平和を愛する魔王様
あらすじの冒頭でも書きましたが、私は小説執筆経験などない素人です。
書いたことがあるのは読書感想文くらいです(
読みにくい、理解できない箇所など多いかも知れませんが、私の表現力不足で申し訳ありません。
ご指摘をいただければ直していけるよう努力します。
よろしくお願いします。
「若様、お目覚めください。」
「んっ・・・うーん・・・?」
まだ夜の闇が残る深夜、若い女の声と、ベッドでもぞもぞと動く主人らしき人物の姿があった。
「わ・か・さ・ま!早く起きていただかないと、生気を吸ってしまいますよ?」
「せいき・・?なに・・・?」
女の方はなにやら物騒な事を言っているが、若様と呼ばれる少年は、まだ意識がはっきりとしないのか、ゆっくりと体を起こしながら聞き返す。
「ほら、今日は若様の誕生日です。早く起きないと祭事に間に合いませんよ?」
「たんじょう・・・・誕生日!?」
少年はその言葉を聞いて飛び起きた。
「ってまだ夜中じゃないか・・・」
「そのまま目を閉じないでください!」
窓から外の様子を一目見て、少年は二度寝をしようとしたが、再度大きな声で止められる。
「うーあ・・・頭に響くからやめてくれ・・・わかった。起きるから・・・」
「若様がすぐに起きてくださらないのが悪いのです。」
寝起きでぼんやりしているのか、泥のような動きで起き上がる少年。
よほど寝起きが弱いのだろう。
それを確認してから、手に持っていたろうそくで部屋に明かりを灯す従者。
「うわっまぶしいな・・・点けるならそう言ってよ・・・」
「起こす前に点けてないだけ、ありがたいと思ってください。」
そう言って振り返った従者は、少年と歳もさほど変わらない、まだあどけなさの残る少女だった。
若様、などと呼ぶ割には少女はあまりにも、従者らしくない。
「着替えはこちらにご用意しております。」
「あぁ、ありがとう。」
少し意識がはっきりしてきたのか、少年の動きはスムーズになっていた。
「ん?おい、この服背中破れてるぞ?」
「当然でございます。そこは翼用の穴です。」
「え・・・?今までそんな服着たこと無いと思うんだけど?」
「それは若様が、いつも翼を隠しておられたからです。」
「いや、だって邪魔じゃん・・・それにお前も隠してただろ?」
「今日は隠す訳にはいきませんので。さぁ、早く翼を通してください。」
戸惑う少年とは裏腹に、少女は淡々と話していた。
「今日はって・・・今日は・・・?」
「若様の15歳の誕生日です。」
「あっそうだった!」
「若様が王となる日でございます。」
微睡みの中告げられた誕生日だという情報を、すっかりと忘れていた少年にそう告げた少女は、嬉しそうに微笑んだ。
ブォ~ウォン!
ホラ貝のような、太い音が鳴り響く。
「若様の到着でございます!」
大きな扉の横に立つ、角と翼の生えた、まるで悪魔のような容姿の者がそう叫ぶと、大きな扉がゆっくりと開き、中から先ほどの少年と、少女の姿が見えた。
着替えは終わり、上品な服を身に纏っている。
赤紫の絨毯が敷かれた、幅の広い道を、ゆっくりと進んでいく少年。
しばらく進んだところに、五段ほどの階段があり、その上に立派な玉座があった。
絨毯の左右には、玉座手前の階段前まで、臣下らしき者達が、三列に並んで頭を下げていた。
「皆の者ご苦労!」
少年が玉座の前まで進み、少女が玉座の後方に控えたところで、やや老齢に見える、執事のような格好をした者が、声を上げた。
その声と同時に参列者は顔を上げ、絨毯から玉座の方向にむき直して、全員が跪いた。
その動きは軍隊のように統一され、美しいものだった。
「本日、こちらにおわす若様が、我ら魔族の王位を継承される!」
続けて執事が告げた。
そう、彼らは魔族なのだ。
黒いコウモリのような翼が生え、側頭部から生える角が特徴的な魔族、その後継者が少年だった。
「若様、立派なお姿・・・このエゼキル感動でございます・・・。」
エゼキルと名乗った執事は、少年にしか聞こえないような小声でそう言って、一筋の涙を流す。
「ありがとう、エゼキル。かけさせてもらうぞ。」
「はっ。若様、進行はお任せください。」
そう言って少年は座り、エゼキルは続ける。
「思い返すこと千年前、我々魔族は、この世界の主権争いに勝利を収め、この世界の頂点、唯一の王として、魔王を名乗ることを世界に許された!」
エゼキルの熱い演説が始まり、臣下達は立ち上がって静かに聞く。
「しかし、我らが初代魔王様は!王となっても奢らず、奪わず、今まで通りの平和な生活を選択された!その慈悲深き平和の心を受け継ぎ、我々は世界の模範となるよう清く!気高く!生きるべきなのである!」
ヒートアップするエゼキルの演説に、臣下達は感嘆している。
「我々魔族は、他の種族を圧倒する力を、生まれながらに持っている。故に我々こそが、その力を使わずに生きる道を、世界を模索するべきだと!」
「「オォーー!!」」
エゼキルの演説に共鳴した臣下達が声を上げる。
