プロローグ
――ここで、死ぬのか?
俺は地面に横たわり、モンスターたちの鋭い爪を見つめていた。
やつらはいよいよ俺のことを仕留める気なのだろう。
次の攻撃は、おそらく避けられない。
戦い傷つき、体力も尽きた体ではどうしようもないからだ。
出来ることと言えば精々、これまでの人生に懺悔することくらいだった。
いや、これまでの人生というよりも、あいつにかな。
俺は妹のことを思い浮かべ、心の中で呟いた。
――ごめんな、お兄ちゃんはこの世界でバッドエンドを迎えてしまった。
――来月の約束は、やっぱり無理みたい。
――突然で悪いけどな……
――悪いけど、これは現実なんだから……
そうしてついにモンスターが止めを刺そうと、腕を振り下ろす。
「じゃあな、ユウカ……」
俺は妹に別れを告げて、最期の瞬間に備えた。
凶爪が眼前に迫りくる、そんな中――
――はるか上の方、空から唐突に声が聞こえてきた。
綺麗で透き通った、女の子の声。
まるで地上に向けて宣告する、女神のようだった。
『星を照らせし守り子よ、古より結びし盟約によって命ずる――』
直後、青白い光が放たれ、地上を眩しいほどに照らしていた。
驚いて視線を上げると、上空には巨大な魔法陣が描かれている。
そして透き通った声が再び響き渡った。
『――原初を刻め、リヒトハスタス』
輝く光が地上へと放たれた。
煌めきながら降り注ぎ、それらは爆撃のようにモンスターたちを一掃していく。
これは、魔法なのか……
その光景を呆然と見ていると、やがてその攻撃は終わったようだ。
見える範囲のモンスターたちは、全滅したように思える。
体を光に穿たれ、一匹たりとも生きてる気配はなかった。
あれだけいたのに……
おそるおそる空を見上げると、一人の少女が空に浮かんでいた。
かなり綺麗な美少女だ。
スカートが風に煽られて白いパンツが見えている。
あの子が助けてくれたというのか。
彼女の方を見ていると、目があった。
すると少女はこちらの方に向かって降りてくる。
そして地面に足を付けると、近づいてくるなり丁寧なおじぎをしてきた。
「お迎えに上がりました、クトリール様」
そう言って彼女は微笑んだ。