表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/17

仲睦まじい食卓

一戦終えて、帰ってきた面々の癒しは食事?それとも。

「あっ、テオ君。お帰り!」

「アルバ様、お疲れ様です。」


 テオとアルバが、食事を受け取って席に向かうと、そこにはすでに、ジェネとフリィの姿があった。


「ただいま、ジェネ。」

「お疲れ~。」

「本当に疲れてますね。」

「そりゃあ未来の勇者様に、お手合わせいただいたんだからな・・・疲れて当然だよ・・・」


 フリィは嘲笑気味に笑っている。

 やや語弊があるかも知れないが、疲れているアルバにはそう映った。


「それで勝てましたか?」

「いや、魔法抜きでテオに勝てるやつがいたら、それはきっと生き物じゃない。概念とか、何かそう言う類だ。」

「ふふ。でしょうね。」

「もぅ、フリィちゃんったら、またアルバ君に意地悪してる。」


 ダメでしょ!と少し頬を膨らませてジェネが注意する。

 ジェネはとても優しい子だった。


「しかしなぜ、フリィはアルバに対して敬語なんだ?」


 ふと疑問に思ったテオが問いかける。


「それはね、テオ君。アルバ様はこんなでも、名家の次期当主様だからよ。」

「なるほどな。しかしそれにしては君の態度はどうなんだ?」


 説教をする訳ではなく、笑いながら尋ねるテオ。

 こんなでも!?と驚いた顔でフリィを見るアルバ。


「私はアルバ様が生まれたときから、世話役であり友人であり、母であり姉である。そう振る舞ってきたの。その名残というか・・・アルバ様をいじるのが楽しくて。」


 本当に楽しそうに語るフリィだった。


「なるほど・・・?常に一緒にいた事は理解したが、はっきりイメージできないほど多役だな。」

「んー・・・?そう言われて見れば・・・あんまり気にしてなかったけど、フリィはたくさんいたな。」


 テオの疑問を聞いたアルバは、記憶をたどるように考えたが、どの役のフリィも覚えているようだ。

 改めて考えて、初めて気づくほど、フリィの役柄は自然だったらしい。


「あれ?でもさ、それって今の俺がこうなったのは・・・フリィの影響が、めちゃくちゃでかいんじゃないか?」

「ふふっ、なんのことでしょうか?」


 余計なことに気づいてしまったアルバの問いに、視線を逸らしながら笑うフリィ。

 テオは状況を察して、これ以上言及しないことに決めた。


「フリィちゃんは、四つ子さんなの?」


 全く話を理解できていないジェネが、わくわくした瞳を向けてフリィに聞いた。


「そうよ、ジェネたん・・・本当に可愛いわね。」


 しれっと嘘をつきながら、ジェネの頭を撫でるフリィ。


「えへへ・・・って子供扱いしないでよ~」


 一瞬、騙されてることを、ジェネに伝えようとしたテオだったが、ジェネの笑顔を見てやめた。

 アルバと目が合い、手を少しあげて、やれやれ、とジェスチャーする。

 それを見たアルバも笑っていた。


「ところで、そっちの座学はどうだったんだ?」


 じゃれている二人にテオが声をかけた。


「あっ、へっほね!はへっ?」

「主に状況把握の重要性ね。戦況を隅々まで把握して、広い視野を持って的確なサポートをする。なんて事をご高説いただいたわ。」


 テオの質問を聞いて、すぐに口を開いたジェネだったが、頭を撫でていたはずのフリィが、いつの間にか両手で頬をムニムニしていた。

 よほど鈍いほっぺなのだろう、ジェネが状況を把握するよりも早く、フリィがテオに説明した。


「うぅ・・・ひどいよフリィちゃん。」

「後で飴あげるから許して?」

「そっ、そんなことで釣られない・・・もん。」


 いじけるジェネを、なおも子供扱いするフリィ。

 しかしジェネの心は揺れているようだった。


「僕ら前衛が、心置きなく戦いに集中できるようにする補助か。」


