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異世界の「魔法使い」は底辺職だけど、オレの魔力は最強説  作者: 延野正行
第3章 ~~魔法使いの幼少期編~~

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第18話 ~ 不思議な子だね。 ~

今週末もよろしくお願いします。


第3章第18話です。

よろしくお願いします。

 小さな勇者一行が大手を振り、往来の真ん中を進んでいた。


 バッズウが木剣を大きく振り上げるようにして行進し、ミュールは木剣を肩に乗せるようにふんぞり返っている。

 その後ろをアニアがニコニコしながら歩き、魔法使いということで最後列となったマサキは、物珍しそうに村の風景を眺めていた。


 幼いパーティの行列に、老婆は微笑み、露天の主人は「お! 勇者一行のお通りだ!」などと威勢の良い声を上げる。


 村に立ち寄った勇者候補たちも、小さなパーティに「頑張れよ」と声をかけたりしている。


 そのどの反応も、彼らがモンスターを勇敢にも打ち倒すことを望むものではなかったが、マサキ一行の顔はどこか得意げだった。


「今日はどこに行くの?」


 弾んだ声で聞いたのは、棒杖を持ったマサキだ。

 顔を輝かせている。

 ピカッという擬音が聞こえてきそうだ。


 リーダーのバッズウは両腕を組む。

 実に偉そうだった。


「今日は西の方を探検しよう」

「ミルが西は危ないっていってたでしょ」

「あ。そうだ」

「じゃあ、東だな。腕がなるぜ!」


 ミュールは木剣を振り回す。


 場所は村の中心だ。

 鐘塔が建っていて、前には大きな広場があり、円を描くように出店が並んでいる。

 足の踏み場もないほど、人がいるわけではないが、村の中で1番賑やかだ。


 おかげでミュールの剣は、危なく街行く人の肩に当たりそうになる。


「マサキもそれでいいか?」

「うん。まだ東の方は探検してないし。いいよ」


 マサキはふんふんと鼻を鳴らした。


 真っ赤な顔の同い年の少年を見て、3人は苦笑するのだった。




 村の中心から東へ


 そこは村の中で『宿屋街』といわれる場所だ。

 『街』といったものの、宿屋は3軒ほど。あとは飲み屋だ。


 夜になれば、ダンジョンから帰ってきた勇者候補であふれ返る場所だ。

 しかし、今は昼間。

 お世辞にも賑わっているとはいえない。


「リーダー! モンスター発見!」


 後列より大きな声が聞こえた。


 バッズウは思わず肩をびくりと動かす。

 他の2人は似たような反応だ。


 声を上げた男の子は、杖で方向を指し示している。

 その姿はなかなか勇ましい。


 教会組の3人は同時に視線を向ける。


 見ると、そこには鎖でつながれた鎧トカゲがいた。

 マサキが幼いながら覇気を向ける一方、こちらは暇そうに大きな欠伸をしている。

 凶暴なモンスターとは思えないほど、のどかな反応だ。


「もう……。マサキ、驚かさないでよ。本当にモンスターがいると思ったでしょ!」


 あまり怒ることのないアニアが、珍しく語気を荒くする。


 しかし――。


「うぉおおお!! モンスターだ!」

「戦闘準備!」


 勇ましく木剣を振り上げたのは、賢者と魔剣士のコンビ。

 鎧トカゲに向かって、突撃していく。


「援護するよ、2人とも!!」


 さらにマサキが後を追った。


「あ! ちょっと!!」


 アニアは制止を求めるが、男の子の耳には何も入らない。


「もう!」


 肩を怒らせ、地団駄を踏む。

 怒りとは裏腹に、少女の姿は可愛かった。


 マサキたちは鎧トカゲを囲む。


「アニア、補助魔法だ!」


 ミュースが命令する。


「えっと! 何を使えばいい?」

「攻撃が強くなる神託魔法だ!」

「じゃあ……。“攻撃が強くなる神託魔法”!!」


 アニアは魔法を唱える。


 むろん何も起こらない。

 そして、そんな名前の魔法もない。


 しかしミュースは両腕を高々と突き上げる。

 全身に力を込めた。


「よーし! 力がわき上がってきた!!」

「俺たちは援護だ、マサキ!」

「うん!」


 【風斬りの鎌】バフ・ヴィン!


 マサキは唱える。

 同じくマサキから魔法名を教えてもらったバッズウも倣った。


 何も起こらない。

 鎧トカゲは眠そうに目をぱちぱちしていた。


 ミュースは突撃する。


「もらったあああああああああああああああああ!!」


 木剣を大きく振り上げ。


「はいはい。そこまで」


 止められた。


 ニュッと大きな影が広がる。


 ミュースは首を回す。

 長身の男の姿があった。

 振り上げた木剣を、まるでハンカチでも摘まむように止めている。


 周りにいたマサキ、バッズウ、アニアも、突然の男の襲来に驚いていた。


「僕の鎧トカゲはデリケートなんだ。君くらいの子供の攻撃じゃあビクともしないと思うけど、ちょっとは不機嫌になるかもしれない。そんなことになると……」

「襲いかかってくる?」


 マサキは尋ねた。

 きっと鋭い視線を鎧トカゲに送り、杖を構えた。


 話しぶりからして、鎧トカゲを操る魔獣使いだろう。

 頭に司祭のような帽子。緑色のマントを着た男は首を振る。

 肩まで伸ばした灰色の長髪が揺れた。


「そんなことはしない。僕の調教した鎧トカゲはね。しかも、お客さんを乗せている時に、突然道の真ん中で止まったりして、僕が1番困るようなことして抗議してくるほどに賢いんだ」

