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99%断罪確定の悪役令嬢に転生したので、美男騎士だらけの学園でボッチ令嬢を目指します  作者: ハーーナ殿下


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第29話:二人きり

 

 ジーク様こと“ジークフリード・ザン・ミューザス”は、正真正銘の王子さまである。


 私の所属する帝国とは、ライバル関係にあるミューザス王国の王子だ。

 今は高位の身分を隠して、ファルマ学園に騎士として通っていた。


 この事実は極秘事項トップ・シークレットで、学園内で知る者は、学長ただ一人。


 だが実は!もう一人“だけ知る者がここにいた。


 ――――そうゲームをやり込んでいた、この私マリアンヌだ。


 私は美男騎士の中でも、大がつくほどの“ジークさま推し”。


 何しろ超レアキャラという事もあり、彼は作中での性能は上位クラス。

 見た目もタイプで、そのクールな美声は、私の耳と心臓ハートをドキドキさせる。


『将来、結婚すらなら、やっぱジーク様よね! いや、デート相手にジーク様もね!』


 当時の私はゲームをしながら、画面の中のジーク様との情事を妄想。

 床をバンバンしていたっけな。


 だから学園で初めてジーク様を目にした時は、心の中では、それはもう興奮しちゃったんだから。


 ラインハルトの隣にいた、本物の王子ジーク様。

 思わず学食レストランの中心で、愛を叫びそうになったよ、あの時は。


 何しろ見慣れた液晶画面の中ではない。

 三次元リアルの本物が、目の前に降臨したのだから!


 本物のジーク様は、なにより外見が素敵。


 サラサラの銀髪に、透き通るような白い肌。

 まつ毛も長くて、女性である私だって思わず見とれちゃう。


 何だったら一日中、見ていても飽きないであろう。


 しかも幸運なことにジーク様は、私の幼馴染ラインハルトの親友であった。

 おかげ学食で初対面以降、色んなイベントで二人に顔を合わせる機会があったのだ。


 私に強引に話しかけてくるラインハルト。

 私は横目でジーク様のクールなお顔を、拝見するのも忘れていなかった。


 本当にジーク様は、学園でも素敵だったのだ。

 まさか、こんな所で出会えるとは!


 ん?

 あれ、よく考えると、こうして“二人きり”で会うのは初めてだ。


 ◇



「マリアンヌ、こんな所に何を?」


 人気ひとけのない中庭に、突然現れたドレスの令嬢。

 そんな私に対して、ジーク様は少し警戒しながら訪ねてくる。


「ごきげんよう、ジークフリード様。わたくしは昼食を早く済ませたので、食後の散歩中ですわ」


 でも本当は探検中だった。

 バレないようにドレスに付いていた草を、こっそりとパンパンと払う。


 殿方の前では常に美しくあるのも、学園の令嬢としてのたしみだ。


「そうか。 ん? いつも一緒にいるあの女、今日はいないのか? 珍しいな」


 ヒドリーナさんいないことを、見抜かれてしまった。 

 そして、それを聞いてしまいますか、ジーク様。


 大自然とたわむれて、せっかく忘れかけていた傷のことを。


「ええ、実はヒドリーナ様は……」


 ヒドリーナさんが帰省中であることを、ちゃんと説明しておく。

 じゃないと私が一人で徘徊する、変な女の子に思われちゃう。


 ん?


 そういえばジーク様は、いつもと言葉使いが違う感じだ。

 いつもならもうす少し丁寧で、騎士口調なのに?


