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三国志  作者: 大田牛二
序章 王朝はこうして衰退する

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楊秉

 165年


 正月、桓帝かんていは中常侍・左悺を苦県に派遣して老子を祀った。


 そんな中、彼の元にある書簡が届いた。


 桓帝の弟である勃海王・劉悝りゅうかいは素行が険僻(険悪)で僭傲(驕慢無礼)かつ不法な事が多かったため、北軍中候・史弼が封事(密封した上書)を提出したのである。


「私が聞くに、帝王とは親戚に対して、愛が盛んであったとしても必ず威をもって示し、身分が尊貴であろうとも必ず法度をもって禁じるものです。このようであるため和睦の道が興こり、骨肉の恩が完遂されるのです。しかし勃海王・悝について窺い聞いたところ、外では剽軽不逞の徒(強健敏捷で志を得ていない者、不満を抱いている者)を集め、内では酒楽(酒や音楽)に荒れており、出入りに常が無く(行動に秩序がないという意味)、共に群居しているのは皆、家の棄子(家族から棄てられた者)、朝の斥臣(朝廷から排斥された者)ですので、このままでは将来必ずや羊勝(前漢の人)、伍被(前漢の人)の変が起きます。しかし州司(州刺史に属す官員)は敢えて弾糾(糾弾)することができず、王国の傅相も匡輔(矯正・輔佐)ができず、陛下は兄弟の友愛が盛んで遏絶(誅滅)するのが忍びないため、渤海王の悪行が滋蔓(蔓延)して害がますます大きくなることを恐れます。私の上奏文を公開して 百僚に宣示し、法を平処(評議・判決)することを乞います。法が決して罪が定まってから陛下が不忍の詔(弟を処罰するのが忍びないという詔)を下し、臣下が渤海王を処罰するように固執してから陛下がわずかに同意するべきです。こうすれば、聖朝には傷親の譏(親族を傷つけたという批難)がなく、勃海には享国の慶(国を享受する福)がありましょう。こうしなければ、将来、大獄が興きることを懼れます」


 桓帝はこの進言を無視した。


 果たして劉悝は不道(造反)を謀るようになった。そのため有司(官員)が劉悝の王位を廃すように請うた。


 桓帝は詔を発して癭陶王に落とし、食邑を一県にした。


 中常侍・侯覧こうらんの兄・侯参こうさんが益州刺史になったが、残暴貪婪で、汚職による財を溜めて億を数えた。


 太尉・楊秉ようじょうが弾劾の上奏を行い、檻車で侯参を召還したため、侯参は道中で自殺した。侯参の車重(物資を運ぶ車)三百余輌を調べると、全て金銀錦帛が積まれていた。


 これを機に楊秉は上奏した。


「私が旧典を考察しますに、宦者とは元々省闥(禁中)で給使(服従して仕えること)して日が暮れてから夜を守るだけでしたが、今は多くの者が過寵を受けて政権を操っており、附会した者(阿附した者)はそれによって公けに褒挙(推挙)され、逆らった者は理由を探して中傷されております。また、宦官の住居は王侯に則り、富は国家に匹敵し、飲食は肴膳を極めており、僕妾も紈素(純白の絹)を充たしています」


 宦官の本来あるべき姿からもはや逸脱していると言っていい。


「中常侍・侯覧の弟・参は貪残元悪(大悪)だったため、自ら禍滅を招きました。侯覧は顧みて罪の重さを知り、必ずや自分に危険があるのではないかという不安と疑いを抱いています。私の愚見によるならば、今後は親近するべきではありません。昔、斉の懿公は邴歜の父に刑を与え、閻職の妻を奪いましたが、二人を参乗(馬車に同乗する近臣)にしたため、最後は竹中の難を招くことになりました。侯覧は急いで屛斥(排斥)し、虎がいる所に投げ捨てるべきです(原文「投畀有虎」。『詩経・小雅・巷伯』の「人を害す者を捕まえて豺虎に投げ与える」が元になっている)。このような人は恩によって寛恕できるものではありません。免官して本郡に送り帰すことを請います」


 上奏文が提出されると、桓帝は尚書に楊秉の掾属を招いて楊秉を譴責する質問をさせた。


「官を設けて職を分け、それぞれに司存(職責)がある。三公は外を統べ、御史が内を察する(観察する)ものである。今、職権を越えて近官(宮内の宦官)について上奏したが、経典・漢制の何を依拠としたのか。公開して詳しく答えよ」


 楊秉が掾属にこう答えさせた。


「『春秋伝』はこう言っています『国君の悪を除く時は、自分にどれだけの力があるかを見極めて、最大限の力を尽くす』鄧通が懈慢(怠慢)だった時、申屠嘉が鄧通を召して詰責(詰問譴責)し、文帝は申屠嘉に従って鄧通のために命乞いをしました。漢世の故事において、三公の職が統べない(管理しない)ところはないのです」


