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1.逃走劇

友人のお題に応えるシリーズです。今回のお題は「ルパ〇Ⅲ世のようなスリリングなヤツ」です。

「片方は…武道のマスタークラスで、へー、我が国の最高学府を首席で卒業ねぇ…。あらら、博士号迄持ってるの?この子。で、もう一人は…、コッチは、はぁ、喧嘩が強いのねぇ。あらぁ、握力100㎏オーバー?すごいのね。 あら、しかも拳銃が上手いのねぇ。署内トップですって。!しかも…マフィアを一人で壊滅させたって!」

 メイサは、今日会った変わり者の二人の経歴を調べていた。その結果見つかった資料を眺めていたが、中々二人とも優秀だった。凄いものだ。これだけの逸材なら平の巡査なんてとっくに卒業している筈なのに何故…………あぁ。

 そういえば、この資料は両方とも要注意人物リストから引っぱって来たものだった。











「まったく!何が悲しくって野郎に追っかけられなきゃならねーんだ、オレらは?」 「仕方ないでしょう?今の我々は犯罪者。追いかけられなければならないのですから。」「せめてムサイのばっかじゃなくて、可愛い娘ちゃん達にも見つかることを願おう。」黒のオープンカーに乗り、猛スピードで道路を駆ける二人の男が居た。一人はアフリカ系の長身の男だ。腕を頭の後ろで組み、後ろに消えていく景色を眺めて溜め息をついている。余程追われているのにうんざりしているのだろう。もう一人は色白の華奢な東洋人だった。シルバーフレームの眼鏡を掛けて車を運転していた。先程から迫りくるパトカーの群れを猛スピードで他の車の合間を縫い、躱していたのはこの男だった。「で、いつまでお前の華麗なるドライビングテクに振り回されるパトカーを見てりゃいいんだ?タイヤ撃とうにもコレじゃ流石のオレも話にならねぇ。」そう言ってバックミラーで後ろを確認しつつ、懐から拳銃を取り出してクルクル手の中で遊ぶ。彼の持っている銃には今、ゴム弾しか入っていない。タイヤ

は撃てないのだ。「まぁ、そう言わないで下さい。あと少ししたら最高速度で急カーブします。その時に降ろしますからシートベルトをしっかり締めて待っていてください。そしたら後は事前通り確固作戦開始です。」




確認すると、彼らは犯罪者ではない。むしろその逆。警察官であった。何故警官が警官に追われ、逃げているかを説明するには少し時間を巻き戻して説明しなければならない。

















「さっぱり見当もつきません。どのことでしょう?」メタルフレームの眼鏡をあげながら色白の東洋人はこう言った。「だよねー、オレも。一体どれのこと?車吹っ飛ばした件?不良警官吊るしあげた件?それとも止めろって言われてた政治家ん家に押し掛けて不正の証拠見っけた件?」アフリカ系の長身の男も惚けた顔でそう言った。「ジョン、それは言わない約束です。あの件はマスコミの地道な調査に依って見つかったもの。ということになっています。我々は何も知りません。」「オイオイ、サキョーだって『どのことでしょう?』なんて自白しちゃってるでしょーが。」


 彼らは警察官である。東洋人は名をイジュウイン・サキョウと言って、署内検挙率ナンバーワンの凄腕だった。もう一人のアフリカ系の男はコリー・ジョンソンと言って彼もまた、検挙率ナンバーワンの凄腕だった。平たく言えば、彼らは検挙率ナンバーワンの警官コンビだった。そして彼らは今、上司に呼び出されていた。


「また御呼び出されたよーじゃー無いかナンバーワン巡査(・・)殿()

イヤミに巡査殿にアクセントをつける声。彼らの後ろから来たのは泥棒専門の警部。マルネル警部だった。


「おひさしゅう御座います警部殿」

サキョウは回転ドアのように後ろを向くと、恭しくお辞儀をする。

「これは警部ドノ、ゴキゲンヨウ」

コリーは嫌々、渋々後ろを向くと壊れかけの人形のように不自然なお辞儀をした。

「イヤー、君達の勇猛果敢っぷりには非常に頭が下がるよー。」

イヤミなヤツだ。オレコイツキライ。

「イエイエ、警部もゴカツヤクダソウデ。」

「はーはーはー。それ程でもな。まぁ、君達もせいぜい頑張って怒られ給え。」

サキョーが会釈するのに引きずられてオレもする。ヤツは笑いながら消えて行った。

「全く、オレアイツキライだ。」

「まぁ、そう言わないで下さい。もう暫くの辛抱です。では行きますよ。」

「ヘイヘイ。」

オレらはボスの元へと急いだ。








「模擬逃走犯逮捕訓練?」オレは思わず聞き返しちまった。無理もねー。犯罪検挙数の最高記録を塗り替えよぅってこの忙しい時に、なんだってわざわざそんな鬼ごっこやるんだ?思いついた奴の気が知れねー。「ご説明願いましょうか、ボス?」流石のブレインも理解不能らしい。



