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異世界の「魔法使い」は底辺職だけど、オレの魔力は最強説  作者: 延野正行
第3章 ~~魔法使いの幼少期編~~

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第16話 ~ ボクは強い魔法使いになるよ ~

今週の週末もよろしくお願いします。


第3章第16話です。

 マサキはもう1度、バッズウを見つめた。


 逆立った頭。

 太い眉毛の下に、キラリと輝かせた黒い瞳。

 茶色の半パンから見える膝小僧には古い傷の跡。

 スモックのような服を着た少年は、胸を張っていた。


「パーティ?」


 マサキは今一度尋ねた。


 寝ぼけた反応に、どこか自信ありげなバッズウが慌てる。


「パーティはパーティだよ」

「?」

「知らないの、マサキくん」


 くん付けで呼ぶのは、横目でやりとりを見ていたアニアだ。


「う、うん……。ボク、外の世界に来るのって初めてだから」

「外の世界――」

「――来る?」


 バッズウとアニアは顔を合わせる。

 じゃがいも(テレサ)頭のミュースも、他の子供たちも呆然とマサキを見つめた。


 ――何か悪いことを言っただろうか。


 沈黙する子供たちには戸惑う。


「まあまあ、いいじゃないか。知らないなら、教えてあげればいいさね」


 しゃがれた老婆の声が後ろから聞こえた。

 庭の芝を踏んでやってきたのはミルだ。

 少しだけ顔が赤い。

 お酒を飲んでいるのかもしれない。


「マサキはあそこの酔っ払いの家の中でずっと暮らしていたそうだ。わからないことも一杯あるだろう。助けてあげな」

「助けるって、ミル」


 アニアが口を挟む。


「教えてあげるんだよ。いつも私がアニアにそうしているようにね……。先生になるってことさ」

「僕たちは子供だよ、ミル。先生にはなれないよ」


 と今度は、バッズウだ。


 ミルは声を出して笑った。

 とても楽しそうだった。


「何を言っているんだい。バッズウたちはちゃんと先生をしているよ。ここに来る子供に、この教会の掟を教えたりするだろ?」

「「「あ……」」」

「先生って必ずしも大人がやるわけじゃない。……ほら、先生たち。しっかり教えな」


 パンパンと手を叩き、子供たちに促す。


 老シスターの助言を固唾呑んで聞いていた子供たちの視線は、やがてマサキの方へと戻っていった。


 マサキは一瞬ピンと背筋を伸ばす。

 緊張した。


 はじめに口を開いたのは、バッズウだ。


「勇者アヴィンは知ってるだろ」


 マサキは目を大きく広げる。


「知ってるよ。だって――」


 ――一緒に住んでるもん……。


 言いかけた瞬間、マサキの身体が総毛立った。

 全く寒くないのにいきなり氷の海に放り出されたように筋肉が硬直する。

 みるみる顔色が青くなるのが、自分でわかった。


 ちょっと気を抜いていたら、オシッコしてしまったかもしれない。


 何かはわからない。

 もしかしてこれが、“殺気”と呼ぶものかもしれない

 だが、その出来事は7歳児の理解の範疇を超えていた。


 わからないが、どこから放たれたものかはわかった。


 固まった首筋を無理矢理動かす。


 ちょうどミルの背後。

 質素なテーブルに酒瓶を持った女性が、こちらを見ていた。

 少し影になっていてわからないが、青い目が光っているのがはっきりと見える。

 とても不気味な色だ。


 誰かなど言わなくてもわかるだろう。


『私たちが勇者一行であるということを言いふらさないこと』


 マサキの頭の中には、出発前にかわした約束が繰り返し流された。


 エーデルンドはひとしきりマサキに“忠告”を思い出させると、ささやかな酒宴の続きをはじめる。


 ひとまずホッと胸をなで下ろした。

 生きた心地がしない。


「マサキ、どうした?」


 目の前にバッズウが首を傾げている。

 横のアニアも同様だ。


「な、なんでもない。うん。知ってるよ。勇者アヴィン。よく知ってる」


