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真犯人  作者: 華
1/1

第一話

あなたには戻りたい過去がありますか…?


「戻りたい過去はありますか?

いつ、どの時間、どの場所、なんでも構いません。

あなたの戻りたい瞬間とき

1度だけ連れていって差し上げます。

ただし、その代償は…」




ジリリリリ…!

買ったばかりの目覚まし時計が

部屋中に鳴り響き目を覚ます。

どうやら、休みの日だというのに

スイッチをoffにし忘れたらしい。

「まだ、5時…」

今度こそスイッチをoffにし、再びベッドの中に潜り込む。

すると、今度は携帯電話から陽気な音楽が流れる。

こんな朝っぱらから…と、ぶつぶつ言いながら

寝起きの声で応える。

「もしもし…はい。え?…それって提出済みのはずじゃ…」

電話を終えるとかぶっていた掛け布団をはぎとり

狭い家の中をドタドタ走り身支度を始める。


急いで支度を終わらせると、車を職場へと走らせた。

職場に着き所定の位置に車を止め、

降りたところで入口から不機嫌な声が聞こえる。

「片桐-!!早くこい!!」

先ほどの電話相手であろう、その声の主は

入口前で仁王立ちで待ち構えている。

100メートルくらいの入口までの距離を全力で走り

入口に着くなり、息を切らしながら頭を下げた。

「佐久間さん、すみませんっ…!

俺、ちゃんと確認したつもりだったんですけど…」

ハァーと深いため息をつき呆れた声で話す。

「ったくお前は…いつになったらまともな

報告書が書けるようになんだよ…はぁ…」

今、追っている事件の容疑者の取り調べを終え、

捜査報告書を提出したが、どうやら上司が確認したところ

あまりにも誤りが多く再提出と判断されたらしい。

「すみません…今日中に書き直します…。にしてもこんな朝早くって事は当直だったんですか?」

「そう、当直で何事もなければ帰って

暖かい布団で寝れるはずだったんだけどなぁ。

どっかの馬鹿の再提出書類の確認っつー仕事が増えちまったよ」

「うぅ…すみません…」


片桐弥一かたぎりやいち。25歳。

20歳で警察官になり本人の希望と能力がかわれて

刑事課に配属され1年。

小さい頃に空手、合気道、おまけに剣道などしていたかいあってか、体術においては人一倍の強みがあった。

それが高じたのもあり、今現在に至る。

しかし、器用さ、繊細さという面では苦労しているようだ。


「俺は仮眠室で少し寝てくっからわかんねーことは、そこの机の

書類参考にして考えろ。ふぁ~ぁ…眠っ…」


力量は誰もが認めるほどの折り紙つきの

片桐の先輩、佐久間孝志さくまこうし

昇進の話を事ある毎に断っているのは

現場の最前線にいる事に誇りを持ってるからである。

片桐が一番尊敬していて近しい先輩。


「あっ…佐久間さんっ。」

今朝の夢の奇妙な一言が頭をよぎる。

「あの…もし…過去に一度だけ戻れるとしたら…

佐久間さんはどうしますか…?」

馬鹿げた話とわかっていたが

気付いたら口に出していた。

「…んな、くだらねー事考えてる暇あんなら

とっとと、書類書き上げろ!」

当然の答えだと頭では理解していたが

この馬鹿げた話を、たかが夢だと消化できない理由が

片桐にはあった。

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