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三国志  作者: 大田牛二
第一章 数多の戦旗

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張温

今日は二話更新です。

 六月、張角ちょうかくを討伐した功績によって、霊帝れいていは中常侍・張譲ちょうじょう趙忠ちょうちゅう夏惲かうん郭勝かくしょう孫璋そんしょう畢嵐ひつらん栗嵩りつすう段珪だんけい高望こうぼう張恭ちょうきょう韓悝かくり宋典そうてんの十二人を列侯に封じた。


 多くの者が首を傾げるような事態と言わざる追えない。張譲に至っては黄巾と好を結ぼうとした男である。実際に王朝のために戦った者ではなく彼らが評価されたのはただただこの王朝の可笑しさがよくわかる。


 皇甫嵩が張角を討伐した時、鄴を通った。


 そこで中常侍・趙忠の舍宅が制度を越えているのを見たため、没収するように上奏した。また、中常侍・張譲が個人的に銭五千万を要求したが、皇甫嵩は与えなかった。


 そのため、趙忠と張譲の二人が、


「皇甫嵩は連戦して功がなく、金銭物資を大量に浪費しています」


 と上奏した。


 それにより朝廷は皇甫嵩を召還し、左車騎将軍の職を免じた。将軍の印綬を没収して封邑から六千戸を削った。黄巾の乱で本来評価される彼の方が評価されず、宦官の言葉ばかりがまかり通るのがこの王朝の歪みである。


 これに対し、皇甫嵩はなんの不満も持たなかったのだからこの男は変わっている。この男はこの前、閻忠えんちゅうという男に韓信の故事を用いて独立し、王朝を滅ぼすように進言されても断っているぐらいである。それだけ王朝への思いが強くとも王朝は彼へは何もしない。そのことに対して無言で有り続ける彼は後世からもわかりづらい人である。








 八月、司空・張温ちょうおんを車騎将軍に、執金吾・袁滂えんぼうを副将に任命し、北宮伯玉ほくきゅうはくぎょくを討伐させることにした。


 また、中郎将・董卓とうたくを破虜将軍に任命し、盪寇将軍・周慎しゅうしんと共に張温の指揮下に入れた。


 諫議大夫・劉陶りゅうとうが上書した。


「天下は前に張角の乱に遇い、後に辺章へんしょうの寇に遭い、今は西羌の逆類(反逆者)が既に河東を攻め、更に勢いを増して上京に猪突する恐れがあります。民の多くが逃走して死から逃れようとする心を持っており、前進して生きるために戦うという考えは全くありません。西寇が徐々に前進して車騎(張温)が孤危(孤立危険)に陥いることになるでしょう。もしも利を失ったら、敗(失敗)から救うことはできません。私は進言を頻繁に行えば、陛下に厭われることになると知っていますが、それでも進言を自制しないのは、国が安んじれば、私もその福を蒙り、国が危うくなれば、私も先に亡ぶことになると思っているからです。当今において急を要す八事(当今要急八事)を謹んで再び陳述します」


 この八事のおおよその内容は、天下の大乱は全て宦官が原因であるというものであった。


 そこで宦官が共に劉陶を讒言した。


「以前、張角の事が発してから、詔書が威恩(威信と恩徳)を用いると示したため、それ以来、皆が悔い改めました。今は四方が安静なのに、劉陶は聖政を疾害(嫌って陥れること)し、専ら妖悪を語っています。州郡からの報告がないのに、劉陶はどうやって知ったのでしょうか。劉陶と賊が情を通じている疑いがあります」


 霊帝は劉陶を逮捕して黄門北寺獄に下しました。拷問が日に日に激しくなった。


 劉陶は使者(取り調べのため霊帝が派遣した者)に、


「私は伊・呂と同疇(同類)にならず、三仁を輩(同輩、同類)としたことを恨む」


「伊・呂」は伊尹と呂尚のことで、商王と周王を助けた名臣である。「三仁」とは商王朝末期の微子、箕子、比干で、諫言したため禍に遭った忠臣のことである。


「今、上は忠謇(忠誠正直)の臣を殺し、下には憔悴の民がいる。この政権もまた久しくないだろう。後悔がどうして及ぶだろうか」


 と言って憤死した。


 元司徒・陳耽ちんしも為人が忠正だったため、宦官が陳耽を怨んで誣告した。陳耽も獄中で死んだ。


 







