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第10話 スコップとショベル

 カフェでの聞き取りを終えたトモヤ達は一度署に戻り、シンディの彼氏であったというダン・ブレディを呼んで話を聞くことにした。

 トモヤの姿を見つけ、エマが駆け寄ってくる。


「チーフ、傷口についていた土について報告があります」


「何か特別なものだったのか」


 魔法捜査というものは魔法のみで成立するものではない。

 この世界は科学と共に魔法が発展した。

 魔法は捜査ツールの一つであり、捜査の中には科学的なものも必要である。


「ええ、分析にかけたところ肥料の一種でした。それも竜肥。ドラゴン……これの場合は赤竜と呼ばれるものの糞を発酵させて作ったものでした」


 ドラゴン。

 様々な特徴を持つ危険爬虫類の総称であり、長らく国同士が争いを起こしてきた旧歴時代を終わらせ、竜歴という新たな時代を作った立役者でもある。


「だが竜歴となったこの時代、竜肥は特に珍しいものじゃない」


「ですがこの竜肥には馬の糞も混ぜられていました。水馬です。この二つを混ぜることで赤竜独特の臭いを和らげる効果があるんですよ」


「水馬というと魚の様な尾を持つ馬か。俺の居た世界ではケルピーなどと呼ばれる神話の生物だったが……で、それは珍しいのか?その、臭い控えめの肥料は」


「混ぜ物をして臭いを抑える竜肥は珍しくありませんが主に農業用です。ところがこれは主に園芸に使用されます。そして、この州でそれを扱っている店はたった1件でした。そして、これが購入者リストです」


エマは印刷された紙を手渡す。


「43人か……数百人とかだったらどうしようかと思ったがな。おや?」


 トモヤはリストの中に興味深い名前を見つけた。

 スヴェン・ブレディ

 これから聴取するブレディと同じ苗字だ。


「面白い」


「何が面白いの、トモヤ」


 後ろからレイラが覗き込む。


「いや、怪しい奴を見つけたってところかな」


「あら、それは良かった。それじゃあこっちも報告ね。被害者の脊髄をぶった切った凶器だけど、ショベルだとわかったわ」


「ショベルと言うとあれか、園芸に使うあの小さい奴か」


「それはスコップです。我が国の工業規格では足を掛けるところがあり柄が1メートル以上あるものをショベル、足を掛けるところがなく小型であるものをスコップと定めています。一般的に言いますと国の南部では呼称が逆になっているのですが比較的北部に位置するこの州では……」


「待て、エマ。とりえずわかった」


 トモヤがエマの説明を制する。

 放っておけばスコップとショベルの違いについて延々と話しそうな雰囲気であった。

 エマが恨めしそうな視線を向けてくる。


「そんな睨むな。また暇な時にゆっくり聞いてやるから……」


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