「わたし、知ってる! そういうの。いんしつ(ヽヽヽヽ)言うんでしょ!」


 アニアは難しい言葉を知っていた。


 魔獣使いは小さなレディに向かって肩を竦めた。


「ダメだよ。そんなことを言ったら、ますますこの子たちが僕に対する意地悪について、首をひねることになる。この子たちの役目は、勇者候補たちを安全にダンジョンに送り届けることなんだから」


 利発そうなアニアの頭を撫でる。

 男はニコリと笑った。


「でも、こいつ……。モンスターなんだろ?」


 ミュースが指さす。


「鎧トカゲは大人しいモンスターだから大丈夫なんだよ」

「マサキ、それを知ってて、モンスターって騒いだのかよ」

「えへへ……」


 ミュースは睨む。

 マサキは頭を掻いて誤魔化した。


「ほほう。君はなかなか賢いね。ちなみに誰から聞いたんだい? 君たち、格好から察するに教会の子だね。シスターかな?」

「違うよ。エーデだよ」

「エーデ?」


 魔獣使いは顎に手を置く。

 しばし空を見て考えた。


「エーデって、もしかしてエーデルンドさん?」

「おじさん、知ってるの?」

「おじ……。悪いけど、僕――これでも23歳なんだ。まだポーラ『お兄さん』って呼ばれる権利ぐらいはあると思うんだけど」

「ポーラ?」

「それがお兄さんの名前」

「でもポーラは僕より16歳も年上だから、おじさんだよ」


 ズバリ言う。


 ポーラはがっくりと首を折った。


「まあ、確かに君から見たらそうだろうけどさ……。じゃあ、君はエーデさんの……えっと…………え、ちょ、待って……」


 皮膚を掻きむしるように、顔に手を置く。

 その表情も「おじさん」と言われた時以上に青くなっていた。

 弾みで頭に乗せた帽子が落ちる。


 マサキは「昔、テレビで見た偉い人の絵にそっくりだ」と思った。


 ポーラはおもむろに指をさす。

 マサキにだ。

 まるで悪いスパイに銃を向けられているようだと、少年は思った。


「もしかして…………エーデさんの…………………………こども(ヽヽヽ)?」


 長い沈黙と溜めの末に、ポーラは自ら考え導き出した答えを発表する。


 マサキは小首を傾げたあと、横に振った。


「違うよ。エーデはお母さんだけど、本当のお母さんじゃないんだ」


 一瞬、ポーラは「?」と首をひねる。

 やがてポンと手を打った。


「そ、そうか。君はエーデさんの養子なんだね」

「養子?」

「えっと……。本当のお母さんじゃない人に育ててもらっている子供って……。こんな説明でいいのかな?」


 視線を感じた。

 振り返ると、教会組の3人がポーラを睨んでいた。


「わわわ……。ごめんよ。教会の子たちには、その……」

「そんなことはいいよ。それよりも、おっさんは魔獣使いなんだろ?」

「せめてポーラって言ってくれないかな。僕の心は鎧トカゲよりデリケートなんだ」


 取り落とした帽子を拾い、頭にしっかりのせた。


 ミュースは質問を続けた。


「ダンジョンとか行かなくていいのかよ」

「ああ……。それは……」


 ポーラの額に汗が浮かぶ。

 水色の瞳を明後日の方向へと向けた。


「僕……。今、ソロなんだ?」

「ソロってなんだ?」

「パーティに属してないってことさ」


 ミュールの質問に、バッズウが答える。


 もう一度、ポーラを見ると。


「うわ! だっせ!」


 言い放った。


 ポーラは苦笑する。


「でも、鎧トカゲを操って、勇者候補のみんなをダンジョンに送り届ける仕事をしているんだよ」

「ふーん」


 実に興味がなさそうだった。

 ポーラはまた苦笑する。


 そんな中、マサキは鎧トカゲにご執心だった。


「ねぇ。ポーラおじさん」

「だから、ポーラにしてってば」

「鎧トカゲに触っていい?」

「え? あ! ちょっと頭は……」


 ポーラが制止しようとした時には、マサキの手はトカゲの頭に置かれていた。


 正確にはトカゲの鼻の頭だ。

 スリスリとマッサージでするように触る。


 鎧トカゲは気持ちよさそうに瞼を閉じた。


「驚いた……」

「え?」


 ポーラの言葉に反応したのは、つい近くにいたアニアだ。


「僕以外の人間に顔を触られるとすごくいやがるのに……」

「じゃあ、わたしも触ってみる」

「ダメ!」


 ポーラは思わず叫んだ。


 アニアはびくりと肩をふるわせる。

 持っていた石槍をぬいぐるみのように抱き寄せ、ポーラを見つめた。


「あ、えっと……。ごめんね。大声をあげちゃって」


 慌ててポーラはなだめる。

 しかし、その視線はすぐ鎧トカゲと戯れる少年へと向けられた。


「なんか……。不思議な子だね。彼は……」


 魔獣使いは呟いた。


少しずつマサキの片鱗が……。


明日も18時に更新します。

よろしくお願いします。

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