 尚書は詰問できなくなった。そのため桓帝はやむなく侯覧の官を免じた。


 司隸校尉・韓縯がこの機に左悺の罪悪を弾劾し、併せて左悺の兄で太僕・南郷侯・左称が州郡に委託して財貨を集め、姦悪を為し、その賓客が放縦で吏民を侵犯していることを上奏した。


 左悺と左称はどちらも自殺した。


 続いて韓縯はまた中常侍・具瑗の兄に当たる沛相・具恭の臧罪(貪汚の罪)も上奏した。具恭は朝廷に召されて廷尉に送られや。


 具瑗は自ら獄を訪ねて謝罪し、東武陽侯の印綬を返上した。


 桓帝は詔を発して具瑗を都郷侯に落とした。


 単超、徐璜、唐衡の封爵を継いだ者も皆、郷侯に落とされた。子弟で分封された者は全て爵土を奪われた。


 劉普らは関内侯に落とされ、尹勳等も皆、爵位を奪われた。









 桓帝には内寵(寵妃)が多く、宮女の数が五六千人に上り、駆役・従使(使用人・従者)はその倍もいた。


 鄧皇后は尊位に頼って驕忌(驕慢で嫉妬深いこと)だったため、桓帝が寵愛した郭貴人と互いに譖訴(讒言誹謗)しあった。


 女の争いに辟易した桓帝は二月、桓帝が皇后・鄧氏を廃して暴室に送った。


 暴室は掖庭内にあり、丞が一人いる。宮中の婦人で疾病がある者、皇后・貴人で罪を犯した者が入れられる場所である。


 鄧氏は憂死し、河南尹・鄧万世(鄧皇后の叔父)、虎賁中郎将・鄧会(鄧皇后の兄の子)が獄に下されて誅殺された。


 宛陵の大姓(大族)・羊元群が北海郡で罷免された。


 羊元群は貪婪で限度が無かったため、郡舍の溷軒(厠)にあった奇巧(精巧で珍しい物)まで車に載せて帰った。


 河南尹・李膺りようが羊元群の罪を問うように上書した。


 しかし羊元群が宦官に賄賂を贈ったため、李膺が逆に罪に坐すことになった。


 単超の弟・単遷が山陽太守になったが、罪を犯して獄に繋がれた。廷尉・馮緄ふうこんが考致(拷問)して単遷を死に至らせた。


 すると、宦官が互いに徒党を組み、共に飛章(緊急の上奏文、または匿名の上奏文)で馮緄を誣告して罪に陥れた。


 中常侍・蘇康と管霸が天下の良田・美業(肥沃な農地)を包囲占拠していたが、州郡は彼らを譴責できなかった。


 しかし大司農・劉祐が該当する地に書を送り、科品(法制)に則って没収した。


 これらの事に桓帝が激怒し、劉祐と李膺、馮緄を共に左校に送って労役させた。


 五月、太尉・楊秉が死んだ。


 楊秉の為人は清白寡欲で、かつて「私には『三不惑(三つの惑わされないこと)』がある。それは酒・色・財である」と言ったという。


 楊秉が死んでから、賢良として楊秉に推挙された劉瑜りゅうゆが京師に来て上書した。


「宦官が不当に肩を並べて土地を裂き、競って胤嗣(後嗣)を立て、継体(位を継ぐこと)して爵を伝えています。また、嬖女(寵愛する妃妾)が充積しており、宂食(何もせず食事だけすること)して皇宮を空にし、生を傷つけて国財を費やしています。第舍(邸宅)が増加して奇巧を極め尽くし、山を掘って石を穿ち、厳刑を用いて民に労役を促しておられます。しかも州郡の官府がそれぞれ自ら考事(事件を審査・追及すること。厳刑を自由に使っているという意味)し、姦情や賕賂(賄賂)が全て官吏を誘惑する餌になっています。そのため民が愁いて鬱結(憂鬱になること)し、起ちあがって賊党に入っています。その都度、官が兵を興してその罪を誅討しており、貧困の民においては、ある者は自分の首級を売って酬賞を求め、父兄が互いに相手に代わって自分の身を害し、妻子が家族の分裂を目撃しています」


「また、陛下が近習(近臣)の家への微行(おしのび)や宦者の家への個人的な行幸を好んでいるため、近臣や宦官の賓客が皇帝をもてなすために市で物を買い、権勢によって民を圧迫しております。これが原因で暴縦(暴虐放縦)が容認できないほどになっています。陛下が諫道を開いてそれを広くし、広く前古を観察し、佞邪の人を遠ざけ、鄭・衛の声(淫蕩な音楽)を放棄することを願います。そうすれば政治が正しくなって和平が至り、徳に感じて吉祥の風が吹くようになりましょう」


 桓帝は詔を発して特別に劉瑜を召し、災咎の徵(兆し)について問うた。


 執政者は劉瑜の直言によって悪事が露見することを恐れたため、皇帝の問いから外れた無難な回答をさせようとした。


 しかし劉瑜は再び心を尽くして八千余言で回答し、その内容は前回よりも激切であった。


 桓帝は劉瑜を議郎に任命した。

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