すらもあまり近寄らないこの資料室は、よくチャラ男先輩が女の子を連れ込んでいる。
そんなところに自ら行くなんて、覗きか?と思われそうだが、そうではない。
もう皆様もお分かりだと思うが、これからパラメーターチェックを行うのです。
既にチャラ男の予定は把握済み。
今日は誰からも誘いを受けていないはず。
チャラ男先輩が資料室でボンヤリとしているところに、誘いかけて、私からキスしようとするところにヒロインちゃん登場。
さて、チャラ男先輩は慌てて離れるか。
そのまま続行するか。
それでヒロインちゃんへの好感度がわかる。
チャラ男先輩が相手だと言うことで、今まで以上に身体をはりますよ、私!
ファーストキスもまだなのに、自分からキスを強請るとか。
でも、うん、大丈夫だって信じてる。
信じてるからね、ヒロインちゃん!!
ヒロインちゃんの可憐さに既にチャラ男先輩が落ちている事を!
私のファーストキスは、ヒロインちゃんにかかっているのですよ。
前世で読んだ設定集では、チャラ男先輩は来るものは拒まず、去る者は追わず。
合意の上でしか手を出さない主義って書いてあったし。
しかもヒロインちゃんを好きになったら、初恋の如く、手も繋げなくなるほど純情になるらしいし。
だから、きっと大丈夫。
資料室に辿り着き、そっとドアを開ける。
そこには、お目当てのチャラ男先輩ともう一人。
チャラ男先輩の首に手を回してキスをしようとしている女子がいた。
あれ?今日は一人の筈…って、これって私、お邪魔?!
「あっ、ごめんなさいっ!」
キスシーンを見てしまってパニックを起こしたのか。
気付かれないように、そっとドアから出て行けば良いのに、態々声をかけて自分の存在をアピールしてしまった。
そんな私の存在に気が付いだチャラ男先輩は、キスを強請っていた女子を突き飛ばすように離れてから、こちらにやってきた。
ん?なんか焦ってる?
「い、今のは違うから。これは誤解だから。」
「?」
ん?誤解って何が??
「別に彼女とは何も無くて…。兎に角、何もしてないから!」
「??」
いや、今キスしようとしてたでしょ…。
って、何故に私に弁解してるのだろう?
「だから、ね。信じて。」
そう言いながら、私の手をギュッと握ったと思ったら。
顔を真っ赤にしながら、慌てて離した。
「ご、ごめん。急に触って。別に下心あった訳じゃ無くて。本当にごめんね。」
いやいや、さっきまで別の女子にキスしようとしてた人が、手を握ったくらいで真っ赤になって、謝りながら弁解するとか、純情乙女か。
って、あれ?
あれれ?
これって、何処かで聞いたことある状況?
さっきの女子は、私の役割だったのでは?とか。
今ヒロインちゃんが来たら、私はどうしたら良いのかな?
このまま、キス強請るべき?とか。
何故か顔を赤らめて、一定の距離感で嬉しそうにこちらを眺めているチャラ男先輩を前に、私はただ、困惑するだけだった。