 苦笑いを浮かべながら、マサキは何度も首を縦に振った。


「そのアヴィンが考えたのが、パーティなんだ」

「そうそう。そうなんだよな。パーティなんだよ」


 ミュースが訳知り顔で話に入ってくる。


「パーティって何なの?」

「簡単に言うと、戦士とか、神官とか、賢者とかが集まってモンスターを倒すんだ!」

「……?」

「ミュースの説明下手すぎ!」

「え? でも、そうだろ?」


 アニアがミュースの服を引っ張る。


 バッズウが説明を続けた。


「昔、ハインザルドにシャーラギアンっていう魔王が魔族を伴って攻めてきたんだ」

「知ってるよ! アヴィンが倒したんだよね」

「アヴィンだけじゃない。他にも仲間がいたんだ」

「おいら、知ってるぜ! 魔剣士イザルだろ」


 ミュースは剣を振るような動きをする。

 それを見ていたバッズウは「チチチ」と指を振った。


「イザルが活躍したのは、ちょっとだけだろ? 『大戦史』にもちょっとしか出てこないし。俺はやっぱ“勇者の弟子”アルミアだな。アヴィンより強かったっていうぜ」

「アルミアっていう人! アヴィンより強かったの?」

「へへっ。そうだぜ」


 我がごとのように胸を張る。


「待って、2人とも。1番強くて優しいのは、ナリィ様でしょ。たいまぞくさ(ヽヽヽヽヽヽ)いきょー(ヽヽヽヽ)の魔法を使えるんだよ」


 2人の主張に我慢しきれない――といった様子で、アニアが参戦した。


 いつの間にか、勇者の仲間の中で誰が強いかという言い争いになる。

 3人の子供は睨み合う。

 見事、三すくみができあがった。


「こらこら……。先生が喧嘩するんじゃないよ。今はパーティが何かってことだろ?」


 お目付役のミルが場をいさめた。

 それでも3人は姿勢を改めなかったが、やがてマサキの方を向いた。


 バッズウが説明を続ける。


「人間は魔族と戦うのが初めてだった。兵隊さんも、王様も、最初魔族にかなわなかったんだ」

「だから、アヴィンがせんもんしょく(ヽヽヽヽヽヽ)を作ったんだよ、マサキくん。魔族を倒すためのせんもんの職業――」

「それがジョブっていうんだ。戦士とか、賢者とか。……おいらは魔剣士だけどな」

「魔剣士は伝説の職業だろ?」

「だから、かっこいいじゃん」


 今度は「やあ!」と声を上げて、ミュースは見えない剣を振るう。


「ジョブが集まって行動する単位をパーティっていうんだ」

「へぇ……」

「ジョブだけじゃあ。魔族には勝てないから、4、5人のグループを作るんだよ。魔剣士のおいらには必要ないけどな。ドカーン!」


 と擬音を付けて、剣を振るう。


 バッズウは呆れたように息を吐いた。


「そんなこというと、ミュースはまた1人パーティだぞ」

「いいもん! 俺は1人で十分」

「仲間外れにされて、この前泣いてたのよ、ミュース」


 アニアはマサキに近づき、そっと告げ口する。

 どうやら聞こえていたらしく、ミュースはじゃがいも(テレサ)頭を真っ赤にして怒る。


「つまり、ボクはバッズウのパーティになるってこと?」


 マサキは説明を聞き、自ら総括した。


「うん。そういうことだ」


 バッズウは偉そうにふんぞり返る。

 その態度に反発するかと思いきや、マサキの目は逆に輝いた。


「いいよ。ボクもバッズウのパーティに入りたい」

「よし! 今日からマサキは俺のパーティだな」


 2人は満面の笑みを浮かべて握手する。

 マサキは手を握ったまま尋ねた。


「じゃ、じゃあ! ボクもダンジョンにいけるの!」

「やる気だな、マサキは! もちろん! 俺についてくれば、ダンジョンにいけるぞ」

「やった!」

「何を言ってるの、2人とも!」


 アニアが声を荒げる。


「本当のダンジョンなんて、子供の私たちにはいけないよ。マサキくん。せいぜいこの町を探検するぐらいだよ」

「そうなの? でも、ボク……。探検したい!」


 ダンジョンにいけないとわかっても、マサキに付いた好奇心という火は消えない。


「じゃあ、まずジョブを決めないとな。ちなみに俺は賢者だ」

「おいらは魔剣士だ」


 尋ねてもいないのに、バッズウとミュースは自分のジョブを表明する。