 テオはうんうん、と関心している。

 テオならどちらもこなした上で、涼しい顔して戦いそうだな。

 そんなことをアルバは思った。


「午後からは私たちも実技だから、午前よりは退屈しないで済みそうだわ。」

「フリィちゃんは優秀だもんねっ」


 フリィは、どうして勇者科じゃないの?なんて質問をされるほど優秀だった。

 そんなフリィを、自分の事のように、嬉しそうに褒めるジェネ。


「補助でジェネちゃんには、かなわないわよ。」


 そう言って微笑むフリィ。


「そ、そんなこと、ないよ?」

「ジェネたんてばもうっ」


 褒められて、恥ずかしそうに頬を赤らめるジェネを見て、フリィの微笑みが少し下品な笑顔に変わった。

 若干呼吸が荒い。


「あら?あなたたちまだいたのね。」


 声の聞こえた方向に目をやると、そこにはセリカとビルドが立っていた。


「セリカちゃん!ビルドさん、こんにちは!」

「こんにちは、ジェネさん。」

「じ、じぇ、じぇ・・じぇっゲハァッッ!」


 ジェネが二人に挨拶をした。

 微笑みながら挨拶を返したセリカだったが、緊張して言葉に詰まるビルドにイライラしたのか、表情を変えることなくビルドに拳をたたき込んだ。

 血の気が引く光景だった。


「セ・リ・カ!」

「きゃぁっ!ふ、フリィ!?離しなさい!」


 いつの間にか席を立って、セリカの後ろに回り込んでいたフリィが、セリカに抱きついた。

 ジェネより少し背の高いセリカだが、小柄な女の子に代わりはなく、フリィは基本的にロリコンだった。

 慌てて振り払うセリカ。


「フリィ!あなたね・・・補助科の方はどうなのかしら?あなたが本当に、テオ君やアルバ君をサポートできるのか不安ね!」

「もーセリカってば・・・私にサポートしてほしいのかしら?」


 そんなことを言いながら、再度抱きつこうとするフリィ。

 セリカは最小限の動きで避ける。


「違うわよ!まったくもう・・・もう行くわ!」


 横でうずくまっていたビルドを起こして、セリカは演習場の方へ向かった。


「セリカは冷たいなぁ。」

「いや、普通ああだろ。」


 残念そうなフリィにアルバが突っ込む。

 だがセリカは確かに、フリィの事をライバル視しているようなところはあった。

 フリィが勇者科にいたら、セリカと良い勝負ではないか?と、噂されることがあったからだ。

 それだけの戦闘ができるフリィと、同じ土台で競えない、しかし補助科での成績も知らないわけではない。

 そんな複雑な気持ちが、フリィへの態度に棘を生やすのだった。

 だがそんなこと気にせず、一人の女の子として可愛がりたいフリィ。

 お互いに永遠の片思いだろう。


「そろそろ僕らも行かないと、遅刻してしまうな。」

「でもどうせ午後は一組ずつになるだろ・・・?」

「アルバ、そう言う問題ではない。」


 魔法をフルに使った戦闘を、一つの空間を分けて行ったら、他の組に被害が出かねない。

 だから魔法戦闘をまとめて行うことはなかった。


「冗談に真顔で返すなよ。」

「冗談だったのか・・・?」

「ふふ。テオ君にはかなわないですね。アルバ様。」

「フリィちゃん、私たちも、そろそろ行かないと!」


 本気で言っていると思われた事に、アルバはショックを隠せなかった。

 そんなアルバを見て笑うフリィの手を引いて、ジェネは移動を開始しようとした。


「テオ君、私たちは実習が終わったら自由だから、見に行くね!」

「ああ。主席と次席の名に恥じない戦いを約束するよ。な、アルバ。」

「勝手に約束するなよテオ・・・」

「ふふふ、ではまた後ほどお会いしましょう。」


 そう言って四人は食堂を後にした。

いざ書いてみると本当に難しいと痛感しております・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