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三国志  作者: 大田牛二
第一章 数多の戦旗

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橋玄

劉備がどういうやつでどう登場するのかが未だに書ける気がしない今日この頃。

 ある時、橋玄きょうげんの幼子が門前で遊んでいた時、ある者にさらわれてしまった。幼子をさらった者は楼に登って財貨を要求した。


 しかしながら橋玄はこの要求を拒否した。


 司隸校尉と河南尹が橋玄の家を囲んだが、窮迫するわけにはいかない。


 それを見た橋玄は目を見開いて怒鳴った。


「姦人が悪行を行っているのに、私がどうして一子の命のために国賊を自由にさせることができるか」


 橋玄が攻撃するように催促した。その結果、橋玄の子も賊と共に命を落とした。


 橋玄がこれを機に上書した。


「天下で劫質(人質を取ってゆすること)があっても、皆、一緒に殺すべきです。財宝によって購うことで、姦路を開張してはなりません」


 この後、劫質を行う者はいなくなったという。


 このようなことがあった後、一人の男が彼の元を訪ねてきた。小柄な男でありながらもその目はとても力強いものがあった。


「私は曹孟徳と申します」


 門番が名を聞いて、そう答えたため、それがそのまま橋玄へと伝えられた。


「曹騰殿の孫か……」


 宦官の孫の曹操そうそうであることは彼だけでなく彼の家人たちも理解した。そのため主人が宦官の孫に会うわけがないだろうとも思った。しかしながら、


「ここへ通せ」


 橋玄はあっさりと曹操に会うと言った。家人たちは驚きつつも命令に従い、曹操を屋敷に入れた。


 曹操も許されるとは思っていなかった。だが、


(会えるとは思っていなかったが、これはこれで良い)


 前々から橋玄とは会いたいと思っていた。良い機会だと思い、彼は屋敷の中に入った。


「君が曹孟徳か」


「はい……」


(この方が橋玄殿か……)


 どっしりとした体格でありながら目元には優しさがある。


「それで今回、どのような要件があって来られたのかな?」


 橋玄がそう問いかける。


「まあ要件というほどではありませんが……前々からあなた様にお聞きしたいことがありまして」


「何を聞きたいのかね?」


「あなた様は依然、郡の名士であった姜岐きょうきを無理にでも召そうとされました。それはなぜでしょうか?」


 あのような内容を初めて知った時から曹操は橋玄に対して興味を抱いていた。


「ああ、あのことか……」


「あの件に関しては多くの方々が止めたと聞いております。それでも実行なされて、批難の言葉を述べられています。なぜそこまでやったのかと思っておりまして……」


「この王朝は党錮の禁を行ったことにより、多くの人材を野に埋もれさせたままにしている」


 橋玄はそう話し始めた。


「王朝を支えるのは人の力によるものだ。その人の力は多くの人材によってなされるものだ。このままでは王朝は衰弱していくだけであろう」


 曹操の脳裏にはあの時の祖父の言葉がよぎる。


『その終わりがもし醜いものであるというのであれば、せめてその終わりを良き終わりとしてもらいたい……』


(王朝が段々と衰弱していくのは醜いものなのだろうか。祖父はそのことを言っていたのだろうか……)


「このままではいけない。そう思うからこそ、姜岐を召し出そうとしたのだ……人が与えられた才覚は世の中に役立てるためにあると私は信じている」


 橋玄はそう言って曹操を見据える。


「君もそうだ」


「えっ」


 曹操は驚く。


「君は今、宋皇后の件で連座を受けて免官となったと聞いている」


 曹操の従妹の夫・㶏彊侯・宋奇そうきは宋皇后の親戚で連座で誅殺されたため、曹操も連座して免官となったのである。


「君まで連座が及んだのは洛陽北部尉で行ったことで睨まれたというのもあったのだろう」


 曹操は二十歳で孝廉に挙げられて郎になり、その後、司馬防しばぼうの推薦で洛陽北部尉になった。初めて尉廨(洛陽北部尉の官署)に入った時、(官署の)四門を繕治(修繕、修築)した。


 五色棒を作って官署の門の左右に各十余本を掛け、禁令を犯した者がいれば、豪強も避けずに皆、棒殺した。


 数カ月後、霊帝れいていが愛幸(寵愛)している小黄門・蹇碩けんせきの叔父が夜行(夜間の外出)したため、すぐに殺した。


 京師の人々は行動を引き締めるようになり、敢えて禁令を犯す者がいなくなった。


 このことで霊帝の近習や寵臣は皆、曹操を憎んで嫌ったが、傷つけることもできず、そのため敢えて曹操を称賛・推薦した。そのため、曹操は頓丘令に遷された。


 その後、連座という格好の餌を見つけて彼を免官にしたのである。


「だが、ここまで君が出した業績は評価されるべきものだ……」


 橋玄は目を細める。


「私が見てきた天下の名士は多いが、君のような者はいなかった。君は善く自制することだ。私は老いた。妻子を託すことを請うことを望むのみである」


 曹操は驚く。


「やがて君は世の中に必要となるだろう。それでも君はまだ名がない。許子将と交わるといい」


 許子将とは許劭きょしょうのことである。人物評価を行うことで有名な人である。


「ありがとうございます」


 曹操は素直に感謝の言葉を吐いた。


「さあ、行くと良い。君の才覚は世の中に必要とされている」


 曹操は頭を下げて屋敷を去っていった。


「人の才は世の中に役立てるためにあるのだ」


 橋玄はそう呟いた。


 その後、曹操は橋玄の言うとおり、許劭の元に出向き彼にこう評価された。


「治世の能臣、乱世の姦雄」


 曹操はこの評価に大いに喜んだという。


 この一件により、曹操の名は知られるようになった。


「人の才は世の中に役立てるためにあるか……」


 曹操は空を眺めながら呟く。


「数多の才覚によって、祖父の願いを少しでも叶えることができるだろうか……」








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