 張温が諸郡の歩騎兵十余万を率いて美陽に駐屯した。


「敵は大軍であるが、こちらには地の利がある」


 辺章と韓遂は美陽に兵を進めて、対峙した。


 張温が辺章等と戦ったが、勝てなかった。


「張温如きではやつらには勝てんよ」


 董卓は鼻で笑った。


「だが、張角並に手を抜くのも癪だ」


 ここ涼州で名を知られている自分がこのまま勝利しないというのも己の威信を考えると問題はある。


「軽く勝つとするか」


 十一月、董卓と右扶風の人・鮑鴻ほうこうらが兵を合わせて辺章、韓遂を攻め、大破した。


 勝とうと思えば、勝てるぐらいに董卓の下にいる兵は中々に強力である。しかしここでも彼は手を抜いた。


 辺章と韓遂を包囲を緩めて逃走を許したのである。


 辺章と韓遂が楡中に走った報告を受けた張温は盪寇将軍・周慎を派遣し、三万人を率いて追撃させた。


 参軍事(「参軍事」は「参軍」ともいい、軍務の謀議に参加して主将を補佐する官)としてこの軍に参加していた孫堅そんけんが周慎に言った。


「賊の城中には穀(食糧)がないため、外から糧食を輸送するはずです。私は一万人を得てその運道を断つことを願います。将軍が大軍を率いて後に続けば、賊は必ず困乏して敢えて戦おうとせず、逃走して羌中に入ることでしょう。そこで力を併せてこれを討てば涼州を平定できます」


 無理な戦いで兵を消耗するよりは相手を涼州から追い出してしまった方が良いという意見である。孫堅は無鉄砲に前に出るばかりの将では無い。


 しかしながら周慎はこの意見に従わず、軍を率いて楡中城を包囲した。韓遂らを必ずや殺せという命令があったためである。


 だが、地の利では辺章と韓遂の方がある。彼らは兵を分けて葵園峡に駐屯し、逆に周慎の運道を断ったのである。


 このままでは戦どころでは無いと懼れた周慎は車重(輜重)を棄てて退却してしまった。


「勝てる戦だった」


 孫堅は周慎の代わりに兵をまとめて引き上げた。追撃を受けたがそれでも己の旗下の軍を中心になんとか兵を引き上げることに成功した。


 張温は董卓にも兵三万を率いて先零羌を討伐させることにした。


 しかし董卓は先零羌とまともに戦わなかった。


「連中に勝ってもそこまで旨みが無い」


 先のは勝った方が良いと思ったから勝ったのであり、勝つ必要性の無い戦に彼はやる気を出さない。


 逆に羌・胡が董卓を望垣北で包囲した。


「やれやれ、連中目、いい気になりよって」


 董卓は糧食が欠乏したため、川を渡る場所に堤防を造って魚を採るふりをし、秘かに軍を率いて堤防から川を渡って逃げた。戦っても自分の利になるどころか旗下の兵を失う危険性がある。こんな戦はやっていられない。


 羌・胡が気づいて追撃した時には、董卓が水を決壊させて川が既に深くなっていたたため、渡ることができなかった。


 董卓は兵を還して扶風に駐屯した。


 漢軍の中で董卓以外の軍は多くの負傷者を抱えたが、董卓の軍は数名とほぼ無傷であった。


 張温は戦に手を抜いたと思い、詔書によって董卓を招いた。しかしながら董卓は久しくしてからやっと張温を訪ねるという態度であった。董卓は張温のことを戦もできない無能であると見下している。


 張温が董卓を譴責したが、董卓の応対は適当そのものであった。


 それを見ていた孫堅は進み出て張温の耳元で告げた。


「董卓は罪を怖れず、逆に傲慢で大語しています。召してもすぐ至らなかったことを理由に、軍法を述べてこれを斬るべきです」


 しかし、張温は首を振った。


「董卓はかねてから河・隴の間で威名が知られている。今日これを殺せば、西征するのに頼るものがなくなる」


 孫堅はなおも言った。


「あなたは自ら王師を率いて天下を威震させています。何を董卓に頼るのでしょうか。董卓が語ることを観るに、あなたを必要とせず、上を軽んじて礼がありません。これが一つ目の罪です。辺章と韓遂が跋扈して年を経ており、すぐに進討するべきですが、董卓はまだその時ではないと言い、軍を妨害して進軍を滞らせています。これが二つ目の罪です。董卓は任を受けたにも関わらず、功がなく、招きに応じても停留し、しかも傲慢自大です。これが三つ目の罪です。古の名将で、軍権を与えられて出征してから、罪人を斬首せずに成功した者はいません。今、あなたは董卓に対して留意し、すぐ誅を加えずにいます。威刑の欠損はここにあります」


 しかし張温は董卓を処刑するのが忍びず、


「君はとりあえず還れ。董卓に疑われる」


 と言った。


 孫堅は退出した。


「悪人を野放しにしていれば、必ず痛い目に合うことになる」


 彼はそう呟いた。


 結局、張温率いる軍は韓遂らの討伐に失敗し、翌年撤退することになった。


 董卓は孫堅が自分を殺すように進言したことを聞くと忌々しげに言った。


「孫文台。やつは厄介かもしれんな」


 彼は孫堅に対し、警戒心を持つようになった。



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