「ああ、済まんな二人とも。実は…」目の前の白髪の三白眼の男、我らがボスのガーネット氏は説明し始めた。。ボス曰く、鬼ごっこは署長の方からの発案らしい。何でも『署内トップのコンビを相手に訓練をして、警官同士のチームワークを更に強固にしたい。』だとか。「ナニ考えてんの?あの署長。」「先ず、嫌がらせのつもりでしょうね。私達を共通の敵にする辺り、相当に恨まれているみたいですね。」「お前達を選ぶ署長の気持ちは分からんでもないがな。他の管轄に土足で入り、車何台もスクラップにして不良警官締め上げて、挙げ句政治家先生の失脚の黒幕だ。署内の人間に恨まれている身内。という点でこの上無く適任だろう。」ボスはそう言って頭を抱えちまった。全く、優秀な点も適任の理由にちゃんと言ってくれたって…。ていうか、バレてる。バレてるよ。サキョーを見ると肩を竦めてアイコンタクトするダケ。何でバレた?「と、言う訳で、3日後にやるからな。頼んだぞ。」三白眼がこちらを射殺した。


そういうわけで数時間前、とある場所に呼び出され、係のメイサ女史と一緒にオレ達二人は時間になるのを待っていた。 「そうでした。開始前に所持している拳銃の弾を全弾ゴム弾に変えて頂きます。」 「エー、何で?」 「おそらく我々が事故で身内を射殺しないように…。という追う側への配慮でしょう。」 サキョーの言い分にメイサは同意すると鉛弾を要求してきた。仕方無いなー。しぶしぶゴム弾を装填しながらブツブツ言っていると今度は書類を突き付けてきた。今度は何だ? 「これからの訓練に関する書類です。お二方には様々な危険があるかと思いますが、それに関して当局は責任は取らないし、どんな目にあっても文句は言わないよ。という同意書です。」 このヤロー、何処までも舐めやがって…イヤ、いいか。どうせあんなマスケット銃並みの豆鉄砲当たるほうが難しい。(マスケット銃は当たらない銃と世間で言われている。)と逡巡してるうちにサキョーはもうすでに懐から出したペンでスラスラと自分の名前を書き、オレにそのペンを渡してきた。いやに重い、高そうなペ

ンだ。 「どうぞ、どうせ君は持っていないんでしょう?」 「流石、よく分かってらっしゃる。」 「貸しておいて上げますから持っておいて下さい。どうせ最後の始末書書きに使うでしょうから。」ひでえ信用だ。ま、いいか。そういって胸ポケットにペンをさしているうちにベルが鳴った。「時間です。これから夜までの間、あなたたちは追う側でなく、追われる側として扱われます。それでは、ご検討を。」メイサは二枚の同意書を抱えて去って行った。










というわけでサキョーの車に乗ってドライブをしていたらパトカーが来て、今に至るってワケだ。「で、どうやってオレを降ろす気だ?路駐してる間に捕まっぞ?―」「ご心配には及びません。ちゃんと算段は立ててありますから、シートベルトをしっかり締めて、歯を食いしばって待っていて下さい。」サキョーはそう言って飛ばし始めた。ん?今なんか引っかかる発言があった気が…。歯を食いしばって? ジョンソンは嫌な予感に襲われた。彼は自分が火薬の匂いのする、危険な男だという自覚はあった。が、同時に、彼ほど危険ではないという自負もあった。 黒のオープンカーは摩天楼の間を駆ける駆ける駆ける。先程までも速かったが、それが色褪せる程速くなる。

そのおかげでGが掛かり、シートベルトに押し付けられる。ヤバい、ナニカヤルキダ。

掛かるGの中、危険信号は輝く。

赤信号、コレどうやって降ろす気?




「予定通り、この先のカーブで飛ばして降ろしますよ。」

そう言ってハンドルに付いていた何かのスイッチを押した。そういえば、車のハンドルにあんなスイッチなんてあったっけ?というか、どうやって?

そんなことを考えていると、身体が軽くなり、サキョーが視界から消えた。

交差点。目の前にホテルの看板が光輝いていた。


ラッシュ〇ワーとあいぼ〇が脳内で悪魔合体しました。

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