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第11話 ショベルの血痕

 ダン・ブレディはすらっとした長身にまだ少し幼さが残る青年だった。

 トモヤとアダムは取調室で彼に話を聞いていた。


「シンディが死んだって……それは本当なんですか?」


「残念ながらそうだ。ところでダン、君はシンディと喧嘩してたそうじゃないか」


 アダムの質問に、ダンはこめかみを押さえうつむく。


「ええ、失踪する前にね。そして別れたんです」


「それまたどうして」


「あいつ、妊娠してたんだ」


「知ってるよ。それで?堕ろす堕ろさないでモメたのか?君の若さで父親になるってのは大変だものな」


「それ以前の問題さ。そもそも子どもの父親は俺じゃないよ。だって、まだその……」


 言いにくそうに視線を逸らすダンを見てアダムが察す。


「彼女と寝てなかったのか。なのに妊娠してるってそりゃ腹も立つだろうな。俺だって大喧嘩だよ」


「でも言っとくけど殺してないよ。彼女が失踪したあの日、妊娠を聞かされて腹が立った。誰の子だって問い詰めたら前の男との子だって言うんです」


「なるほどな、で殺した?」


「だから違います。腹が立ちました。でも許したんです。それで彼女と話し合って……前の男は僕よりも年上で優しい人だったそうなんです。でも色々あって自分の気持ちがわからなくなって、自分から別れちゃって後悔してるって……だから、それならその人とよりを戻せばいいんじゃないかって言ってやったんです」


「泣ける話だね。信じられるかいトモヤ」

アダムの問いかけに、今まで黙って話を聞いていたトモヤが口を開く。


「君の家では園芸に竜肥を使っているそうだね」


「おい、俺の質問は無視かよ」


「竜肥?多分、バラを育てるのに使っていると思います。兄はバラが好きで庭にたくさん植えているんですが確かその肥料にそういったものを使っていた気がします」


「君は、バラを植える作業を手伝ったりするのかい?」


「いえ、したことありません」


「そうか……」


 トモヤは立ち上がると「後は任せる」とアダムの肩を叩き部屋から出て行った。

 トモヤがダンを取り調べている最中、ブレディ家をレイラが警官を伴い訪れていた。

 スヴェン・ブレディは令状を受け取ると首をかしげる。


「ショベルの提出?また何で?」


「弟さんの交際相手が死体で発見されたんです。その事件の捜査で」


「ああ、聞いたよ。私も一度会ったがあの子は何というか弟にとって毒みたいな存在だ」


「随分と辛らつですね」


「弟がストリートダンスなんてものをやり始めたのは彼女に惚れたからなのさ。とても楽しくて達成感があると言っていた。だが私から言わせればあんな連中は社会に貢献しないクズだ!!」


 スヴェンは吐き捨てるように言った。


「ああ、失礼。私は死んだ父が残してくれた会社を引っ張っていかなくてはならない。不動産会社を経営していましてね。ダンにもいずれその手伝いをしてもらおうと思っているのですがあいつ、ダンスに夢中になってから成績も少し下がってきているし……」


 ため息がスヴェンの口から洩れる。


「大変ですね」


「ともかく、調べるならさっさと調べてください。弟は愚かですが事件に関与するような人間じゃありません」


 スヴェンはそう言うと物置を指さす

 レイラが中を調べるといくつもの園芸道具が保管されていた。

 その中にショベルを見つけ、レイラは血液反応を調べる薬品をスプレーした。


「あらあら、まぁ……」


 レイラの眼には薄暗い倉庫の中、先が青く光るショベルが映った。

 それも広範囲が光っていた。

 更にもう一つ、レイラは床に落ちている千切れたブレスレットを見つけた。

 シンディが身に着けていたものと同じデザインだ。


「何かありましたか?」


 後ろから覗き込むスヴェンの方を向き、レイラは言った。


「少なくともこのショベルは事件に関与したと言ってるわね」


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