「アニアは?」

「わ、私は神官、だよ」

「神官ってどんな職業なの?」

「仲間を回復したりする魔法が得意なの」

「そうなんだ。アニアにぴったりだね」

「なんで?」

「だって……。アニア、優しそうだもん」

「――!」

「……?」


 アニアは顔を赤くする。

 マサキは反応の意味がわからず、首を傾げた。


「じゃ、じゃあ……。マサキくんはどうするの?」


「ボクはもう決めてるんだ」


 マサキははっきりそう言った。

 その堂々とした態度。そして輝いた表情を見て、子供たちは沈黙する。


 だが、それは刹那の間だけだった。


「なになに?」

「賢者は俺がいるからいらないぞ」

「戦士と魔剣士もな」


 口々に言う。

 再びマサキに視線が集中する。



「ボクは魔法使いになりたい!」



 はっきりそう言った。


 魔法使いになりたい、と……。


 バッズウも、ミュースも、アニアも呆然と見つめた。

 ミルも少し驚いたらしくつぶらな目を目一杯広げている。


 少し離れた位置で酒杯を傾けていたエーデルンドだけが、口元にわずかな笑みを作った。


 ……………………。


 涼やかな風が、モントーリネ教会の脇にある庭園を通り過ぎていく。

 枝木から離れた葉が、天へと舞った。


 ようやく沈黙が破られた。


 盛大ともいえる笑い声によって――。


「ぶはははははは! 魔法使いだって!」

「魔法使いになりたいなんてヤツ……。初めて見た」

「み、みんな! ちょっと! 笑ったら……ふふふ」


 お腹を抱えて笑っている。

 目には涙をためていた。


 バッズウたち3人以外の子供たちも、同じような反応だ。


 わからないのは、マサキだけだった。

 ただ頭の上に「?」を数個並べるしかない。


「どうして? 魔法使いになっちゃダメなの?」

「ダメってことはないけど」


 アニアが涙を払う。

 ミュースが説明を継いだ。


「知らないのか? 魔法使いってのは、精霊魔法しか使えないんだぜ」

「そうなの?」

「それに精霊魔法は、魔族には効かないんだ」

「アヴィンにも、仲間の魔法使いがいたんだけど、魔王と戦う時に、その魔法使いを外して戦ったっていわれてるの」

「ふーん……」

「だから、魔法使いはお荷物だって言われてる。せめて戦士にしとけって。魔剣士のおいらと被るけど、その方がいい」


 3人の同い年の子供たちは、説明と助言を与えてくれる。


 だが、マサキは素直に「うん」と頷かなかった。


 魔法使いになりたい。


 自分の目標を馬鹿にされ、怒りに震えるわけでもなかった。


 何故なら……。


 ――だって、エーデはとても強いから……。


 口々に子供たちがマサキを指さす中、当人はテーブルで酒を呷る保護者を見つめていた。

 影に入っていて、その様子を詳しくうかがうことは出来ない。

 だが、その口元は笑っているように見える。


 翻ってマサキは言った。


「じゃあ……」


「「「???」」」


「ボクは強い魔法使いになるよ」


「「「え?」」」


「ボクが全部のジョブよりも強い魔法使いになればいい。それでいいでしょ?」


 マサキは言った。

 とてもシンプルな提案だった。


 魔法使いが最強のジョブになる。

 自分はそれを証明してみせる。


 彼はそう言ったのだ。


 単純な宣言だった。


 だが、誰も反論しなかった。


 あまりに度が越えた提案に一同は沈黙するしかなかった。


 しかし、当のマサキの目は、激しく燃え盛っていた。


マサキの初めてのパーティ……。


明日も18時に投稿します。

よろしくお願いします。


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『嫌われ家庭教師のチート魔術講座 魔術師のディプロマ』が発売中です。

もう少しで続編確約というところまで来ました。

引き続きよろしくお願いしますm(_ _)m

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