「この口調か? いつもは教官が『騎士らしい振る舞いと口調』と口うるさいからな。こっちの方がの自分だ。気にするな」


 いえいえ、ぜんぜん気にしてないです。

 むしろクールな感じがあって好みです、こちらのジーク様の方が。


「ジーク様は昼食ランチは、いつもここで……なのですか?」


 彼の脇に、空の弁当箱ランチ・ボックスがあった。

 学園の食堂では事前に連絡しておけば、こうして弁当箱ランチ・ボックスに昼食を準備してくれる。


「ああ、そうだ。群れるのは、あまり好きではない」


 ジーク様は静かな中庭で、こうしえ昼食することが多いという。

 親友のラインハルトは学園の生徒会で、昼も多忙らしい。


 そのためにジーク様は昼食を済ませて、一人でフルートを奏でているという。


 あれ?

 ということは、もしかしたらジーク様も、一人ぼっち症候群なのかな? 

 私と同じで何か嬉しい!


「勘違いするな。『ミューザスの雪狼の牙は、孤独になればこそ鋭い』……そういう事だ」


 出身地であるミューザス王国の、ことわざか何かだろう。

 なんか中二病くさいけど、クールなジーク様が口にすると、絵になるのは不思議だ。


「それにしてもマリアンヌ。お前は変な女だな……令嬢のくせに?」


 えっ……この私が変ですって⁉


 いったい何の事だろう?


 学園に入ってからは、令嬢マリアンヌを演じてきていたはずなのに。

 もしかしたら自分でも気がつかない内に、どこかでボロが出ていたのかな?


「普通の令嬢は、“そんな木の枝”を振り回して、散歩などしない、という意味だ」


 あっ、何だ。

 この右手に持つ“木の枝くん”のことね。


 てっきり私の正体のことか思って、焦っちゃたよ。


「実はジークフリード様。こちらはバルマン侯爵家に代々伝わる、聖棒ホーリー・ロッドなのですわ」


「なに、それは本当か⁉」


「……冗談ですわ」


 先ほど私のことを、“変な女”扱いしたお礼。

 父上譲りの"バルマン・ジョーク”をかます。


 でも言ってから、少し後悔。

 ジーク様はジョークを、好きじゃなかったはずだ。


「ふっ……おかしな奴だな」


 えっ……ジーク様が少し笑った⁉


「まさかミューザス・ジョークと同じようなものが、他もあったとは。ふう……」


 笑い終わってからジーク様、クールな眼差しに戻る。

 でも少し表情が和らいでいた。


 もしかして私のバルマン・ジョークのお蔭かな?


 それとも“木の枝くん”が、本当に魔力を持った聖棒ホーリー・ロッドだったとか⁉

 とりあえず捨てないで、とっておこう。


「ん? 始業前の鐘の音か?」


 ジーク様の言葉のとおり、校舎の方から鐘の音が聞こえてきた。

 もうすぐ昼食の時間も終わり。

 十分後には午後の授業も始まるのだ。


 あー、せっかく楽しい時間だったのに、あっという間に終わっちゃったな。

 もう少しだけでもジーク様と、お話していたかったな。


 明日もジーク様は、ここにいるのかな?

 ちょっと聞いてみよう。


「別に構わない。この大地ガイアは誰のものでもない。つまりお前が、ここに来るもの自由だ」


 えっ、本当に!


 明日もここに来てもいいんだ、私は。

 凄く嬉しい!


 “大地ガイア”とか、また中二病っぽいけど気にならない。


 あっ、そうだ!

 私も弁当箱ランチ・ボックスを持ってきたら、もっと長い時間ここにいられるのかな?


 でも、それは流石にまずいかな。

 ジーク様にまた聞いてみよう。


「それも別に構わない。私の邪魔をしなければ問題ない。それでは先に戻っているぞ」


 マ、マジですか。

 ダメ元で聞いてよかった!


 これで明日は、あのジーク様と二人きりで、ランチ会をすることになった。

 明日が楽しみすぎる!


 ん?

 あれ?


 でも、殿方と二人きりで食事会って、どうすればいいのかな?


 前世でもしたことないから分からない。

 誰か教えて、ヘルプミー!


 ――――そして、あまりの浮かれ具合で午後の授業に、私が遅刻したのは言うまでもない。



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