まるでこれから、戦に出かけるとでも言わんばかりの熱だが、あくまで魔族が平和を誇りにしている、と言う演説だ。
「先代魔王様と妃様は、子孫を残された直後に、奇病で亡くなられてしまったが・・・我らの希望は潰えていない!今日から新たに、魔族による平和が刻まれるのだ!」
先代の話を聞き、ところどころ涙を見せる臣下達だったが、うなずきながら聞いている。
「では、継承の議恒例の、占い師による未来予知を始める。シーラ様、こちらへ。」
エゼキルに呼ばれて姿を現したのは、腰の曲がった体を杖で支える老齢の女性、ローブを身に纏いフードを深くかぶっていた。
玉座の正面に、小さな机と椅子が運び込まれ、机の上に水瓶が乗せられた。
「魔王さま、こちらへ。」
シーラは一礼してから椅子に腰掛け、少年を水瓶の前に呼ぶ。
「シーラ、これは?」
少年は、どうしたら良いのかがわからず、シーラに訪ねる。
「魔王様はそこで目を閉じて、手を水瓶に添えてください。」
「こうか?」
少年は言われるまま目を閉じ、水瓶に手を添える。
シーラは立ち上がり、水瓶の中にガラス玉のような物を落としてから杖を握った。
「ビジョン」
少年にしか聞こえない声で唱えられた瞬間、少年の脳内に映像が流れてきた。
「これより数十分は未来視状態となる事が予想される。皆の者楽に・・・」
エゼキルが言いかけたところで、少年の叫び声が響いた。
「うわぁああぁああああ!」
「ど、どうされました魔王様!?」
「ぁ・・・・はっ・・・う・・・・・・・」
少年はすごい汗をかきながら、とても動揺しているようだった。
「まずはおかけください。」
エゼキルに肩を借りながら玉座へ戻る少年。
「シーラ様、一体何が起きたのですか?シーラ様にも未来は見えたはず・・・魔王様が落ち着かれるまで、皆に説明をしていただいても?」
少年の異常な反応に臣下達も騒然とする中、続けてエゼキルが聞いた。
「少し待ってください、詳しく観ます。」
シーラは水瓶に手を当てて、少年の見た物の詳細を探りつつ発言していく。
「魔王様は平和に暮らしています・・・しかし、5年後のある日、何者かに殺されます・・・」
「な、なんだと!?その者が何者なのかは分からないか?」
「その者は・・・人族、いや・・・他にも多種族いるようです。しかし中心となるのは人族の青年・・・勇者・・・?無抵抗の我々を次々と切り倒していきます。」
「そんな・・・他の種族が・・・我々魔族を襲う?魔族が他の種族に何をしたと言うのか・・・どうして我らを襲うのだ!」
あまりの事態にエゼキルも動揺を隠せなかった。
「勇者と名乗る者達は、確かな使命を心に宿しているようです。」
「我々を屠る使命・・・使命だと?ック・・・シーラよ、それを回避する手段は無いのか?もとより未来視はそのための術であろう。」
勇者が、自分たちを殺しに来るという未来は、とても納得できるような事ではなかった。
しかし今はその事実よりも、最悪の未来を招かずに済む方法を、探るのが先決だった。
「我々にこの未来を回避する方法はありません・・・エゼキル様。」
目を伏せながら、エゼキルに告げるシーラ。
「方法がない・・・?なぜだ、どこかへ逃げることはできないのか?迎え撃つことは?」
「ダメですエゼキル様・・・我々は先代が築き上げたこの平和を・・・これまで他種族を害さずに生きてきた、我々の矜持を、曲げることはできません。」
「ぐ・・・確かに戦って勝てようとも・・・先代を誇りに思うが故に、戦えない・・・だが逃げる事はできるのでは無いのか?」
「少数で世界に散り、逃げる事ならあるいは・・・しかし、魔族全員でとなると、その先の環境を変えてしまいます。それでは侵略と変わりません。」
「ならば魔王様だけでも!どこかへお逃げいただく事は?」
「魔王様の首を取るまで、勇者は追ってくるでしょう。そして魔王様には、その象徴たる角がございます故・・・」
魔族の角は本来側頭部から生える巻き角だが、魔王直系の魔族のみ、側頭部からやや反りながら後方に向かって伸びていた。
「隠すことはできない、と言うことか。」
エゼキルは悔しそうにうつむいた。
そこへシーラが追い打ちをかけるように続ける。
「それに勇者は・・・魔族をすべて狙っているように見えました。」
「く・・・っそ!誰も逃がす気は無いと言うことか・・・おのれ勇者め。」
二人が話していると突然声が響いた。
「恨むなよエゼキル。まぁここは俺がどうにかしてやろう。」
自分の死を体感し、動揺していたはずの少年が立っていた。
「ま、魔王さま。もう平気なのですか?」
「俺を誰だと思ってるんだよエゼキル。魔王だからね、どれだけリアルな死の瞬間を体験しても、仲間が死ぬ姿を見ても、すぐに回復するんだよ。」
そう話す少年の頬には涙が流れていた。
「こんな思いはしたくないし、させないよ。俺が魔王になって最初の仕事が、いきなり魔族を救う事になるなんてな。」
少年は微笑みながら涙を拭いた。
あまりにも重い、とかえぐい話にはならない予定です。